(397) 骨折 の 判決 に学ぶ

 (397) 骨折の判決に学ぶ 

 今日は 「骨折の症例」で、介護側の「過失の有無」が どのように裁定される のか、ある裁判の判決結果に学びます。私たちの明日のケアに とても関係が深いと思います。 

症例:- 症例は I.H.様(95F 老人性認知症 廃用症候群 要介護4)。氏はパールのご利用者ではなく、骨折事例を紹介する事例案から取り上げた症例です;「静かなタイプ」の認知症で、意思の疎通は辛うじて可能、身の回りのことは ほぼ全介助、歩行は手引きでした。

事件発生:- はX年11月のことです。I.H.様は施設内の静養室の畳部屋で昼寝から目覚めた後、いざって移動し、畳床レベルと木の床レベルのあいだ40cmの段差を転げ落ち、右大腿骨骨頭骨折の障害を受け、病院で手術を受けました。術後 安静を強いられたためか 認知症の症状は進行し、歩行は廃絶しました。

骨折当時の状況:- 畳と床との間には 40cmの段差がありましたが、その場所は同時に通路でもあったし、転倒防止の柵は置けず、また下側の床にクッション等の配置も行っていませんでした。また 残念ながら、係りの職員は 隣部屋で作業をしており、時々 I.H.様の様子を伺う程度でした。

施設側の主張:- I.H.様は「自ら布団を離れて動き出す能力」はなかった ので、係りの職員には この事故発生について、予見可能性や結果回避可能性の検討が不必要と考え、従がって一切の責任はない、との主張 です。ご家族は これを不服として告訴されました。ここで「予見可能性」とは、I.H.様が動き出して、段差のある床下へ転落し得るとの認識;「結果回避可能性」とは、転落・骨折を避けるための 具体的な手段・方策です。

事故調査の結果:- 判決のために提出された普段の記録を見ると「立ち上がり」や「起き出し」で歩いていた様子が記録されていました !

判決結果:- 施設の介護サービス契約上の安全について 介護義務の不履行があったとして、約500万円の損害賠償が言い渡された。

過失の有無を判断する基準:-  過失なし と判断するためには、① 事故の予測ができなかった; ② 結果の対策ができなかった、の二点が必要です。ところが実際には、布団から離れて移動する可能性は過去の記録上 あったので「柵」を設ける等の対策は必要だったし、万一に備えて 床の上にクッションを置くなどの対策もあってしかるべきでした。ところが、 ① も ② も行われた形跡はなくよって「過失」があった ことに 反論はできませんでした。

私たちへの教訓:- 老人、とくに90歳代の女性の骨折防止は 場合によって困難であり、介護者が一律に責めを受けるとは限りません。もちろん、普段からの「良い信頼関係」も大事な要素ですが、いったん法律で争う事態に至ったのなら、 「過失なし」という 上記の ① ② の立証が必須です。

♣ 逆に言うと、骨折の予測と対策の二点確保」さえキチンと立証できれば、たとえ骨折という悲劇が発生しても、判決で不利になることはないでしょう。「その二点を守ること」 は 分かり易い教訓だと思いました。

職員の声

声1: 施設側はI.H.様が「布団を離れて動き出す可能性はない」としていましたが、過去の記録によれば 動き出していたのだから、「過失あり」の判決は争えません;私たちの仕事は 単に「見張る」だけではなく、 見守る」ことの順守 だと思います。

声2: この事例の「見守り」には 過失 があったか? やはり500万円はやむを得ないか?;でも施設側は痛手だなあー、気をつけないと !

声3: 施設側の落ち度は 残念ながら 隠せないよ;「転ばぬ先の杖」を実行するのは常識だし !

声4: 高齢者は 段差が有ろうと無かろうと 関係なく転倒・骨折を起こすものです;不時に備えてしっかり「書面」でご家族の理解を得ておくべきです 1, 2) 係り:あって欲しくない事故は なぜか起こる —— すでに「マーフィーの法則3) として世に知られています)。

声5: しかし 事故のレッスン料として、 500万円は高いなー;これが相場なのですか?(係り:年齢や傷害の程度・リハビリ期間にもよりますが、200万円程度が多いそうです;でも裁判が長期化して1,000万円を越えする例も報告されています)。

声6: ベットに体を縛り付けてはいけないでしょうが、過失防止のために必要な心得は?(係り:縛りつけても 将来の危険は解消されません;また高齢者を身体拘束するのは反則です ! 一番大事な事は 90歳代のご婦人なら「骨折危険の予測と対策」であり、この二つさえ確実に実行してあれば、裁判官も罪一等を減じて下さる でしょう)。

声7: “過失あり”とは「予測・対策がおざなりだった」ということですか?(係り:その通り。杞憂 (きゆう) という言葉をご存知ですか?“取り越し苦労”という意味です;老人のケアでは「杞憂」なんて絶対ありません ! どんな事でも起こり得る ! と心得ましょう)。

パールの安全管理   1, 2) # 102, 103 : 説明と同意の書。 3)  # 156 : 想定内と想定外。
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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