(407) オムツ と 心の備え

 (407) オムツ と 心の備え  

 それは 私が中学2年の頃です(1946年):祖父が病に倒れ、寒い冬の夜に亡くなりました。その前の半月の間、母が祖父に使った「布オムツ」を、洗濯しては竹竿に干して いる姿を見かけました。他の洗濯物とは干す場所が違っていたので私の記憶に残っていたのかも知れません。母は冬空のもと 寒かった でしょう . . . その頃には当たり前の光景だったのかも知れませんが。

♣ それから10年以上もたった頃、アルバイト先の病院風景1958年)ですが、患者さんは一部屋6人・寒い冬でも 部屋の中央に炭火鉢が一個あるのみ・お洩らしをする人には布オムツ」と「ゴム合羽のベットシーツ」で、冷たく震えあがる冬景色でした。濡れたオムツは オバサンがたが洗って干して いました —— すべて 古式ゆかしい 昔通り でした。その頃の 社会所得状況は そんなものでした。

♣ さらに時は10年過ぎゆき 1968年、所はアメリカに向かうジェット旅客機(DC-8)の中 . . . 太平洋の雲の上で、一歳半の私の二女は 窓から差し込む光の中でうとうと眠っていました。やがてオムツの取り換え時間が来たので 私は 航空会社から支給された「真新しい紙オムツ」を当て替えました —— そうです、当時の オムツも まだ原則 「」だった のです;晴れの飛行機旅行だからこそ「紙オムツの贅沢 (ぜいたく) を許してもらったのであり、今でも その「文明開化の喜び」を忘れてはいません。

♣ 以後の日本文明は バブル期の過剰から 驚くべき現在の贅沢への道を歩みました。いくつかのハイライトをたどってみると:―― ① 1990年(H2)、それまで輸入に頼っていた 幼児用「紙パンツ」の‘国産化’が実現・発売されるに至りました。② その4年後の1994年大人用の「紙パンツ が 近所のスーパーで大売り出しされ、誰が使うのか、私はビックリしたのを覚えています。③ その5年後の1999年は「パールの特別養護 老人ホーム代官山」の開設です ! —— まだ「」オムツが原則 であり、濡れたオムツは そのまま業者に引き取られ、再生料金を払って 再使用をしていました。まだ 紙オムツは高かったからです。

♣ 何もオムツに限りません。フト私は 昔と今を比べて 罰当たりと思えるほどの豊かな環境 を感じるひと時があります:―― まずは お年寄りを取り巻く「暖冷房」。上に書いたように、冬の寒い夜を「濡れた布オムツとゴム合羽」のベットシーツで過ごしたお年寄りたち . . . 昔 老人は冬 こごえて沢山死にました。夏は夏で 徒然草 (つれづれぐさ) に書かれているように、暑さに蒸されて老人は 沢山死にました。それに対して今の衣食住と医療・介護の進歩は 夢幻か? 老人は 寒暖だけでは死ななくなりました。凄いことです。

♣ でも私は気持ちを引き締めたい。環境の平和は うち続く事件により絶えず危機に さらされます → 世界パニック(1929年)、原爆(1945年)、バブル崩壊(1989年)、リーマンショック(2008年);東北大震災(2011年)、キプロス危機(2013年). . . 私たちは予言・予想だけでなく、常に「あらゆる状態は起こり得る」「それに備える」心 を持つべきと感じます。

老婆心ながら私は言いたい:文句を言い出したら 世の中「不平だらけ」。皆さん、過去を知り、先を読み、危機に備える心を忘れてはなりません !

職員の声

声1: 「布」オムツの特徴は:―― ウンチを取り除くのも 洗うのも大変、干す場所がない、なかなか乾かない、着心地が悪く 重く ゴワゴワ、オムツ・カバーから洩れる尿、なんとも気の重い めんどうだった布オムツ ! (係り:その上 布オムツは一度濡れた後 腰も 体も冷える;紙オムツは暖かいけれど 値段は高いし、ゴミ処理が大変)。

声2: 二人の我が子の経験:5年前 最初は「布と紙」を半々、次の子は 迷いもなく「紙」 ;洗濯の手間は省けたが、ゴミの山に戸惑う !

声3: パールの開設時(1999年)基本は布オムツだと聞きビックリ;それが全部「紙」に換わったのが5~6年前と聞き、二度ビックリ ! 係り:ごく最近まで、オムツは あの徳川時代が ずっと続いていた のだ、ほんとかよ?)。

声4: 何度も洗って使う「布オムツ」のほうが モノを大切にする心が育つ、と考える人もある(係り:起きて半畳、寝て一畳」の諺 (ことわざ) のように、必要以上の豊かさを求めることを戒める考えは根強い;でも 一度 楽 (らく) すると 人はもう 元に戻れない ! )。

声5: 「布」と「紙」を「めんどうさ」だけで比較してはいけない;「布」が「紙」に換わったことで最大のメリットは「疥癬 (かいせん) の拡散が抑えられた事なのだ ! (係り:言えてる ! パール開設のころ、疥癬が二例発生、三ヶ月の間 全施設の入浴管理はパニック状態だった:近所でも疥癬騒ぎの施設 があって、面会謝絶 ! 想像を絶する大被害 ! )。

声6: 「布」を洗う手抜きで 感染症の蔓延 (まんえん) は爆発する(係り:だから 病院の布タオルは紙タオルに改められた —— もはや、「布」か「紙」かの議論には 終止符が打たれている ! )。

声7: 介護環境や用品は 日々進歩しているが、従来 物品の補給は いきなり途絶える こともあった;オムツは「電気・ガス・水道」のようなインフラとは異なるが、もし老人介護の世界から 紙オムツが消えたらどうなるか? 私らは 贅沢に溺れず 危機感を持ってケアに当たっていくべきだと思う。

声8: 私は 今 ご利用者のケアにあたって 紙オムツを使っていますが、やがて私自身がオムツを当ててもらう年齢になります . . . その時は 布でも紙でも、私の「身の丈」に合う範囲のオムツで結構です;よろしくお願いします。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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