(130) 介護と科学

 (130) 介護 と 科学  
 
  私は中学一年生の頃、こんなことを耳にしました:科学は人を不幸にする;その良い例は新鋭の飛行機や軍艦を用いる近代戦であり、その極みは「原爆」である、と。なるほど、なるほど。このためか、その頃、人々は科学と言う言葉を嫌いました。でもしかし、家庭には電灯があるし、ラジオも鳴っていました。これに対し、私の父母は幼い頃、毎朝、石油ランプの「ほや」をみがかなければ、朝食をもらえませんでした。つまり、「原爆」も「電灯やラジオ」も、科学の成果ですよね? 原爆は科学の悪用、電灯は科学の善用と言えるでしょう。「科学」が悪いのではなく、それを用いる人の心に善悪があるのだと言うべきでしょう。

♣ そこで「科学」の意味を考えます。「科学」は明治時代に Science (英) の翻訳として出た言葉、「知ること」と言うラテン語(scio, スキオー)です。アラビア・ヨーロッパでは、卑金属の鉛から貴金属の金を作るため「錬金術」と呼ばれた研究が二千年にもわたって行われ、「知ること」= 「知恵」が尊敬されました。しかし「知恵」は「ダモクレスの両刃の剣」とも呼ばれ、善用にも悪用にも使われた、問題の多いシロモノでした

♣ 明治維新の前後、科学という言葉が欧米で起こり、それは、単なる「博覧強記で知ること」と異なり、「理性ある因果関係の分析により客観的結論が導かれる知恵」という系統立った学問になりました。

♣ 今の日本では、「科学」は三種類に分類されています。それらは ① 社会科学、② 人文科学、③ 自然科学です。東京大学方式で具体的に述べると、社会科学は:「文1」= 法科、「文2」= 経済科;人文科学は「文3」= 文学・哲学・心理学などです。また、自然科学は「理1」= 工学科、「理2」= 農科・理学、「理3」= 医科系。つまり、大学はどの学部も「科学」なのですよ!! 科学と聞けば、何となく自然科学を意味するように思えますが、それは誤解だったのです。

高校生10人が集まると8人ほどは数学が嫌いです。数学は理性による正・否が明瞭で、情緒が入る余裕がないからでしょうか。数学を嫌う人の多くは社会科学・人文科学の分野へ進学します。でも嫌うのは数学なのであって、数字は誰も大好きです。数学はほとんど悪用されませんが、数字は善用も悪用もされます。あなたの身長・体重・給料・税金はみな数字です、事実をすなおに受け止めるのに役立ちます。しかし、世の中には「ねずみ講・マルチ商法・頼母子講」など、数字の悪知恵が絶えません。先週には「年金たまご」商法が世間を騒がせました。これは、卵一個を\13,500で買えば、卵が卵を産み、一年後には50万円の利息をもらえる、という商法です。これに 多くのお年寄りたちがはまりこみ、数十億円の被害がでました。科学の考え方になじんでいれば、「無から有が生まれることはない」「そんなに都合よい話があるハズはない」と気付くでしょう。

♣ さて、お待たせ、「福祉」は科学の中で、どのように位置づけられるのでしょうか? 私の考えでは「福祉科学は人類の幸せに繋がる思考体系である」と信じています。

♣ 私が大学の福祉科を卒業し、実務に携わった55年まえ、そのころの福祉は、もっぱら「救貧」が目的でした。したがって、学んだこと、行ったことも共に、上記の「文3」に分類されます。つまり福祉は「人文科学」だったのです。ところが今、「救貧」は「介護保険」などの別な活動となり、福祉の主力は「高齢者福祉」に変わってしまいました。その結果、福祉は文系と理系の総合科学に変わってしまったのです。ワーオ !!! だから私たちは忙しい科学者なのですね !!!

職員の声

声1: 私は学生時代 科学が嫌いでしたが、今になって「科学の必要性」を感じ、「科学に囲まれている」現実を認識しています(係り:ご利用者の心と体の修復は愛と教養の知識なくしては行えません、科学は人を幸せにします)。

声2: 科学の発達も、それを応用する国々の姿勢により、必ずしも幸せにつながるとは限りません(係り:遠いところでは北朝鮮というホットな存在があります;近くで言えば「胃瘻」もそうですね、お釈迦様は原爆や胃瘻を選ばれるでしょうか?).

声3: もし人間に しっかりした理性があるのなら、あの二度にわたる世界大戦が起こったはずはない、宗教と科学の問題は重要です(係り:戦争は 理性の問題ではなく、力のエゴでしょう、弱者はテロで応酬します)。

声4: 世の中を「善」にするのも「悪」にするのも、人間次第、今こそ人間の英知を発揮すべき時代だと思います(係り:2011.3.11の東日本大震災では天然災害と原子力発電故障とが新しい問題を提起しました;善と悪は隣り合っているのですね)。

声5: 看護も介護も科学的に思考したうえで行動する必要があります;介護でみられる諸現象を理解するには「なぜ?」を問う気持ちが必要であり、その説明は 神秘からではなく、科学から行うべきです係り:すごい !)。

声6:結論的に言うと、科学の成果を応用する人の心の中には「善」も「悪」もある;だから“福祉は文科と理科を総合して成り立つ科学だ”と言えます、科学は必ず人を幸せにします(係り:Yes, yes !)。

 参考 :パールの安全管理 # 130 : 救命と延命。
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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