(354) 今年の 胃瘻情報

 (354) 今年の 胃瘻情報  

胃瘻に関する情報を知っておくことは重要です。データ入手先はいろいろですが、5点に分けて概要をたどってみます:-

♣ ① 現状: 全国の胃瘻患者数の推計値は 約56万人(2010年)—— 日経 12.8.18)。患者の平均年齢は 81.4歳(国際医療福祉大学 931例の集計、原因疾患は 54.8%が脳卒中・17.5%が認知症。導入を決断した理由:家族の希望、入所先の受け入れ条件が多かった——日経 12.2.9)。胃瘻の認知症老人1,000人の観察で半数が847日以上生存した——朝日 12.6.24)。

♣ ② 費用:  胃瘻一人一年は900万円とされる1) 。56万人なら 1年当たりの経費は 56万人×900万円 ≒ 5兆円 !! これは、日本の国防予算のレベルですゾ ! しかも、この半数以上が847日生存すれば 掛かる費用の総額は 5兆円×847 / 365 = 11.6兆円 !! 国の歳入が40兆円で、その1/4を胃瘻に支出するのですか?

♣ ③ 日本の風景:   名古屋市近郊の住宅地にあるロッジ風の建物。外観はペンションだが、住人は寝たきりの高齢者ばかりという賃貸アパートだ。入居できるのは「要介護4、5で、経管栄養・胃瘻の方」のみ。厚労省の発表によると、胃瘻の高齢者ばかりを集めた有料老人ホームは 全国に10ヶ所。有料老人ホーム以外の施設も多く「氷山の一角」とされる。 介護疲れから こうした施設を頼る家族は少なくない---日経 12.8.18。

♣ ④ 外国事情:   デンマーク・スエーデン・イギリス・フランス・オランダ・アメリカ・オーストラリアの医師団に聞くと、胃瘻・点滴の患者・寝たきり老人は1人もいない。それは「認知症老人の虐待」だからである。

♣ ⑤ 日本の医療者: 今年の日本老年医学会からの警告 = 延命を追求しすぎると患者の利益にならないこともあるゾ ! 現在、日本で健康寿命を越えた生存年数 = 女:12.8年男:9.2年 --- 世界一長い ! --- 日経 12.8.18)。延命せぬ医師の免責:延命を医師が断ると、従来は「手錠」を掛けられた:今年、患者が延命を希望しない旨の書面で意思表示をしていれば 延命措置をしなくても 民事・刑事・行政で「手錠」を掛けなくてよいと決まった;ただし 延命措置をしている最中の中断は不可---日経 12.3.23)。

☛ 皆さん方、胃瘻の現状のアウトラインが伝わりましたか? 「 (きん) をドブに捨てる」という格言はありますが、でも、ドブに捨てた その金 (きん) は 探せば 取り戻せます --- しかし 胃瘻にかけた巨費は取り戻し不能です。「日本人は徳の高い人種」だから モノともせず「胃瘻」に挑んでいる、との解釈もありますが、なに、無料(福祉)だからするだけのこと---別に「徳が高い」からではありません;有料なら 王様・女王様でなければ できません。何兆円もの国費をかけ、その上 諸外国から「老人虐待」と蔑 (さげす) まれて ... まったく クレージーですね。さらに「胃瘻」は 古い封建主義から新しい民主主義に蘇った「明治維新の ご誓文の趣旨2, 3 )に著しく違反しています。

♣ 新しい時代に当たって、「新しいぶどう酒は 新しい革袋に」入れたいですね。

  参考: 1) 佐々木英忠:高齢者肺炎における誤嚥性肺炎の重要性、日内会誌 138:1777~1780, 2009. 2) パールの安全管理 # 290 : 五箇条のご誓文と胃瘻。 3)  # 296 : 福祉はご誓文に沿うか? 

職員の声

声 1: 延命胃瘻に関する倫理問題が討議されていますが、金銭の問題として、一年に他人の懐へ900万円の請求が行く ことを、家族はどれだけ知っているだろうか?(係り:日本のサラリーマンの平均年収が420万円;一人の胃瘻は二人分のサラリーマン収入を飲み込む---日本社会は衰退して行きます)。

声2: 私は、胃瘻問題で「お金」のことを考えたことは無かったです(係り:生活保護なら年間200万円以下、胃瘻はその4倍も掛かる;しかも 残るのは「呼吸する骸 (むくろ) 」だけ、亡きがらを冷たくさせないための胃瘻です --- 楢山節(ならやまぶし)4) の場合と丁度 逆になる---“おりん”は心も体も元気なのに、村の70歳の掟(おきて)に従い、「口減らし」のために 冬山へ追いやられ、凍死の運命になった)。

声3: 胃瘻の経費は国会で決まるし、国会議員は経費削減なんて 考えない と思う。

声4: 胃瘻増設の場合、Dr.はよく説明すべきです係り:あるDr.は“お母様を餓死させるおつもりですか?”と胃瘻の必要性を説き、逆な立場のDr.は“死に行くお母様に老人虐待するおつもりですか?”と訊ねる---「胃瘻の現場見学」を求める家族はです;「自宅で胃瘻保守」を申し出る家族もです。日本人て、「脳足りん」 じゃないでしょうか?

声5: 私は延命の可否について勉強中です(係り:他人のお金を当て込んで延命しようとするから、心がズルイのです;自費でやる老人虐待なら、こんな問題は発生しません)。

声6: 延命胃瘻は「悪いこと」なのですか?係り:日本以外の国では「やりません」、つまり「悪 ! 」 ---日本は「猿の惑星」ですかね、国際的に 尊敬されず、気持ち悪がられています)。

声7: 胃瘻の実技を行う病院のDr.は 倫理の勉強不足・他方 家族は一時的な見栄(みえ)を張って胃瘻に望みを繋ぐが 実際には 以後のお見舞い頻度はぐっと減る --- 可哀想なのは「お年寄り」だけ です;この病根を みんなが意識して、諸外国並みの「愛」が通じる社会を築きたい と思います。

参考: 4) パールの安全管理 # 335 : 楢山節考 (ならやまぶし こう)
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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