(37) ゾロのひみつ

 この2年ほど、テレビで高名な俳優・女優が「薬はジェネリック! お安くなります! 」と叫び続けています。ご存知ですね? その意味が分かりますか? 私はジェネリックにほとんど無関心でした。その私が先日、たまたま薬局でジェネリックと呼ばれるシロモノに遭遇したので、ジェネリックの話が身近になりました。

♣ 新薬は製薬会社が作るか、輸入します。昔は、薬というものが化学物質の中から偶然発見されて臨床応用すると言う時代でしたが、今では、研究により、役立つ分子構造を予想して、まずコンピュータで作成し、それを工場で生産し、特許を取ります。次いで 先回の「安全管理 (36)」で申し上げた「二重盲検」で効果を確かめ(ここで数年かかります)、よければ販売を始めます。特許期間は 多くの場合15年間です。最初の化学薬品から二重盲検まで およそ10年・500億円程度投資しています。したがって特許占売期間は わずか5年。この期間に投資した500億円を回収せねばなりません。だからパイオニア役の新薬は当然高い !

♣ さて期限の15年が過ぎると、特許が切れるわけですから、その先発会社以外の後発会社でも製造が許可されます。こうして出来た薬を「ジェネリック薬品」と呼びます(品物が特許登録されていない、と言う意味)。後発会社は薬の開発費や特許経費などを負担しませんから、出来た薬は当然安い ! ところが、その「儲け」につられて後発会社は一つのみならず、たくさん現れ、その状態が「ゾロゾロ現れるので 愛称名 ゾロ」と呼ばれます。高血圧や抗不安薬などでは 一つの先発薬につき15種類を越える後発ゾロが現れ*、それぞれに別々の名前が付くため、市場は大混乱します。

♣ ゾロの最大の利点は 薬価が安くなること。たとえば、先発薬が一錠100円とすれば、ゾロは30円など。その分だけ患者さんは負担が減ります。健康保険の金庫もラクになります。欠点は ① 薬の名前や本体を見ただけでは“何の薬?”だか分からず、与薬する看護師を泣かせます、② ゾロは種類が多いために、薬局の在庫は限られ、仕入れ品の名前や姿も異なり、患者さんや与薬する人が不安になる*、③ 副作用の追跡がほとんど出来ない、④ ゾロメーカーは家内工業的なものもあり、会社の都合で突然 販売停止もある、などです。

♣ でも「同じものが安く求められる」のなら、ゾロがいいに決まっています。そんなに明快な原理なのなら、黙っていても、基本薬よりゾロ薬の方が売れるはずです。それなのに、なぜ テレビで出演料の高い有名俳優・女優が出てきてゾロ使用を呼びかけ続けるのでしょうか?異例なことです。薬には、主作用と副作用の両方が無視できない「精神薬・神経薬・抗癌薬」などは、ゾロを使うことに十分注意が必要です。また、薬が安くなるからと言って、薬を増やす必要はまったくありません。一番いいいのは「薬を使わないこと」だと思います。

♣ ちょっと昔の知識を思い出しましょう。「味の素」と言えば 優良な食品会社です。戦前から「アジノモト」を独占販売し、その名を高めてきました。味の素は「グルタミン・ソーダ」;ごくありふれたアミノ酸塩です。コンブの表面に白い粉がくっついていますね。それを分析して「アジノモト」の特許をとりました。高価な調味剤でした。30年ほど前、特許が切れ、いまでは後発会社が自由に作って売ることが出来ますが、しかし、ブランド名の「味の素」は、今でも他の類似品を寄せ付けません(ゾロが少ない)。「創業者」の信用力とブランド名は圧倒的に強いですね。
* 安定剤として40年このかた知名度の高い“セルシンのゾロ名称“は:ホリゾン、ソナコン、アゼジバミン、シアバックス、セルカム、セレナミン、セレンジン、パールキット、リリーゼン、リリバーなどです。一つ一つの薬は色・形が異なります。私は“ゾロ”そのものに反対しませんが、何千という薬物にそれぞれ十幾つかの別名ゾロがあるのでは 茫然とします。現場が混乱しています。ゾロ会社は簡潔にまとまって下さい。

職員の声

声1: 最近テレビでジェネリックと聞くのですが、何のことだか分からず、今日初めて意味が分かりました。

声2: ゾロって知らなかった、セルシンの名前は知っていたが、代薬の10種類のうちから どれかを選べって言われても、分からない。

声3: ゾロで儲かるところは、次の内のどれか?①医師、②薬局、③患者、④後発製薬会社、⑤政府(答え:④⑤でしょう。③は少々リスクを負います、②は仕入れ先の工夫が必要、①は処方箋代不変です)。

声4: ゾロが混じると、デイサービスと特養では、多数のご利用者への与薬が複雑で、係りが泣きます(係り:包装からいったん取り出したら、薬の正体は国連の代表者の顔を識別するほど困難だと言います)。

声5: ゾロをもらう患者さんは、先発薬より どれだけ節約できたのか、会計が明瞭でありません!

声6: 私の知っている薬剤師さんはゾロを勧めません(係り:たとえば「米酢」;その主成分は「錯酸」で みな同じですが、実際には醸造元により、出来た米酢が違いますよね)。

声7: 多くの薬の主成分は“ミリグラム”単位で吹けば飛ぶように微量です、それを錠剤に仕上げるモノは賦形剤—(ブドウ糖とか澱粉とか)、ここでも差が出ますね(係り:Yes, yes!)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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