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(744) ロ コ モ と ロ コ ト レ

 (744) ロ コ モ と ロ コ ト レ

 耳慣れない 「ロコモ」 とは 「運動器障害」 という意味、英語の 「ロコモーティブ」 の日本式省略語である。

♣ 介護の世界で 「運動器」 と言えば、身体の運動を支配する 「筋肉・ 骨・ 関節」 を意味する。ロコモの意味は 「場所」、モーティブの意味は 「移動」 … つまり 「場所が移動する」 ということだ。

♣ 「ロコモーティブ」 を辞書で引けば 「蒸気機関車」 と出ている。19 世紀の初頭、イギリスで蒸気機関車が発明されたとき、それを見て人々は驚き ビックリした ―― あの巨大で真っ黒な機械が、勢いよく蒸気を吐いて移動している … モノが動いているのではなく、まるで 「大きな場所」 が移動している ! という印象であった (図 1)。つまり 「蒸気を吐く移動物体」 (steam locomotive)だったのである。病気のロコモはその名前を頂いた。

ロコモとロコトレ

♣ 人間の体が動くときに骨や筋肉が働いているのは分かり切っているが、ヒトも更年期を過ぎると筋肉や関節の故障を経験するようになるから、元気なときの有難味は筆舌 (ひつぜつ) に尽くしがたい。

♣ 「ワシが不自由なのは骨や関節だけではない、あの大きな機関車にも相当する身体の動かし方 (移動) が故障しているんジャ …」 と思えば、何か立派な名称を工夫してあげたいだろう。それが 「運動器 という名称」 であり、広く 「骨・ 関節・ 筋肉・ 腱・ 神経」 などを総称する。また、臨床的にそこの故障のことを 「ロコモ」 と略称して、身近な名前として採用したのである。

ロコモとロコトレ

図 2 をご覧あれ。更年期までは筋肉が故障するなんて夢考えることはないだろうが、実際に筋肉は齢とともに誰でも痩せてくるものなのだ ―― これを 「サルコ と呼ぶ。サルコ とは 「サルコ (筋肉) ペニア (衰え」 の日本式省略語である。つまり、運動器障害 (ロコモ) は主に骨にくっついた筋肉と関節の 機能低下 を表す。

♣ 筋肉は 30 歳を越えると衰えてくる。スポーツマンは 30 歳を越えると 運動がきつくなるので想像がつくだろう。しかも、それも全身均等ではなく、下肢、特に 膝上の大きな筋肉: 「大腿直筋」 の衰えが目立つ。あなたは 「畳での座位から立位に移るとき」、腕の助けなしで それをやってみよう ーー たちまち足の力がばれる。

図 2 でみると、筋肉量は 50 歳でマイナス 10 %、70 歳でマイナス 20 %、100 歳でマイナス 50 %といった具合だ。私はパールの施設を造るとき、お年寄りは 畳が好き、と信じて運動広場の傍に 20 畳ほどの畳場を用意した … 体操の後で疲れたり、昼食後の昼寝に利用されるだろう。ところが、実際には 只の一人も 畳場が使わることはなかった ―― と言うより彼らは畳を嫌っていた。

♣ 尋ねてみると返事はこうだ:―― 「畳で寝たら一人では起きられない、起きることができても助けて貰わないと立てない」 と。私は、老人とはそんなものだとは気付かず、迂闊 (うかつ) だったのだ。

♣ 考えてみれば、お年寄りは移動に際して 「ヨッコラショ ! 」 の合い言葉が付き物であり、椅子から立つのも座るのも掛け声付きだ。それほど、高齢者は 若者が気付かない程 いつのまにか筋肉が減り、運動器全体が衰えて行くのである。例えば、上腕二頭筋 (いわゆる力瘤の筋肉) が 「すりこ木 (ぎ) 」 の太さから 「ロウソク」 のように細くなって行くのだ。

♣ わが国では近年の高齢化に伴い、ロコモ疾患が急増している。目立つものは 腰椎症 (3,500万人)、膝関節症 (2,500万人)、大腿骨粗鬆症 (1,000万人)などであり、人口の過半数の人々で、腰の障害 と 歩行・ 立ち座り などの移動機能が障害されている。これが ロコモ である。

ロコモとロコトレ

図 3 を声を出して読んで欲しい。これは 「ロコチェック」 の表と呼ばれ、7 っ の項目中、あなたは思い当たる症状があるか?ただの一つでも該当するものがあれば、あなたは 「ロコモ」 のお仲間入りなのである。

♣ ロコモの対策としては、ロコモーション・ トレーニング(略して ロコトレ が推奨される。パールでは、すでにデイサービスで毎日のように行われている ロコトレ であるが、その主要内容はバランス能力に重点を置く 二つの訓練 より成る:―― ① 開眼片足立ち、② スクワット ( 図 4 )。

♣ この二つの操作が高齢者での運動機能改善効果は証明済みである。この二つのロコトレは簡便な操作であり、長期間継続するのに適したトレーニングと言えるだろう。

ロコモとロコトレ
♣ わが国では平均寿命が延びて行く中、その一部を構成する 「健康寿命」 の延びがイマイチである。ロコモは メタボ・ 認知症 と並ぶ健康寿命を短くする原因でもあるから、今後ロコモ対策が、究極の目標である健康寿命の延伸に繋がることが期待されている。1832字  

要約:  ロコモとは 骨・ 筋肉・ 関節 の老人性機能障害の総称である。 ロコモは年齢性の筋肉萎縮に強く依存するが、同時に 関節症・ 骨粗鬆症 にも関連が深い。 ロコモは年齢性の障害であるから、完全に避けることは出来ないが、対策として バランス維持を保持する 開眼片足立ち・ スクワット が有用であることを示した。

(746) 蛙 の 認 知 症

(746) 蛙 の 認 知 症  

  蛙たちは 水の生活と陸の生活を得意とする 生命進化のうえで 特異な地位を占める 愛らしい動物である。とかく 蛙は諺の引き合いに出されたり、脳の働きの点で 「人類の大切なご先祖」 として 見つめられたりする 重要な生き物なのだ。

♣ 今日は 「蛙と人の認知症 (痴呆) 」 を比べて見よう。ちなみに 「痴呆」 (ちほう) という病名は 2004 年に厚労省によって 「認知症」 と改名された; 「痴呆」 は差別的な匂いが濃厚だと言うのが その理由だが、外国では 「痴呆」 のままである (dementia)。でも、もし蛙に痴呆があったとしても 「蛙の認知症」 とは言わないだろうか?

♣ さて、ヒトの認知症の症状に出会うと、私どもは しばしば戸惑う。‘まとも’ のようで 頼りない、丁寧でありながら ふしだらだ、セクハラをしたり しなかったり . . . 悩みは尽きない。

♣ ヒトの脳を実際のサイズでなぞらえると、「竹輪 (ちくわ) サイズの原始脳」 (脳幹) の上に 「キャベツ・ サイズ の高次脳」 (大脳) が乗っている状態とみられる ( )。

♣ 「原始脳」 は 頭蓋骨の底にあり サイズは小さいが、「食・ 性・ 呼吸・ 恐怖」 などの生命の基本を司り、一言でいえば 「本能」 の塊を支配する。他方 「高次脳」 (大脳) は 頭蓋骨のほとんどを占めるほど大きく、「認知・ 記憶・ 抑制 や想像力」 を司り、それと同時に、小さくて したたかな 「原始脳」 の働きを調整している。

蛙の認知症

♣ これを「建物」の 比喩 (ひゆ) で言えば: 1 階部分は原始脳、2 階部分は高次脳と見られるだろう。もし、地震で家屋が崩れてしまうと、2 階の機能は低下~消失、1 ~2 階の間にあった連絡もなくなり、逆に 残っていた 1 階部分の働きが目立ってくる。

♣ つまり、ヒトは最期まで 本能的な脳幹部分 は温存される仕組みだ。特に 「異性」 に興味を持ったり、男女区分の抑制が曖昧になり易くなる。逆に 女性は男性に対して恐怖を抱く場合もある。

♣ 2 階部分の 「高次脳」 は、動物の中では、ヒトでもっとも発達しており、それだけに それが崩れた場合の損害も大きく、それが 「痴呆」 の症状として現れる。でも、2 階部分 (高次脳) は 一斉に壊れるのではなく、少しずつ壊れていくから、1 階部分の原始脳を抑制する能力も、パラパラ と不均等に低下する。

♣ その結果 「まだらボケ」 という、理解しにくい症状が発生する ---- あるときには正常な行為が、別なときには異常な行為が共存し、それがとても不思議に感じられる。

♣ イヌ や サル にも、小さいながら 大脳 が存在するので 高齢とともに痴呆が発生する。しかし、蛙 や 虫 には 高次脳がないので、痴呆は発生しない。蛙や虫には 「親切な蛙」 や 「親切な虫」 がいるハズはない 1 )

♣ だから 「蛙の認知症」 というものは 存在しない。もし このことから学ぶことがあるとすれば、“認知症 と 親切心 とは そもそも共存しない概念だ” ということでしょうか。

♣ つまり ある人が 「認知症であり親切」 という現象はありえず、老人をケアするうえで大切な予備知識と言える。1245字

参考:  1 ) 新谷: 「親切な蛙」 ; 福祉の安全管理 # 145, 2011.

職員の声

声 1 : 「高次脳機能のない蛙には痴呆がない」 という表題が印象的だった; よく理解できた(答: 痴呆とは “いったん獲得した知能が、なんらかの理由で失われた状態“ 、である; 蛙は そもそも 「知能を獲得していない」 から、痴呆もありえない、とも言える)。

声 2 : 大脳の働きが鈍ると、蛙のようになる、とは驚いたことだ; 「原始知能と高次知能の違い がとても」 よく分かり、ケアに活かせると思う(答: 高次脳が消失すると、ヒトの場合、寝たきりになる; だって神経細胞は再生しないから)。

声 3 : ヒトの脳が 「二階建て」 という説明が分かり易く、これで ケア・ワークで よく見る 「高次脳機能障害」 という診断書の意味がよく理解できる(答: つまり “蛙の脳に近づきつつある” 状態、と言うことである)。

声 4 : 犬や猫にも痴呆があるとはオドロキだ(答: 愛玩動物の 栄養・ 待遇 がよくなり 長命になるにつれ、犬の痴呆はしっかり増えてきた; 猫にも痴呆があるが、猫は屋外生活が多く 自然淘汰 (とうた) されるので、目立たない)。

(743) 認知症:進行と末期症状のメモ

(743) 認 知 症 : 進 行 と 末 期 症 状 の メ モ  

今日のお話は、一般的な教養ではなく 現場のの職員が 「ハテナ?」 と思うことに すぐ役立つ知識です。もし物識りの皆さん方なら 「復習」 をし、知らなかった人なら 「ナルホド」 と思いながら話を聴いて下さい。

♣ 認知症の勉強をすると、いろんな話を どっさり まとめて 聞き、前後事情など混乱することが多い。認知症は 「病気」 というより 「老化」 に近いから、老化の 原因・ 症状・ 対策 を一遍に詰め込まれると、とり留めもない 「物識りさんだけ」 になってしまい、いざ 現実の症例に出会うと、まとまった判断が困難になるものだ。そこで次の 4 点 ① ~ ④ で 知識 現場対応 の流れを仕上げてみたい。

♣   病気の進行と末期症状のメモ 高齢の認知症は、図 1 ) の左上にあるある時点で 「発症」 し、斜線で示される全経過をたどって 必ず 右下の「死」に至る。その経過は長短があるものの、およそ「10年」。まず 「即時記憶力」 に問題が始まり 「誤嚥性肺炎」 にたどり着く。

♣ 斜線の下側にその各論が述べられている。声を出して左から順に読んで行こう。書かれた順に病状は進む。この順番は前後が入れ替わることがなく、時の流れそのものとして 流れて行く。一番下の欄には病気の重症度が記されているが、「末期」 の後は間違いなく 「死」 へ移行する。これは老衰の後に 「死」 が訪れる順番と 全く同じ である。

認知症: 進行と末期症状のメモ


♣   FAST 分類  (機能評価分類) 事態は 七つ の段階に分類される。1.~4. のレベルは日常生活の支障がないので微笑んで対応できる。5. 以下は深刻になり施設入所が検討される。同じ入所であっても、手のかかる 6. は大変、7. は深刻な末期である。

認知症:進行と末期症状のメモ


♣   FASTの 6 と 7   この時期は時の流れとともに症状の進行が目まぐるしい。個々の様子を、うなづきながら 確認しよう。

認知症:進行と末期症状のメモ


♣   FAST 7 でのできごと FAST 7 では気になる病状が頻発するが、実はそれは単に病気の末期を意味するものであって、あわて 騒がない ! 以下は 認知症の米国ホスピス適応基準。

認知症:進行と末期症状のメモ

♣ 皆さん方に注意近年、介護の進歩によって、認知症の末期に至っても 「寝たきり」 とは限らず、車椅子移動 などをする方がある。そんな方に 「誤嚥・ 発熱・ 低栄養 ....」 の症状が出ると、あたかも 新しい病気 が発生したかの印象を受け、根本治療に励みたくなるものである。

♣ しかし実態は 「FAST 7 の表」 で示されるように、これらの症状は単なる 「末期症状」 の一つなのであって、ここで新たな治療の負担を ご利用者に加えるべきかどうかを よく見分ける必要がある 2 )

♣ もし 「身長と体重」 の数値から B.M.I. (体格指数)が 12 近辺の値であることが分かれば、万事窮す ! ! ーー 私たちがすることは 「お看取り」 のひと時を念ずるだけとなり、余分な処置を考える意味はなくなるであろう 2 )

参考: 1 ) http://www.seiwa-clinic.com/original21.html 2 )  新谷: 「安息の心とB.M.I.」、 福祉における安全管理 # 742, 2019.

職員の声

声 1: 認知症は病気というより 「老化」 であり、老化が進めば 「老衰」 で最期を迎える訳か?(答: 「症」 が付くので病気と思われがちだが、認知症は病気と異なり、年齢が高いほど罹患頻度が高くなる――そんな病気は存在しない… 老衰ならあり得る)。

声2: 今日のお話は、認知症がすっきりと良く分類され、客観的な状況が分かった――現場の人もここまで詳しくは知らないと思う(答: 認知症状が軽い内なら大したケア知識はいらないが、重症化して突飛な事態が現れて来れば、この系統的な知識はとても頼りになる。

声 3: 認知症ってナゼこんなにヘンな症状なのか?と思って聴いていたら、10 年後には 「死ぬ」 と言う深刻な事態が有ることに気付いた (答: 大抵の人は 「10 年後」 に死ぬってことを忘れている。個人差があるので、10 年後は 「7 ~ 8 年」かも知れないし、15 年位のこともあるよ)。

声4: 認知症について改めて学んだ… 訪問先のご利用者を思い浮かべながら聴いた(答: ご利用者の姿が頭に無い場合、今日の話に関心は湧かないかも知れないが、いったん あるご利用者の振る舞いを思い浮かべれば、その振る舞いの意味が凄く良く分かって面白いものだ)。

(742) 安 息 の 心 と B. M. I.

(742) 安息の心 と B.M. I.

  私どもは 資料として 「入念な介護の記録」 を残す。その中から 毎月測定する入浴時の体重から割り出す「 体格指数 BM Iの経過図」 (図1)をお示しする。BM I とはBody Mass Index(体格指数)で、この値が 12 に近づくと、ふつう天寿の終点となる 1) 。私たちは、BM Iの経過図 が どんなに客観的な判断の支えになっていることか、を強く感じている。

安息の心とB.M.I.

♣ 図 2は死亡された代表的な 3 例を示す。図の一番上の症例は 95 歳女性、認知症、最初の 6 年間はやや肥満のまま 水平・ 安定 に経過、6 年目に誤嚥をなさった。その後 3 年に亙ってB.M.I.は低下、やっと回復、再び 「誤嚥」 を 3 回経験され、その都度 ご家族の希望で入院された。入院すれば点滴の生活だから、必ずB.M.I.は低下して行く(毎回 2.5 B.M.I程度)。

♣ その都度 体力のレベルは低下し、5 度目の誤嚥では ご家族はもう入院を希望されず、週余のちに他界された。お看取りに 「悩み」 は尽きない。しかし、ご本人とご家族で 「95歳、年余にわたる認知症」 と BM I ≒ 12 が一致するとき 1) 私どもは、そこに なにがしか “天寿の安息” を見出すことができる、と信じている。

♣ 2 番目の症例は 90 歳男性、認知症+左大腿骨・骨頭骨折。当初から B.M.I.= 16 の栄養欠乏だったが 2 年のうちに B.M.I. 18 の正常近くまで回復、そこで誤嚥された。直後から 1 年の経過で 直線的に降下、B.M.I.が 12 のレベルで他界された。
安息の心と B.M.I.

♣ 3 番目の症例は 99 歳女性、認知症+右大腿骨・骨頭骨折。入所時から痩せ細っておられ B.M .I.=14。しかし 2 年間は安定してお過ごしの 幸せ ところ 「誤嚥」、1 年かけて B.M.I. は危険域の 12 を割り込まれた。 99 歳でありながらも 不憫 (ふびん) に思われたご家族は 「胃瘻」 を選択、しかし 栄養回復の効果はなく、 1 年未満の羸痩 ( るいそう) のなかで世を去られた。

♣ これら 3 症例は 「誤嚥が源」 で体重が年余に亙って低下し続け、B.M.I.が危険域= 12に達した頃、死亡されたのである。

♣ そもそも医療というものは 「痛みを和らげる、怪我を治す」 ことからスタートしたのである。しかし 医療・ 看護 が発達し始め、その結果、平均年齢は 50 歳から、どんどん延びて、近年では 90 歳に近づいた。

♣ 「延命」 へ突き進んできた日本の医療が、今や 「どう治すのか」 から、 「超高齢者の命を どう終えさせるのか」 という 新しい難題に直面するに至った。

♣ 2000 年に 「介護保険」 がスタートしたのは 良いタイミングだったが、主力は あくまで 「介護」 であって 「治療」 ではない。ところが、人間の心は簡単に変えることはできず、「うちの親の命を延命して欲しい、一分でも一秒でも長く ...」 という声は、医療の現場と同じように多いものだ。

♣ こうなると、ご利用者を病院へ 救急搬送・ 心肺蘇生 の道に乗って頂くことになり、老衰・臨死のご本人も、ご家族も 塗炭 (とたん) の苦しみを味あわれてしまう。

♣ しかし、最近は 「老衰老人の命には限りがある」 という達観も世間へ徐々に浸透してきて、今や 「自分の最期は自分が決める」 となりつつある。パールでは 早い時期 全例に 「Informed Consent」 (説明と同意の書) を取りまとめる。

♣ その時に、 「① 不安のため 病院受診を希望 しますか? 経口摂取が不可能になったとき胃瘻をつけますか? 緊急搬送を望みますか?」 の 3 点 をご家族との会話で十分に話し合ったうえで希望を書面に書き留める。

♣ 日本の 「特養」 の態勢はスエーデンと同じであり、酸素投与や点滴などの設備は備えていない。消えて行く命の将来 (予後) は決め難いものである。しかし上記でご覧のように、B.M.I. のチャートに 「 12 」 という数が現われれば、亡くなることの 必然性 が はっきりと 何ヶ月も事前に 見えて来る

♣ パールでは この成績を以って、安息の心 をご家族と分かち合う習慣が確立し、終末の混乱を和らげることに大きく寄与しているのである。1970字  

要約:  天寿の終点が B.M.I. = 12 であった 3 症例を提示した。 日本の医療が、今や 「どう治すのか」 から、 「どう命を終えさせるのか」 という 新しい難題に直面するに至ったことを概観した。 容易に測定できる B.M.I. の方法により、お看取りのチャンスを事前に確保できる経緯を説明した。

参考: 1 ) 新谷: 「天寿の終点は BM I = 12.0 」; 福祉における安全管理 # 33, 2010.  

職員の声

声 1 : BM I のチャート (図) で、あとどのくらい生存できるかが推定できるとは凄い事だ(答: BM I が 12 に至る経過がそれを教えてくれる――私ども、従来 20 年間の経験で BM I = 11 が 3 症例あったが、例外なく亡くなった)。

声2 : BM I = 12 が生死の境 1 ) とは初めて聞く … 食べられないから親に胃瘻を付けて、なお衰弱状況が続くのを不憫 (ふびん) に思うご家族の心境は如何ばかりだろう?(答: 昔 親は自宅で亡くなり、その理 (ことわり) は家族に自覚されたものだった … ところが今は他人任せの親の運命、傍でただ オロオロ して自分の意見を持つ余裕に乏しい)。

声3 : 施設は延命しなかったことを理由に 刑事責任 を問われることもある(答: 人間 いつかは死にます、超高齢者は特に簡単に … ある 99 歳の女性、老衰の極みに BM I が 12 を割り込んで 、不憫 (ふびん) に思ったご家族が胃瘻を希望、設置されたが 間もなく世を去られた … ご本人もご家族も安息のひと時も無かったようだった)。

声4 :  ご本人の安息が得られるような確実な方法はないものか?(答: 認知症の末期では 「記憶と見当識」 (時・ 所・ 人) が失われており、本人への配慮 というよりも むしろご家族の安息に役立つことを考えるのが適切ではないか)。

(741) 薬っ て 何 に 効 く の ?

 (741) 薬っ て 何 に 効 く の ?   

  皆さん方、「薬が効くって」 不思議な現象だと思わないだろうか? 私は一度 「サンタ」 というお話をした 1 ) 。つまり 「使っ良かっ、 効い」 の 「3 」 である。健康増進薬やお化粧品の多くは 「サンタ」 なのだ。

♣ 次に 「プラセボ」 の話もした 1 ) 。新薬が世に出る前には、プラセボ という 偽薬 が必要であった;その偽薬が案外に本薬よりも有効なことがしばしばある ! このことは 「インチキ」 でも何でもなく、人の心のなせる ワザ なのである。

♣ 「薬」 といえば、関連語は 「治す」 だろう。何を治すのか、と言えば 「やまい」 と来るが、「やまい」 は 何万種類 もあるので話が発散する。ここでは、「自覚的にも 他覚的にも効く薬」 を考えよう。そんなものの代表は、数種類くらいしか存在しない。

薬って何に効くの?

♣ まず、歴史的には 痛み止め」 だ。世界での始まりは かの 「アスピリン」 である( 1899 年)。この薬は確実に効き、本当に有難い。明治時代 よりも以前に、体の痛い人々はどうしていたのだろうかと昔をしのぶ程である。

♣ 次に効くのは 輸血」 ;これは 1915 年に クエン酸 が血液の凝固を防ぐことが発見され、輸血の実用化が始まったのだ。第一次大戦は 1914 ~ 1918 年の後半の時期には、兵士の出血死を 輸血 で防ぐことに貢献出来た。

抗生物質」。アレクサンダー・ フレミング の抗生物質 ペニシリン の発見、その実用が挙げられる( 1929 年);このおかげで第二次大戦時のイギリスの首相 ウインストン・ チャーチル は肺炎死から免れ、祖国を救ったという有名な風聞がある。

薬って何に効くの?

そして、ご存知の「 インスリンステロイド 」!! これらはヒトの体の中に実在する成分であり、インスリン は豚の膵臓から抽出され、順次 ヒト型 の成分に変更された。ステロイド は主として 「副腎皮質ホルモン」 である。効くなんてもんじゃない ! これらは効き過ぎてトラブル続きだった !!

降圧薬秋田県 は日本一 脳出血 の多かった県だった; 白いご飯と 漬物 という食習慣を改め、降圧利尿薬を用い、アッと言う間に、脳出血の汚名を返上してしまった。 しかしその後、脳出血に代わって 脳梗塞 が増え始めた。いったい、薬って何に効くものだったの?

抗脂血症薬。先進国では 「治す薬から長生き薬へ」 と代わってきた。その ターゲット になったのが抗脂血症薬だ。うまい物をたらふく食って、太って、長生きしたい。その血液内には コレステロール という脂肪分が溜まっている; こいつを叩こう !!

♣ 20 年まえは血液 100 cc 中 250 mg を正常の上限とされていたが、以後 220 mg に、さらにどんどん下げられる機運にある。これにより、薬の適用範囲が広がり、世界中で 何億人も多くの人たち がこの薬を飲む羽目に追い込まれた。

♣ ヘンではないだろうか?そもそも体の中のコレステロールは その 60 ~ 70 パーセントは自分の肝臓で作られている。コレステロール は性ホルモンの基礎物質であり、また 「細胞膜」 の素材でもある。コレステロールは 罪人ではなく 「我がスタミナ」 なのである。

♣ この薬を使うと、統計的にコレステロールは確かに下がる。世界の製薬会社はその点で嘘を言っていない。しかし、最近この薬は 何の目的に効くのか 疑われている。

♣ これと同じ疑問が他の薬にも提示されている。例えば インルエンザ の タミフル は世界の 70 % を日本人が消費している、と聞けば 2 ) 、私たちは胸に手を置いて、この事を考えるべき時期に来ていると思うのだ。それは日本人だけに効く薬なのか?果たして効いているのか?

♣ 薬は 研究者・ 薬剤会社・ 医師・ 患者 の間で流通するものであり、上記の薬の ① から ④ まではほぼ正しい流れであったようだが、薬の利用は複雑な要素に もて遊ばれている。

♣ ⑤ の降圧薬は 初期の恩恵を逸脱 して正常血圧の基準値が 160 / 95 からどんどん下げられ、今では 130 / 80 を越えたら薬物適応とされる … つまり日本人の 約半数 が降圧薬を必要としている始末。何のための降圧か?が問われている。

♣ 脳疾患や循環器病の予防で出発したのは正しかったが、血圧を下げ過ぎて 「過降圧 」 の副作用が現在の大きな問題点となっている。⑥ の 抗脂血症薬 は今や日本だけの蛮行とされる始末なのだ。

♣ 薬は 「治す」 ことから 「予防」 することへ、続いて 「売らんかな ! 」 の世界に突入したかのごとき混乱に陥っている。

薬は治しません…本人に治る体力が残っている時に、それの 後押しをするのが 「薬」 なのである。従って、高齢者のように治る体力が衰えてくれば、薬の治す力も衰えてくる。もし薬が効かない場合には 他の薬を増やし、老人の 「多薬治療」 となり、悪循環に悩むのが現状である。

♣ あるべき姿は (A) 一つの病気に原則一つの薬、(B) 効いてない薬は摂取を止める、(C) 水溶性の雑多薬は腎臓に負担を掛けるのみ、(D) テレビからの雑学知識を振り払う。これだけで随分すっきりとしてきますよ。1968字

要約:  薬はおよそ 1 万種類あるが、そのうち代表的な 6 種類の薬の 自・ 他覚 的意味を考えた。 薬は治さない
…本人に治る体力が残っている時に、それの 後押しをするのが 「薬」 なのである。 それが日本人だけに効く薬であるとすれば、警戒の姿勢を持とうではないか。

参考: 1 ) 新谷: 「認知症にサンタはなし」 ; 福祉における安全管理 # 708, 2019. 2 ) 「タミフル、世界使用の4分の3が日本 世界では特異」、Blogos ※2019.5.30、

職員の声

声1: 昔、医者に気軽に掛かることはできなかったのに、今では気軽に掛かって薬をいっぱい飲む(答: 戦後 急速に広まり、日本の国民性に一致した医療と薬剤事情、良いことばかりではなく、行き過ぎ事態にはチェックが必要である)。

声2: 薬は 「毒」 という人もある(答: 薬はすべて 「毒」 ですよ、それのごく微量を用いることによって期待する薬効が得られる…だから薬を多量に用いると 「毒」 そのものに逆戻りだ)。

声3: プラセボ とは効かない代用薬が効いた訳だが、本物の薬が効かないこともあるのか?(答: それがあるのだ ! つまり、薬は主役ではなく、本人が主役なのだ…本人の気力をサポートするのが薬なのである…浮気な心には効かないのだろう)。

声4: 「病は気から」 と古くから言われるが、加齢に伴う 「多薬」 には心が痛む(答: もし薬が 「有料」 であったれば 「多薬」 という現象は起こらないだろう… 年寄りが 体の愚痴を言い過ぎるのか、政府の老人優遇処置が行き過ぎなのか、たぶん両方なのだろうな)。
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「ふじ」=新谷冨士雄
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