(300) 裸の王様

 (300) 裸 の 王 様

 人は誤りを犯す動物です(Humans make errors)。その誤りを発見するまでの段階に「ヒヤリハット、ニアミス、アクシデント」の報告がある事を、皆さん方は知っていますね。もっと高級な誤りもあり、三つの例を挙げます。

♣ 先月、さる有名な「物づくり大企業の凋落(ちょうらく) 」が新聞に報じられました。会社の中枢部は「物づくり」をコツコツするよりも、金融の「先物取引」の方が 楽で儲けが多い と知りました。その結果、自社製品の品質維持をおろそかにし、その有名なブランドは いまや回復困難なほど傷つきました。現場が発する危険信号はトップ経営者に届かず、社長は「裸の王様」になって、ブランド名とともに業績悪化の道を止めることができません——アクシデント報告を重く見なかった経営者責任の問題ですね。

♣ 次の例は、10年以上も前、別な会社の話しですが、皆さん方も たぶん 耳に残っているこの言葉 = 「君、それは本当か !? 」。この言葉は ある有名ブランドの食品会社で発生した食中毒事件での言葉です。社長は自信を持って取材記者たちの前で 事故の疑いを否定しました。しかし、その席で工場長の耳打ち を受けると、真っ青になって記者会見の席で 絶望的な目を工場長に向け叫びました:“君、それは本当なのか? ” 社長は 自分の知らない所で「ブドウ球菌中毒」という事故が発生していたのです。もちろん、彼は責任をとり、その会社は解散の憂き目に会いました。この場合の社長も「裸の王様」でした。悪かったのは 社長なのか 部下なのか、傍では分かりません。

♣ 三つ目の例、某施設で この冬寒の報告です。特養のご利用者85歳の方が、深夜、寒い とおっしゃるので、職員が湯タンポを足に付けてあげました。半日後の午前、麻痺側の足に3×10cmの水泡が発見されました。典型的な「低温火傷」ですね。しかし、発見後の初期処置は的確で、K大学の皮膚科で最高の治療をして頂き、ほとんど問題ない状態に落ち着きました。

♣ 問題は損傷の第一発見者が なんと盲目のマッサージ師だったことです。湯タンポをいれた職員の報告では「麻痺側でない、右足の外側に湯タンポを置いた」というものでした。最終調査によると、「足の下方に湯タンポを置き、その上に直接、両足を乗せた」というものです。これでは事故は必須です。職員のレポートを受けた責任者は「裸の王様」になってしまいました。「きみ、それは本当か ! ? ! 」と言いたかったでしょう。

♣ 人は誤りを犯す動物です。だからこそ、二重・三重にチェックを心掛けます。どうか、ホウレンソウ 1) を励行し、どうぞ、パールの経営者を「裸の王様」にしないで ください。

  参考: パールの安全管理 1)  #147 : ホウレンソウ。

職員の声

声1: 「現場の実情」と「トップの判断」は しばしば泣き別れます;これを放置すれば組織は崩壊 です(係り:どちらかのサイドの責任とは断じがたい、双方でホウレンソウを尊重する姿勢が必須ですね)。

声2: 大会社なら危機管理部門が目を光らすでしょうが、小規模な介護施設で特に注意する姿勢を教えてください(係り:各職員が「一般教養を深め、迅速なホウレンソウを実行すること」に尽きるのではないでしょうか)。

声3: アンデルセン童話の「裸の王様」ですが、やはり王様は側近の言うことを鵜呑み にしてはいけない;王様といえども 現場を知るべき だと思いました。

声4: ふつう「湯タンポ → お年より . . . 」と聞けば、第三の言葉は「やけど」ではありませんか?(係り:その通りです;「岡目八目(おかめ はちもく 2) )で、第三者には すぐ分かることが、 寒がっているお年よりに接すると 見えなくなる . . . それがヒューマン・エラーの元です)。

声5: 人は誤りを犯す動物です;故に、二重・三重のチェック が必要なのですね(係り: 同僚の職員に見て貰えばよかった のです)。

声6: ヒューマン・エラーが起こる背景には、何らかのリスクファクターが存在します;それを少なくすべく、業務改善の提案を行なって行きたい(係り:介護ケアは かなり“個別的業務”ですね——つまり、大勢の人の前での業務ではありません;だからリスクの大きい仕事です;それだけに「人の意見を聴く、相談する」という姿勢が強く求められます)。

声7:他山の石3, 4) という言葉をよく聞きますけど(係り:人の失敗から学び取る、ということですね。私たちの技量の大部分は「他山の石」の集積だ と思います;失敗を怖がらず、さりとて「裸の王様」の愚かさを繰り返すことなく、しなやかに進んで行きましょう)。

参考: 2) 岡目八目 = 人の碁を わきから見ていると、打っている人より八目も先まで手が読めるということから 第三者は 当事者よりも情勢が客観的によく判断できるということ。  パールの安全管理 3) # 81 : 人は見かけによる。 4) # 126 : 万年目の亀、その2。

(299) 靴に 足を 合わせる

(299) 靴に足を合わせる  

 新しい靴を履いて何日かたつとその靴は足に馴染んできますよね。服や着物・住まいや習慣など「馴れ」が大事な要素です。今日の話題である「靴に足を合わせる」も 一つの生き方の 大事なプランなのです。

♣ 昔、日本の兵士は「靴に足を合わせ」ました。靴の種類は「大・中・小」;そのいずれかに 自分の足を合わせなければなりません。その逆の「足に靴を合わせる」 = 自分専用の特注の靴、はありません;だって戦地で靴が破れた場合、大中小の靴なら 兵站(へいたん)で すぐ間に合いますが、特注靴を待っていたら 戦闘に負けてしまいます

♣ でも平和な時代の到来とともに、いろいろのモノが世にあふれて来ました。大中小の「お仕着せ用品」は飽きられてしまい、靴だって「足に靴を合わせる」のが当たり前になりました。

♣ 40年ほど前、私が聞いてビックリした外国語に“プレタポルテ”があります。それはフランス語で「高級既製服」を意味する言葉で「すぐお召しになれます」、つまり サイズが“ほぼ ぴったり”であって、店頭で少し直せば「すぐ着ることができる」という高級な販売法でした。こうなると「服に体を合わせる」のではなく、逆に「体に服を合わせる」時代の到来です;感慨深いものがあります。時代はさらに進歩し、「生活に供給を合わせる」のが当たり前になってしまい、現代に住む人々は、老いも若きも、王侯貴族の贅沢を楽しみます。今や、「靴に足を合わせる」古臭い思考は消えてしまいました。

♣ でも、ここでやっぱりトラブルが発生です。

その ①:-福島の原発・電気の値上げ問題の発生:電気はあるのが当たり前の生活に馴染んでいたところ、大人たちは みんなオロオロしています;いまさら冷暖房を手放す気はないからです。

その ②:- 痛んできたインフラの再生問題(道路・橋・上下水道・電気 等の設備)。大盤振る舞いで拡充したインフラを整備点検する時期が到来しましたが、日本の今、更新するお金が調達できず、途方に暮れる自治体が続出です。解決は「人の住み方に合わせてインフラを整備する」のではなく、逆に「インフラに合わせた人の住み方」を調整することでしょう。小規模集落に都会並みのインフラを期待すると、社会資本の効率は落ちますし、第一、お金が足りません。日本の人口構成も「少子高齢化」、これにならい、このところ「ダウンサイジング」(Downsizing)という言葉が意識されるようになりました —— サイズを小型化する、少数化する、という意味 → 昔 アメ車、今 小型車など。

♣ その ③:スエーデンの「断種法」! ビックリです。ご存知 スエーデンは福祉大国。裕福な高福祉を維持する ためには、国家の足を引っ張る者には子孫を残させないという「断種法」を1934年に制定(~1970);悪い子を淘汰し、出産の差別化を図ったのです。全員を幸せにできない場合、非人道と言われようとも、福祉給付対象の人数を制限せねばならない「自己矛盾」だったのです。ごっつい工夫でしたね。

♣ その ④:-日本で「70歳逝去法」の成立。今年(2012.2.25) 某週刊誌の記事で、あくまで物語です。日本国籍を有する者は、70歳の誕生日から30日以内に逝かねばならない、という法律(12.3.12可決)。政府による その趣旨は、やがて国民の多数が“超高齢化”するため、年金・医療・介護の予算が枯渇、また少子化の影響でGDP(国内総生産)は激減国家が崩壊する恐れがあるから、です。もちろん、この法律が実行される前に、年金の大幅減額;イギリスのように 透析は60歳で終了など高齢者医療の縮小、介護の認定条件の峻烈化。効果が見られなければ「逝去法」の実施となる。この④は まだ物語に過ぎません。

♣ でも、胸に手を当てて思い返せば、私たちは「天然」を 余りにも無視しすぎて来た ことを反省しなければなりませんね。昨今では「世代会計1) という 高齢者の厚遇批判もあります。無茶な節約を迫るものではなく、あくまで「天然・天寿」を頭に置き、無駄を省きましょう。「人類」だけを最優先ではなく、 天然」をも最優先の同列に置き 将来の展望を企画してみては如何(いかが)でしょうか。

参考: パールの安全管理 1)  # 302 : 世代会計。

 職員の声 

声1: 今 93歳の ご利用者、先の戦争中、足に合わない靴で長い行軍を続け、今 足指が変形したままだそうです(係り:戦地では バス・トラックがなく、重い荷物をしょって何千キロもの行軍は大変でした;その上 靴の大小トラブルもあったのですね)。

声2: 昔、人間は あるがままの自然環境の中で暮らしました;今、人間は自然を改変して 自己条件を優先して暮らし、環境問題も発生中です(係り:人間本位もほどほどにしなければ、環境から しっぺ返しを受けます)。

声3: 天然を変更するだけでなく、生活も「人類の福祉本位」になり、人口は10億人から100億人へ、人生50年が人生100年へ、エネルギー資源も大量消費です(係り:100億の人間個々が 自分専用環境を注文製作するのでは、自然が破壊し尽くされ てしまいます——“大量消費は美徳である”という過去のモットーを訂正しましょう)。

声4: 現代の幸せがあるのは お年寄りのお陰だから 彼らを長生きさせたい です(係り:たとえば、平和は退役軍人のお陰 ですが、その方々を厚遇しすぎると現役軍人の維持に支障がきます;バランスをとりましょう)。

声5: 「70歳逝去法」は単なる物語かもしれませんが、ゾッとします(係り:イギリスでは透析に関して「60歳逝去」が現実です;植民地を失った同国では 高齢者の医療問題が深刻です)。

声6: 昔の日本なら「身の丈に合った 人生50年」を喜んで生きました;もし「人生70年」と問われれば“大喜び”だったでしょう;でも今 それを言えば “怖がられる”(係り:高齢世代が 自分の拠出した金額の 5倍を 若者世代から迂回される老人厚遇” が 今の時代です1) —— 何か手を打たないと 若者の破綻は間近でしょう)。

声7:モノ は人間のために有る」 と考える 尊大な人間 ! 逆に、天然資源を守るために“70歳定年”どころか「70歳逝去」を考えるのも人間です(係り:姥捨て山(うばすてやま)も70歳でしたね——要するに、長生きOK、ただし若者から収奪するなかれ)。

声8: 今の豊かさから ダウンサイジング (モノの数や量を減らす生活)が果たして できるかしら?(係り:地球人口は生み放題で もうすぐ100億人、しかも みんなが100歳以上の生存を希望、美食・暖冷房も希望;あなたが もし世界総裁なら どう舵を取りますか?)。

声9: 地球人口とは別に、日本の未婚率は近年7%から30%に上昇;その昔は今より貧しく 先も見えなかったですが、若者は結婚しました;今 人々は我が侭です . . . 子供を産み 育てやすい社会を作らねばならないけれど、同時に「靴に足を合わせる」天与の姿勢を学び取りましょう;天然は人類と同格であるべきです

(298) 人間脳 と 動物脳

 (298) 人間脳 と 動物脳  

 デイ・サービスの認知症クラスのY.K.様(86F アルツハイマー認知症 要介護1)は、何かの拍子に 不穏・帰宅願望が出ます。自宅にいても不穏や昼夜逆転、居眠り後には まったく別人になったような挙動の断絶変化があります。認知症で「帰宅願望や不穏」になるのはナゼでしょうか?

♣ このような不審な様子は 介護保険の対象者のほぼ全てに関係する「重要問題」です。精神科の嘱託医・O 先生のご意見を伺いました。

O 先生> 認知症のお年寄りでは、帰宅願望は ごくごく普通に見られる。それを制止しても止むことはなく、また願望を叶えて ご自宅に案内しても“ここはワシの家ではない”などの発言もある。ここで 私の一経験例を示す:その方の帰宅願望は人並み以上であった。よくよく聞きだす”と、帰りたい先の家は今の家ではなく、自分が育った 昔の家だ、と言う。そこで、昔の家 = 伊豆の大島、波浮港 (はぶのみなと) の丘の上まで同道 してみた。しかし彼女は“ここではない ! ここは違う ! ”とおっしゃる。本人の希望を聞いて 遠くまで同道してみたものの結局 彼女の希望は満たされず、変な経験をしただけに終わった。

♣ 「帰宅願望」は「帰巣本能」の一形態であると説明され、動物一般に認められるものである。人間は ふだん 大脳の作用によって自分の「帰巣本能」を他人に洩らすことはないが、大脳細胞が萎縮する認知症では、「帰巣本能」を抑えきれず 表に出してしまう。また、居眠りの後に「変な挙動をする」とのことだが、ご自分は居眠りしたことを記憶していず、居眠り前後の「不連続感」に何かの違和感を持ち、それが不穏に繋がるのだと思われる。

♣ ここで 振り返って人の脳のつくりを復習してみよう。人の脳は、脳底部にある「動物脳」と、その上にかぶさる「人間脳」より成る 1) 動物脳は生命維持に必須であり、食事・排泄・恐怖などを司る(古皮質とも呼ばれる)。他方、人間脳は、進化の後に付け加えられた脳、つまり新皮質とも呼ばれ、 「人の知恵」を司る大事な機能を持つ;ただし「もろく 壊れやすい ! 」。

アルツハイマー認知症で壊れる部分は、この新皮質であり 古皮質は無傷である ! その結果、人の行動は だんだん動物脳で支配されるようになる。帰宅願望や不穏は、そのせいだと考えられている。これに関して、当のご本人に尋ねても 理由を説明できない から、私たちは推測するのみであるが、アルツハイマー認知症は 治ることのない病気であるゆえ、いくら尋ねても、正しい答えは返って来ない。真面目にその方の人権を尊重すると、 波浮港 (はぶのみなと) の丘の上 にまで同道することになる。

参考: パールの安全管理 1) # 231 : ど忘れ。

職員の声

声1: この方は街で徘徊・転倒 されましたが、ケガにもかかわらず、みごとに帰宅されました;帰巣本能のおかげ でした。

声2: 「帰宅願望・不穏」等の行動は「人間脳の萎縮」によると言いますが、やはり精神上の「きっかけ」があるように思いますが(係り:その「きっかけ」は大脳で発生します;大脳が故障すれば「きっかけ」も発生しません)。

声3: 動物園に海外からつれてこられた動物たちが 故郷を思い出して鳴く姿、これがご利用者の姿と重なりあいます(係り:帰巣本能が満たされない、という状況はあるのでしょうが、「故郷」という概念は 動物にはありません)。

声4: 脳は大事な臓器です;崩れて欲しくないですが、逆に「天才」になる崩れ方はないものでしょうか?(係り:熱力学的には“ある”そうです;ただし、その確率は100億分の一くらい——地球人口が今70億人ですから、事実上 “ない”と言えます)。

声5: 病気になると 脳底の「動物脳」が その人の人物を支配するようになる のですね;だから予測もできない認知症の行動が起こるのですね(係り:わずかに残っている大脳が 少々人らしさの味付け をするでしょうが、それは その人によります)。

声6: 体の他の部分の病気なら「部品の故障」に過ぎませんが、「大脳の故障」は「人間の尊厳」に関わります;私は ケアを通じて、認知症であればこそ、ご本人の尊厳を守りたいです。

((297)  健康 寿命 と 最期  

(297) 健 康 寿 命 と 最 期

この表題で、皆様方はぼんやりと、その意味が推定できるでしょう。そうです、平均寿命が長くても「元気な長生き」でなくては意味がない、と。しかし「元気と不元気との境目」を どう見分けましょうか? この点に関しては、WHO(世界保健機関)がある程度の見解を示しています。

♣ 大きく二つの考え方があります: ① 心身障害のない平均寿命、つまり健康寿命とは、その人の基本的 A.D.L.(食事・更衣・排泄・入浴)の遂行能力に支障がない生存期間である(実務的には「要介護でない期間」)。 ② 心身障害のある平均寿命、これは重い病気や難病で困っている場合、その程度に応じて、寿命の年数を統計計算の上で」、割り引いて計算します(例:不妊慢性リュウマチは2割減、認知症は3割り減、など)。

♣ ① について、東北大の研究があります。それによると、日本人の65歳時点の平均余命は、男 16.1年、女 20.4年ですが、自立でない期間は、男で 最後の1.4年、女で2.7年だと言います —— 逆に言えば(平均値ですが)人々は この程度の期間、介護を受けたあと、亡くなる、という意味です。

♣ ② については、WHOの2002年の測定結果があります。これによると、日本人男性では平均寿命78年のうち、終わりの5.7年が「要介護」(寿命の7.3%)、女性では85年の平均寿命のうち、おわりの7.3年が要介護(寿命の8.6%)と判定されました —— 人生の最後 およそ 8 % の期間は「要介護」である、と理解されます。② の資料のほうが、なんとなく身近な気がしませんか? いずれにせよ、日本は平均寿命・健康寿命ともに「世界最長」という結果でした。

♣ ちなみにスイスの障害調整平均寿命は、男性 71.1年、女性 75.9年;最短記録はシエラ・レオーネ(アフリカ、男 27.2年、女 29.9年)などです。こうしてみると、日本は「なかなか元気な期間も長い延寿国ではありませんか !!

♣ 20世紀の医療福祉を一言で要約すれば、それは「延命の医療福祉」です。長い人類の歴史の中で、これほど顕著に平均寿命と延命期間が伸びた時代はありません。

♣ しかし、一つの成功は新しい課題を生みます。つまり私どもは、単に 統計的な長寿ではなく、要介護でない長寿を希望しています。それは「無いものねだり」でしょうか? 私たちに求められる課題は、この「要介護の期間を短くすること」でしょうね。それを可能にする方法を工夫しなければなりません1~3)

♣ さて 最後は難問です。我々は理想的な(要介護時期の短い)長寿を達成する、としますが、最後はどのように逝く のが良いでしょうか? 85歳以前の場合、統計上 多いケースは(30%)・心臓(16%)・脳卒中(12%)ですが、人は高齢も85歳を越えると これらの病気で死ぬ頻度が 大変 少なくなります。ちなみに 死亡原因の第4位は「肺炎」——いわゆる「誤嚥性肺炎老衰」(10%↑)が次に現れ、第5位は入浴関連(4%)、後は「自殺・交通事故など」(3%)で、病気から離れ 社会現象となります。つまり 病院対応の効果は薄れ、家庭 または 介護施設対応が主力となるでしょう。

 ちなみに、超高齢者での「突然死」は「不整脈」によることが多く、その原因の「心筋梗塞」は否定できませんが、数はすくない。新聞に載る診断名は「心不全」が多いけれど、その実態は 「認知症・老衰 → 寝たきり誤嚥性肺炎」が主体のようです。なお「大往生」という病名はありません。つまり、(ことわざ)に「大往生したければ、医療にかかわるな ! 」というのもあるほどです。

♣「誤嚥性肺炎」を選べば、その経過は1年から5年程度かかり、要介護度の高い「寝たきり」となるため、介護者からは喜ばれません。これを避けるとすれば、あなたの最後の選択は「第5位:入浴関連」( = 水に溺れる)でしょうか?これも 釈然としませんね。この現実を考えるのはイヤだから、何か楽しい旅行プランでも立てて 気晴らしをしましょう。人々が「ピンコロ地蔵」に参拝する気持ちがわかりますね。

参考: パールの安全管理 1)  # 228 : 三つの寿命。 2)  #247 : スエーデンの認知症は優雅か?  3)  #248 : 介護の将来像。

職員の声

声1: 私の介護職暦は5年ほどですが、もし私がこの統計を聞いていたら、日本人の長寿度にたまげていたでしょう(係り:日本人の長生きは有名ですが、要介護の時期も一番長い、とは知りませんでした;支える側の尽力も大変ですね)。

声2: 人生の終わりの 8 % 程度の期間 が「要介護」になっているとの統計ですが、私は この事実に まったく気付きませんでした。

声3: 日本が長寿なのは「平和・栄養・医療」のおかげ、と思っていましたが、いまこそ「要介護」の期間を短縮すべく 工夫したいです(係り: 8 % の法則 」を敷衍(ふえん)すれば、死亡90歳なら要介護期間= 7.2年、100歳なら8.0年などとなり、寿命が長ければ長いほど、要介護期間は延びます;ピンピンコロリは無いものか?)。

声4: 私は要介護期間を短くすることに大賛成です(係り:もちろんです、だが その各論が問題なのです ! —— 世の経験者は 高齢になっても 「ジョッギングとか、ヨガ . . .」が良い . . . オーケストラの指揮者は 超高齢で 指揮中にコトンと逝く、など 万人向けでない奇抜なアイディアを出します)。

声5: 特養のS.S.様は“ご臨終”になったあと45日も穏やかに過ごされました;それは 水分・栄養・愛の結晶によると思います(係り:関係者のご努力には敬意を表しますが、この場合 「延寿ではなく 延命だった」のでしょう)。

声6: 私は20歳ですが、80歳くらいまで生きて、コロリと逝きたい です;延命はお断りです係り:もし あなたがコロリと逝ってしまえば、周りの人たちが「無関心・虐待の罪」に問われ、手錠を掛けられるかも知れません —— 日本では コロリと逝くことも ままなりません)。ご自分がしてもらいたくないことを 他人にしてあげることは よくありません。日本の「延命習慣」は「悪習」でしょうね。

声7: でも「 8 % の法則」で110歳まで生きたとすれば、要介護期間が約9年になります;それでは「能なしの人生」です(係り:このあたりの事情は、医療・福祉や道徳では解決できず . . . まだ未開発の領域です)。

声8: 最期は どんなのが良いかって? . . . もっと他の選択肢はないのですか?(係り:不老不死で天国へ、でしょう —— チャールス・ダーウイン、もはや、進化論に無関係な世界です ーー どんな形で逝こうと、人類の予後に影響はありません)。

(296) 今の福祉は ご誓文に 沿っている?

(296) 今の福祉は ご誓文に 沿っている?   

前回、胃瘻と「五箇条のご誓文」を話しましたが1) 、皆さん方の「感想文」では ニュースバリューの大きい「胃瘻」の方に気持ちが集中していました。無理もない、「ご誓文」なんて 古臭いし、知らなくて当たり前。私の話し方が不十分で、反省しています。そこで今日は 五箇条を一つずつ語り、福祉との関わりをみて行きましょう。このご誓文は 1868年、政治が 徳川から明治に代わるに当たって、「天下の政治は世論の向かう所に従って決定せよ」という趣旨のご誓文です。当時では画期的な施政方針でした。今の社会と比べて見ましょう。

広く会議を興し、万機公論に決すべし。万機=多くのの重要なことがら。 ➙ 時は封建時代の徳川末期、すべての国策は徳川将軍(実際は大老)の独裁、「上意下達(じょうい かたつ)で、有無を言わせず 下位の者を従わせてきました。1853年 ペリーの大砲外交で、大老は初めて対策の奏上を諸藩に求めた——つまり それ以前は 会議を興さず、万機公論をする習慣がなかった。今風にいえば、密室談合で物事を運んでいたのです。明治天皇は「密室政治を排せよ」とおっしゃったのです。そうでなければ 新しい世は開けなかったでしょう。

上下 心を一(いつ)にして、盛んに経綸(けいりん)を行なうべし。経綸=国を治め整えること。 ➙ どの国でも「心を一つにすること」は難しいですね。今だって、原子力発電について 心が一つになっているとは言えません。盛んに経綸を行なえば、国の方針が明瞭になり、仕事もしやすくなるでしょう。

官武一途(かんぶ いっと)庶民に至るまで各々その志を遂げ(とげ)、人心(じんしん)を倦ま(うま)されしめんことを要す。官武=公務員と武士・軍人。➙ 徳川時代は「士農工商」の時代でした。「士」つまり武士以外の人が「意見を持つ」ということは ありえなかった。ご誓文では、万民が志を遂げ、人の心を「飽きあき」させてはいけない、と述べます。民主主義という言葉はなかった時代ですが、心は民主的ですね;しかも「人を飽きさせてはいけない」という点は お見事 ! 政治に限らず、一党独裁はよくない、とも取れます。

旧来(きゅうらい)の陋習(ろうしゅう)を破り、天地(あめつち)の公道にもとづくべし陋習=悪い習慣、あめつち=天然、自然。 ➙ これは前回の「胃瘻」1) でお話しました。以前は、頽廃・悪習(たいはい あくしゅう)と知っていながら、前例に見習って事を運びました(たとえば 密室談合 など)。ご誓文なら、何をすべきか、それは あなたの天然の心に訊ねて見なさい、と言うことです。「胃瘻」の 適応を誤ると、世界の顰蹙(ひんしゅく)を買います。

知識を世界に求め、大いに皇基(こうき)を振起(しんき)すべし。皇基=天皇が国家を治める事業の基礎。振起=気力などを奮い立たせること。 ➙ 閉じた世界の中で満足せず、知識を世界に広く求めなさい;これは徳川時代では禁止されてきたことで、すばらしく新鮮です。(皇基に関しては 明治維新だから この表現になったのでしょう。)

♣ 以上が 五箇条のご誓文です。これが144年前の明治天皇のお考えです。現在の日本社会のほうが劣って見えませんか?今の政治はしばしば「密室」で、“依らしむべし、知らしむべからず”の陋習がはびこる !! 政治家・官僚・経済人・国民は心を一に しているでしょうか? 人心を倦(う)ましめてはいないでしょうか?古い悪習に盲従しては いないでしょうか?

♣ 日本国民の側も、反省すべき点があるようです。よくよく考えてみれば、福祉の 今の「あり方」に対しても、陋習によらない あなたご自身の意見が湧いて来るでしょう。たとえば 高齢者胃瘻」の流行 1) を あなたは どう位置づけしますか?――「あめつちの 天然の心」で考えて見てください。そのほかも、いっぱい 考えてください

  参考: パールの安全管理: 1) # 290 : 五箇条のご誓文と胃瘻。

職員の声

声1: ご誓文を学んで感じたこと:政治も福祉も「何とかなるさ !」と思う人が多いでしょう;しかし自分たちの未来は自分たちで創るという気概(きがい)を忘れてはいけません。

声2: ご誓文をよく読むと、現代日本の現状と逆なことが書いてあります;古い悪習は残り続け、前例主義が跋扈(ばっこ)しています;国を何とかしなければ という思いを国民に伝えるべきでしょう。

声3: 「万機公論に決すべし」 . . . ところが現実は ま反対 —— 福島原発・TPP問題など、政治家・官僚・産業界・メディアは「公論」を形成していません;「上下心を一にして」. . . 少しも その気配がない、福祉も迷惑を蒙っています;どうか公明正大で多角的な論議をしてもらいたいです。

声4: テレビで見ると、政治家が密室で密談をし、その結果も公表されず消えて行く;悪いことを企んでいるとしか思えません。

声5: 今の政治は「党利党略」ばかりの「政局」続き;ご誓文を読んで、むしろ明治維新の頃の人々の偉さがわかります。

声6: ご誓文が144年前に発布されたとは驚いてしまいます;私たちは退化の道」を歩んでいるのでしょうか?

声7: 今の政府は 徳川末期に比べ 正確な情報を国民に伝えていません —— 社会保障・防災・原発のいずれにおいても 政治家は「得票」しか頭になく、メディアは視聴率や販売部数を増やすための悲観論ばかりを流して 目先の対応ばかり;私たちはご誓文の第一歩に沿って、まず正しい情報で対応して行きたいです。

声8: 「天然の心」で判断し行動すること、これが一番 大事だと思いました —— 天然の介護 2) と同じ心です。

参考: パールの安全管理: 2) # 260 : 天然介護。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

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