(400) 正しい 横着 (おうちゃく) の お奨め (すすめ)

 (400) 正しい 横着 (おうちゃく)  お奨め  (すすめ)   

 横着とは「すべきことを故意に怠ける、できるだけ楽をしてすまそうとする、ずるい . . . 」などで、 「正しい横着」なんて 聞きません

♣ でもね、あなたは こんな話を知っていませんか?―― 「狐はずるい」(Cunning like a fox. )。本当にそうですか? 違うでしょう? 「狐はずるいのではなく、賢い」のです。人間が 自分の浅知恵を基にして狐をバカ扱い しただけです。

♣ あなたは朝、自分で起きずに目覚まし時計に起こして貰い、歩けばよいのに を使い、直接 人に会って言えばよいのに 携帯で用をすませます。狐の目からみれば「人間て、なんと横着で ずるいんだろう ! 」となりますね。

♣ もっと言いましょう。あなたは 年をとってヨボヨボ歩くようになったら「要支援 1」などを認定されるでしょうが、狐の目から言えば「何とズルイ ! 」となるでしょう? トイレに行けばいいのに「オムツを当てて貰う」、なんて 狐には了解不能の「横着です。

♣ そうです、つまり 横着」を「怠け」と区別 し、できるだけ「楽」 (らく) を発明すれば 人間の文化は発展 します。「横着」はいけないことですか? とんでもない ! 馬や駕籠 (かご) に代わって、今は「新幹線やジェット機」に乗ります。 「横着」により文明は進みます。ならば、「横着の正しい開発法」を勉強しませんか?

♣ 皆さん、福祉における「横着」を言い並べてみてください。なに何? ナースコールが有る? 暖冷房? 機械浴? 身の回りのお世話?―― それだけ? そうではありません ! 区役所では 毎日 介護度 認定会議 が開かれており、70人前後の方々の事情が検討されています。中には「非該当」がありますが、大抵は「要支援 1」から「要介護 5」に分類されて行きます ―― つまり この人数だけ「要介護」の人々が世間で 生きて行ける のです。

♣ 各論的な意見ですが、私は これらの人たちが もし 日本国を離れたら その 5 割 程度の人々は 寿命を縮めるだろう と推定します。換言すれば、日本だからこそ 「彼らが訴える 介護上の横着」が 認定会議で採用され( -- 狐には理解できないかも知れませんが)、日本の平均寿命の「世界一 に寄与」しているのだと思います ―― 諸外国では これら 5 割 の方々は助けて貰えません。でも それだけに、日本の介護保険の予算は莫大ですね ―― 20兆円?日本は「介護倒れ」しませんか? この良き制度を保持するためには、“費用 効果を改善”する必要がありますね。

♣ 前回、私たちは 「ジワコロ」 1) を 「並みコロ」 に転換すれば ずいぶん幸せになれることを検討しました。すぐには実現できませんが、視野に入れておきましょう。

♣ 今回、私は ロボット」の活用 2) を提案します。ロボットには ① 介護支援型、② 自立支援型、③ 安楽支援型があります。① は 移乗・入浴・排泄などでの「横着」を「楽」に変えてくれます。② は歩行・リハビリ・食事などの自立支援を、③ は癒(いや)してくれたり 見守りを助けます。

♣ え? 何? ロボットの採用で 私らの雇用が減るのではないか だって? そうですね、「馬車」が「汽車」に変わったとき、馬方 (うまかた) ストライキがありました。でも、視野を広げましょう;現実には 交通業の発展により、雇用は ウナギ登りになりましたよ。

♣ 今日は宿題を出します:① 福祉全般で、「正しい横着」を「楽」に変える発想を一つ述べること、② 上記のロボット3種類のうち 1種類を新しく開発して あなたの仕事の領域で 「正しい横着」を「楽」に変えてみて下さい。

  参考:パールの安全管理 1) # 393 : ピンコロか? ジワコロか? 2) #206 : 介護支援ロボット。

職員の声

声1: 狐はズルイのですか?(係り:天然動物は そのまま 自然です;ズルイと呼ぶ その真実は、人の心のオロカさ ! )。

声2: 文明の進歩と 「楽 (らく) や横着 (おうちゃく) 」 は違う起源でしょう?(係り:正しい横着と人の努力が合わさって 文明が創られます)。

声3: 「楽」したいと思う動機 (= 横着)が文明に繋がるって?これは面白い !(係り:逆も真なり;サルには 「横着」なし、「文明」もなければ「楽」もなし)。

声4: そう言えば、 エレベーター も 車椅子 も 「正しい横着」 が出発点 だと言えるよナ(係り:少し以前、私たちは歩けない親をオンブして階段を登る 「苦労」を 孝行と呼んでいました —— 今、横着のおかげで「苦労」が「楽」に入れ替わりましたが、「孝行」も消えました)。

声5: 「正しい横着」には賛成(例:長歩きの代わりの 電車はOK ~ しかし「無精な横着」は反対です(例:手抜きのズル)

声6: 言葉は違うけれど、 横着」と「賢明」は 紙一重の相違と見えます(係り: 「賢明」には 考える時間と教養が必要、 「横着」なら誰にでも自然に備わっています)。

声7: 介護の認定委員会を、実務の分かる「介護者・ケアマネ・ナース」で構成しては?(係り:それなら 利用者の味方になるでしょうが、たいてい増税が必要となるかも —— イギリスのサッチャー元首相「胃瘻と寝た切り」はナシ 「透析の定年は60歳」などの方針で財政破綻を防ぎました —— 日本は無制限です ! )。

声8: 人間の心には 欲深でズルイところ があります —— 負担なくして前より濃いサービスを求める;だから介護保険は「一度出し」にせず、チョロチョロと、出し惜しみ的なサービス制度が良い と思います(係り:なにせ、人って 同じ人物が「鬼になったり 仏になったり」ですものね —— 正しい横着に 人の努力が重ねられた文明(= 介護保険)なら、信頼性に富む制度となるでしょう)。

係り: 横着ロボットの提案として、次のようなものがありました:褥創防止ロボット;抱き上げ;食事介助;対話;デイ代理;往診介護;場所報知;安楽支援. . . など(解説は省略)。

(399) 向上 は 変化 から

 (399) 向上 は 変化 から  

 イギリスの名宰相・ウィンストン・チャーチルは ウイットのある人で、こんな逸話 (いつわ) を残しました:彼はイタリアへ旅行した時、英国船ではなくイタリア船を予約しました;驚いた英国人達が、「首相ともあろう方が なぜ我が国の船に乗らないのか」と詰問すると、チャーチルは答えました:「イタリアの船は食い物がうまい;その上 救命ボート利用で 『女・年寄りを先に乗せる』 という馬鹿げた(建前)ルールが無いんだ」。うまーく「溺死の憂き目から逃れること」を達成したものだと 私は感心しました。

♣ チャーチルは、別の意味深い 「本音」の名言も残しています( = 向 上 は 変 化 か ら )。その原文は= To improve is to change; to be perfect is to change often. = つまり、「向上」のためには「変化」を行え;また「完璧」に近づくためには 変化を「もっと頻繁に行え」、 と言います。「 (かず) 撃ちゃ 鉄砲も当たるわい、うまいことを言うなー 」ですね。

日本の介護保険は14年も続く立派な制度です。法改変は定期的に行われますが、一番大事な事とは この保険を「完璧に近づける努力」でしょう。つまりチャーチルが言うように、この介護保険が 「国民を どのように幸せにしたか、これからも このままで行くのか」を 問うことです。

♣ 介護保険は 介護の激務を 家庭から社会へ移すことによって 当の老人と家族の幸せに 大きい貢献をしました。しかし、中には辛口批判もあり、 老人の寿命を何年か 伸ばすのに 国家予算を何兆円も消耗し、問題解決(逝去)を先延ばしにしただけだ(xx新聞)の声も聞かれます。また 次世代を担う若者の肩へ重すぎる経済負担を投げかけた、 モラル・ハザード(社会全体の利益を考えずに、節度を失った自己利益追求の姿勢)1, 2) の問題という意見もあります。そこで私は 上記の辛口の批評 ① ② ③ を個別に検討してみます。

○A 老人の平均寿命 ➙ 暦年ごとの平均年齢の伸び は 先進10ヶ国で 男女とも10年毎に約2.3 年です3) ―-この伸び率は 各国ほぼ均等で、日本は介護保険の発足以降、特別に伸び率が大きくなった、なんて ありまません3) …むしろ 最近 5~6年の日本は 男女とも延命が足踏み状態です ! さらに、日本女性の平均寿命は、昨年 香港に抜かれ、世界一位から二位に転落です。

○B 次世代若者へ経済負担これは否めません。特に「世代会計」の面から見れば4) 高齢引退組は 未隠退組よりも一人一生平均で1億2千万円の余分恩恵を受け、また生涯受益率で見ると 日本+520%、ドイツ+92%、カナダ ± 0% などの分析もあり、日本は老人が 著しく過剰に優遇されています。

○Cモラル・ハザード ➙日本は 1973年に老人医療を無料化しましたが、モラル・ハザードの影響下で 9年後に廃止です。

♣ 前回 私が紹介した三つの言葉 5) を思いだします::マッカーサーの言葉:「日本人の精神年齢は 12歳 だ」;麻生太郎の言葉:「希望するのなら さっさと死ねるようにする」;橋本徹の言葉:「責任を取る覚悟の人と そうでなく情緒的な人では、意見の重みが おのずと異なる」。

♣ 「お年寄りは日本の宝です」、のような 建前の介護」ではなく、「今 社会が求めている介護とは何なのか」を洞察する「本音の介護」を考えましょう。そのために、チャーチルの名言:「向上は変化から」 を手掛かりとして あなたの 介護の将来について ご意見を聞かせて下さい。

  参考:パールの安全管理  1, 2) :# 197: モラル・ハザード。 # 390 : 無料化とモラル・ハザード。3) : 主要先進国における平均寿命の推移:厚生労働省の「完全生命表」2011年。4) :# 302 : 世代会計。 5) : # 398 : 親切な「本音と建前」。

職員の声

声1: チャーチルの救命ボートの発言、小気味よく「建前論」をくぐり抜けている ! そもそも「品質とコストの関係」を知っている人なら、介護とコストの関係は先験的 に知っているでしょう(係り:王様の介護 6) なら宮廷職員はコスト無視で働くでしょう;しかし時代が変わって 皆が王様の現代、コスト無視の介護を望んでも 原理からしてムリ ! )。

声2: 私は 弱者を増税で支えるのは当然だと思います、反面、弱者の老人が歴史的に増加した今、建前で対応すれば、社会は破綻してしまうのですか?(係り:老人は社会の宝、という建前を再検討すべき?)。

声3: 現在の「多老少子時代」にマッチした介護に変更せざるを得ないのですか?(係り:子孫数の確保に貢献しないまま、「ワシャ病気だけど 長生きしたいよ」って、そりゃ勝手すぎます ―― 昔の少老多子時代なら「馬齢」7) も可能でしたけど、皆が高齢者になる今、 「馬齢」はムリでしょ ! )。

声4: 社会が求める介護って何でしょうか?(係り:個人が求める介護なら「痒い所に手が届く介護」、しかし社会が求める介護なら 「並みコロの介護」 8) でしょうか?――もし完璧な介護が存在するなら、お年寄りは逝くこともできず、必要経費は無限大、国はデフォルトに陥ります)。

声5: 手始めに「要支援の給付」を中止すべきかな?(係り:ドイツでは、要支援なんてなく、介護 3-4-5 のみと聞きます;もし人に介護の必要性を訊けば、横着者が常に勝つ でしょうね。

声6: 麻生副総理が「希望者は さっさと死ねるように . . . 」と過激な発言をしましたが、その後 世論は それに反発していません;つまり「建前の介護」とはあくまで「建前」にすぎないのですか? 私は「楢山節 9) を思い出してしまいます( ―― 貧乏であっても 村の存続を望むなら 人は70歳で死ぬべし、という物語)(係り:世の繁栄を根絶するのは いとも簡単だが、困窮 (こんきゅう) を無くすることは 永遠に不可能なのだ、と 格言は言います:人間に限らず、生命の真理と本音は そんなものらしいですよ)。

声7: チャーチルが言うように、いろいろ考え、たくさん変えてみて、そこで初めて満足域の第一歩に到達するのでしょうね、分かるような気がするなー。

参考:パールの安全管理 6) # 3 : ソロモン大王の介護。 7) # 353 : 在宅亭主は馬齢(ばれい)か? 8) #396 : ホッチャレと並みコロ。 9) # 335 : 楢山節考。

(398) 親切な 「本音 と 建前」

 (398) 親切な「本音と建前」

 本音 (ほんね) とは「自分の本心から出る言葉」、建前 (たてまえ) とは「表向きの儀礼的な言葉」です;本音と建前は、日本人が伝統的に区別する基本姿勢であり、これをうまく使い分けないと 世渡りがヘタ ! と評されます。しかし、欧米人は 我々の「本音と建前」が理解できない、とも言われます。

♣ アメリカ軍司令官のダグラス・マッカーサーは混乱した戦後の日本社会を鎮めた立派な方ですが、任を解かれて自国に帰還する時のコメントで“日本人の精神年齢は12歳だ ! ”とおっしゃったため、日本人は「白けて」しまいました。彼は本音と建前を うまく使い分けられなかった のでしょうね。でも、あるイギリス人は このような発言をしたマッカーサーを “ Rude ! ”(ルード、粗野だ ! )と評しました。このイギリス人は 日本人の「本音と建前」を理解していました。

♣ さて、介護保険の実施が やがて14年目入ります。皆さん方は この保険の「メリット・デメリット」について十分なご意見をお持ちですね?そんな時に 次のようなハップニングがありました —— 先週21日 (13.1.21) に催された 政府の社会保障国民会議の席上で、終末期医療に関しての 画期的な発言です『(患者が)いい加減に死にたいと思っても “まだ生きられますから(治療を続ける)”なんて 生かされたのじゃ、かなわない。しかも政府の金で(高額医療を)やってもらっていると思うと、ますます寝醒めが悪い。さっさと死ねるように してもらわないと . . . 』

♣ 発言者が 麻生太郎・副総理だったから、日本中の耳目 (じもく) が集まり その波紋は広がりました。なぜって、この裏には 日本の終末期医療・介護が抱える大きな問題がいっぱいあるからです。延命に延命を重ねる一種の「建前対応」が続けられるゆえに 福祉経費はウナギ登り;その上 この建前を正そうとする意見は タブー視 されて 誰も言いだせません。ネが真面目で正直な麻生さんだからこそ、「こりゃイカン ! 」と思う本音が そのまま口から滑り出たのでしょう。低料金政策には「モラル・ハザード1) が付き物です-- つましく質素な生き方こそ老後の鑑 (かがみ) ではないでしょうか?

♣ 今回の桜宮高校の体罰・体育教師の振る舞い を 在校生徒たちが「体罰は有益だ」とかばっている有様がTVで放映されていました。管轄の橋下徹 市長はコメントしています:生徒たちの意見は参考になるが、彼らは庇護される立場の「未成年」であり、「その発言に責任 は問われていない」→ 責任を持って発言する人と 責任が曖昧なまま発言する人の重みは「同じでない ! 」。マッカーサー発言の意味するところは その辺だったのかも知れません。

♣ そこで、ここが思案のしどころ . . . 「建前論」だけで 介護保険14年目を迎えて 心やましくは ありませんか? あなたも 今の介護保険に向かって 何か建設的な発言はありませんか?上記のマッカーサーのように「お前ら日本人の精神年齢は12歳だよ ! 」と諫めてくれる人、または 麻生さんのように「延命を希望しない人は さっさと死ねるようにする ! 」と公言する 関係責任者の存在が むしろ必要ではないかと 私は思います。

♣ 私たちの 基本は「お年寄りを大切に ! 」ですが、昔の天寿は50歳多子少老の環境で培われた倫理;現代は 人口が逆さピラミッドの時代・天寿は90歳多老少子・就職難・デフレ・一千兆円の借金、この厳しい環境の中で 新しい対応が求められています。サラリーマンの平均年収が420万円なのに、要介護5の予算が年間 500万円余では めまい がします;その上に 透析・胃瘻が無制限に乗る勢い です !

♣ 皆さん、やはり言論には タブーを作らず、本音も建前も 赤裸々 (せきらら) に語りましょう。そのような 新しい言論のモットーとして、私は「親切な本音と建前」を提唱したいと思います。 「精神年齢12歳」と言われる「建前の横行」は、ほどほどに しませんか?

   参考:パールの安全管理 1) # 390 : 無料化とモラル・ハザード。

職員の声

声1: マッカーサーは「日本人の精神年齢は12歳だ」と言ったそうですが、私たちが世界を相手に発言する時は、本音と建前の区別をキチンと認識すべきだ と思いました(係り:ものごとの本質を洞察するためには それしかないですね)。

声2: 先日 NHKの「漂流老人」という番組を見ると、“たらい回し”にされて 疲れ果てた老人が言っていました;あらゆる手段を用いて私を延命してほしい ! と:こと「命」に関しては「本音も建前も」同じなのに驚きました(係り:貧困・飢餓・疾病に立ち向かうため には、本音と建前の違いはありません;だからこそ 「精神年齢12歳」 の人の判断だけでは解決できない 別な真実の存在 を悟ります)。

声3: 麻生氏の発言は 介護の現場を知った人なら“一つの 立派な見識”だと思いますけど(係り:マスコミが 事の本質を“うまく伝えてくださる”と いいですね)。

声4: 同じ「長生き」であっても、「畑仕事で100歳」と「寝たきりで100歳」は 全然違います;ふだん「建前」ばかり言い慣れていると、いざ「本音は?」と尋ねられた時 うろたえます。

声5: 技術の発展で チューブに繋がれたまま 超高齢になると、お世話する若者世代の活力が削ぎ落とされてしまいます(係り:人の生命は、技術で踊らされると、出口のない“不毛な建前” にもて遊ばれてしまいます)。

声6: 時代の流れは「保険による延命2) を良しとせず、 「天然の経過」 3) に逆らわない路 に向かっていると感じます。

声7: マッカーサーの言うことには 深い真実が含まれています;日本の社会は相変わらず「建前」しか言えない社会ですが、そこに「影響力の大きい関係責任者」が 一石を投じられたことは、とても意義深いことです(係り:本音を言うと、すぐマスコミの餌食になる —— それではマッカーサーも浮かばれないでしょう:私たちは 親切な心で「本音と建前」をしっかり見極め、「大人の精神年齢で」 物事を判断できるようになりたいですね)。

   パールの安全管理 2)  # 393 : ピンコロとジワコロ。 3)   # 396 : ホッチャレと並みコロ。

(397) 骨折 の 判決 に学ぶ

 (397) 骨折の判決に学ぶ 

 今日は 「骨折の症例」で、介護側の「過失の有無」が どのように裁定される のか、ある裁判の判決結果に学びます。私たちの明日のケアに とても関係が深いと思います。 

症例:- 症例は I.H.様(95F 老人性認知症 廃用症候群 要介護4)。氏はパールのご利用者ではなく、骨折事例を紹介する事例案から取り上げた症例です;「静かなタイプ」の認知症で、意思の疎通は辛うじて可能、身の回りのことは ほぼ全介助、歩行は手引きでした。

事件発生:- はX年11月のことです。I.H.様は施設内の静養室の畳部屋で昼寝から目覚めた後、いざって移動し、畳床レベルと木の床レベルのあいだ40cmの段差を転げ落ち、右大腿骨骨頭骨折の障害を受け、病院で手術を受けました。術後 安静を強いられたためか 認知症の症状は進行し、歩行は廃絶しました。

骨折当時の状況:- 畳と床との間には 40cmの段差がありましたが、その場所は同時に通路でもあったし、転倒防止の柵は置けず、また下側の床にクッション等の配置も行っていませんでした。また 残念ながら、係りの職員は 隣部屋で作業をしており、時々 I.H.様の様子を伺う程度でした。

施設側の主張:- I.H.様は「自ら布団を離れて動き出す能力」はなかった ので、係りの職員には この事故発生について、予見可能性や結果回避可能性の検討が不必要と考え、従がって一切の責任はない、との主張 です。ご家族は これを不服として告訴されました。ここで「予見可能性」とは、I.H.様が動き出して、段差のある床下へ転落し得るとの認識;「結果回避可能性」とは、転落・骨折を避けるための 具体的な手段・方策です。

事故調査の結果:- 判決のために提出された普段の記録を見ると「立ち上がり」や「起き出し」で歩いていた様子が記録されていました !

判決結果:- 施設の介護サービス契約上の安全について 介護義務の不履行があったとして、約500万円の損害賠償が言い渡された。

過失の有無を判断する基準:-  過失なし と判断するためには、① 事故の予測ができなかった; ② 結果の対策ができなかった、の二点が必要です。ところが実際には、布団から離れて移動する可能性は過去の記録上 あったので「柵」を設ける等の対策は必要だったし、万一に備えて 床の上にクッションを置くなどの対策もあってしかるべきでした。ところが、 ① も ② も行われた形跡はなくよって「過失」があった ことに 反論はできませんでした。

私たちへの教訓:- 老人、とくに90歳代の女性の骨折防止は 場合によって困難であり、介護者が一律に責めを受けるとは限りません。もちろん、普段からの「良い信頼関係」も大事な要素ですが、いったん法律で争う事態に至ったのなら、 「過失なし」という 上記の ① ② の立証が必須です。

♣ 逆に言うと、骨折の予測と対策の二点確保」さえキチンと立証できれば、たとえ骨折という悲劇が発生しても、判決で不利になることはないでしょう。「その二点を守ること」 は 分かり易い教訓だと思いました。

職員の声

声1: 施設側はI.H.様が「布団を離れて動き出す可能性はない」としていましたが、過去の記録によれば 動き出していたのだから、「過失あり」の判決は争えません;私たちの仕事は 単に「見張る」だけではなく、 見守る」ことの順守 だと思います。

声2: この事例の「見守り」には 過失 があったか? やはり500万円はやむを得ないか?;でも施設側は痛手だなあー、気をつけないと !

声3: 施設側の落ち度は 残念ながら 隠せないよ;「転ばぬ先の杖」を実行するのは常識だし !

声4: 高齢者は 段差が有ろうと無かろうと 関係なく転倒・骨折を起こすものです;不時に備えてしっかり「書面」でご家族の理解を得ておくべきです 1, 2) 係り:あって欲しくない事故は なぜか起こる —— すでに「マーフィーの法則3) として世に知られています)。

声5: しかし 事故のレッスン料として、 500万円は高いなー;これが相場なのですか?(係り:年齢や傷害の程度・リハビリ期間にもよりますが、200万円程度が多いそうです;でも裁判が長期化して1,000万円を越えする例も報告されています)。

声6: ベットに体を縛り付けてはいけないでしょうが、過失防止のために必要な心得は?(係り:縛りつけても 将来の危険は解消されません;また高齢者を身体拘束するのは反則です ! 一番大事な事は 90歳代のご婦人なら「骨折危険の予測と対策」であり、この二つさえ確実に実行してあれば、裁判官も罪一等を減じて下さる でしょう)。

声7: “過失あり”とは「予測・対策がおざなりだった」ということですか?(係り:その通り。杞憂 (きゆう) という言葉をご存知ですか?“取り越し苦労”という意味です;老人のケアでは「杞憂」なんて絶対ありません ! どんな事でも起こり得る ! と心得ましょう)。

パールの安全管理   1, 2) # 102, 103 : 説明と同意の書。 3)  # 156 : 想定内と想定外。

(396) ホッチャレ と 並みコロ

 (396) ホッチャレ と 並みコロ  

 さて現代、“僕たちは可哀そうで 淋しい年代の人なのだ”と嘆く老人が増えた そうです。高齢って そうなのかな? 私は不思議に思いました。そこで、私は 少し昔のことを振り返ってみました。

500年前のシェイクスピアに言わせると、47歳の「リア王」は「高齢老人」でした。400年前なら、織田信長は「人間五十年の舞」を踊った後、天下を取り、その後 49歳で死にました。100年前日本軍人なら、人生50年 軍人半額の25歳で華 (はな) と散りました ! ―― つまり歴史はこう告げます:人間の寿命は50歳程度だ !!

♣ お話を動物の命に切り替えてみます。お正月には「」が欠かせませんね。その鮭は川の上流で生まれ、川を下って海で3~4年を過ごし、まるまる太って「自分が生まれた川」の上流にさかのぼり、そこで卵を産み、その直後に生涯を閉じます(その遺体ホッチャレと呼びます)。つまり 繁殖がすんだら 親鮭の役目は終わりなのです。人以外の動物は 「すべて 繁殖が終わったら そこで親の命は終わり」です ―― 人に近いチンンパンジーでさえ そうです 1)

♣ では、繁殖の後 二倍も長生きするヒトは 特殊なのでしょうか? << 遺伝子 >> の点では 特殊ではなく、「更年期」を境にして 鮭と同じように、体はホッチャレになり、ジワコロ 2) で世を去り ます。ところが、<< 知能 >> の点で ヒトは特別であり、遺伝子寿命の二倍、100歳を越えて生きます !

♣ 有史以来「ヒト」の更年期年齢は50歳ですが、介護保険の現代では、古希や傘寿まで生きてさえ、自分を「老人」だと思うヒトは少なくなりました。つまり、近年のヒトとは 更年期以後 体は「ホッチャレ」なのに、頭だけはまだ「若い」 のでしょう。遺伝子と知能がこのように 泣き分かれ ている所が ヒトの更年期以後の特徴です。

老人は遺伝子保証の二倍を生きる のだから、必然的に 体は病気がちとなり ジワリジワリと逝きますジワコロ)。他方、その生き様を見て若者たち は、イヤ気がさして 自分はピンピンコロリで逝きたい(ピンコロ)と願いますが、その願いは むなしく、やっぱり長生きしたあげく ジワコロ で逝きます。

♣ 今どきの老人は 皆 ホッチャレ100歳の同類項であり、「独り暮らしや孤独死」の淋しさと同居、自分の事を 「哀れで 可哀そうな存在」 などと 甘えた表現をします

♣ それは、見当違いでしょう?言葉は同じ「老人」であっても、今どきの老人は 昔の二倍も長い 「ホッチャレの終点」まで生きられる のですよ。その決定的な 今昔の相違は「100歳と50歳」の差にあります ! こんな二倍もの差があれば、見る夢が違って当然かも知れませんね。

♣ そうは言っても人生の終わりを嘆くことは辛いことでしょう。何か解決法はありませんか?私は それが「並みコロのお奨め」だと思います。つまり、まだ身体寿命の余裕があるうちに 人並みに逝く、それが「並みコロ」です。もし「魔法」を使って長生きしたとしても、所詮、認知症が そこで待っています。あまり横着な考え を持たないことです。

♣ 自分のことを「淋しい・可哀そう」なんて言わず、  「ホッチャレ と 並みコロ」 の人生を受け入れること、それでこそ 素直で 望ましい人生だ と思いませんか?

  参考: 1) 武田邦彦:天寿を全とうするとは どういうことか? Net Blog : 2012.11.25. 2) パールの安全管理 # 393 : ピンコロか? ジワコロか? 

職員の声

声1: 産卵後の鮭をホッチャレというのですか、初めて聞きました(係り:ヒト以外の動物は 繁殖期を終えると 生命も終わります;ヒトだけがホッチャレのまま 特別に 二倍生きます、有難いことです)。

声2: 近年、人生期間は2倍になりましたが、その人生濃度は半分に減った気がする、40歳で20歳の感覚の人もいるよ(係り:戦後しばらくは 人生50歳でした、そのころ還暦60歳は立派な高齢者;でも今では 60歳を老人とは言いません)。

声3: 私は 夜 布団に入って 朝 死んでいる ピンコロが好き、周囲に迷惑が掛からないし . . .(係り:とんでもない ! 司法解剖の手続きや手間は大変だし、遺産相続で親族が血みどろの争いをするよ ! 「並みコロ」が一番 ! )。

声4: 我が父母は 周りに迷惑のかからないピンコロで逝きたい と言いますが、病院通いは熱心だし、本当は「ジワコロ希望」なのですかね?(係り:もしジワコロ希望なら、馬齢が長くて その重さがこたえるナ)。

声5: 私は繁殖期を過ぎた年齢ですが、子供の事を思うと死ねません係り:育児期間は繁殖期の中に入るし、あなたは介護活動を通してて社会貢献をなさっているから、何も問題ナシ ! )。

声6: 犬の寿命は 昔6~7年、今は20年くらいある;人だって65歳はまだ若い、ボランティアでしっかり働ける(係り:犬猫など、人に飼われる動物は繁殖期後のホッチャレになっても人のように2倍生きる —— 野生環境の厳しさ が無くなるからでしょう)。

声7: 私が子供の頃、お爺さんと言えば60歳くらいをイメージしました;今 子供たちは70歳くらいの人を考えるらしい;感覚的に人は10年ほど長生きになったのですかね?(係り:とんでもない ! 今どき 70歳の人を お爺さんと呼んだら殴られるよ ! 90歳ならしょうがないけど)。

声8: 麻生太郎・副総裁(72歳)は政府の社会保障会議で「死にたい お年寄りはさっさと死ねるようにする ! 」と本心を言ってしまいました(13.1.21) ;あと国民の反発が大変でしょう?(係り:真面目な発言なら傾聴に値する けれど、あの言い方はきついね . . . )。

係り: 人生の流れ は次の三つです:―― ① 遺伝子が体を守ってくれる更年期(50歳)までは、人があまり死ななくなった;② その後、85歳まで 荒れた「生活習慣病」の結末が出尽くし 2,3) その荒れ具合に応じて年貢を納める(多くは 並みコロ);③ そこを越すと 死ぬ理由が無くなり、最期は 誤嚥性肺炎刈り尽くされる(多くはジワコロ)。今後とも、介護の主力は 麻生さんの おっしゃる に向けられるでしょう)。
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

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