(429) 長生き と ピンコロ 談義

  (429)   元気で長生き + ピンコロ 談義

 20世紀半ばまで 日本の人口構成パターンは 完全なピラミッド型 であった1)

♣ それの老人問題の特徴は:― 人口は年齢別に 毎年一定の割合で減る;その結果 老人の数は若者より必ず少ない、 数の少ない老人の老後は 数の多い若者で看て貰うのが楽( らく )だった、 老人の眼で見れば ピラミッド型の人口構成は“極楽”、しかし若者から見れば 毎年 一定数の仲間が死亡して行くのだから“脅威”であった。

経済の発展により人口構成はピラミッド型から その後“茶筒型”を経過して提灯型に変わる 1) 。人々は80歳まで あまり死なず、以後は 直線的に減って100歳に至る。この場合の老人問題の特徴は:― 80歳まで各年代の人々の数が減らず、どの年代もおよそ同じ数であったのに、出生率はどんどん減る 老人の老後を看る若者の負担がグンと増える 政府は“老人を大切に ! ”と音頭をとるから 老人は楽( らく )しかし若者は敬老重税に苦しむ ―― 老人の独り勝ちの社会だ。

♣ 元気な老人も80歳まで生きれば さすがに弱って来る人が出始める。若者は 老人が 認知症で自立生活ができなくなっても生き続ける様子を見て自分はあんな老後を送りたくない、と感想をもらす。

♣ そこで多くの人の心に“謎解き”が始まる ―― ヒトはナゼ衰え ナゼ死ぬのだろう? ―― 昔は この回答が出来なかった;ナポレオンは死んだ、徳川家康も死んだ;これらは皆人間であり、よって 人間とは「死する」ものである;このように帰納法の論議しかできなかった。

♣ 近年の科学の進歩により、長寿の説明ヘイフリックの回数券50枚説ガン細胞は永久に死なない事実が紹介され、ヒトの寿命はコントロール可能の灯りが見え始めた。だが長寿に関して 介護現場の人たちの顔は決して明るくない ―― なぜって、「長生きできれば 本人は満足だろうが、その人の生活の面倒を誰が看るの? 」という疑問が真っ先に来る からだ。その老人は 戦後 総人口の 2~3% だったものが 今 23% と10倍に増え、少し後には 40% になる計算だ ―― その上 老人の面倒を診る若者の数は1/2 に減る ―― 差し引き、納税者の負担は 8倍 に増える のだ。老人が「元気で長生き」すれば、納税者がどうなるか、あなた 考えたことがある? 「子沢山」で国は栄えたが、「老沢山」で国はどうなるの?

♣ 今 要介護の予算の代表として要介護2を選んでみると―― 毎月の予算は約20万円だ。この額は“大学卒初任給料20.2万円 (厚労省) とほぼ一致する。つまり大学卒初任者一人 が給料全部をはたいても やっと一人の介護2を養える に過ぎない ―― もしそうすれば、自分は丸裸となるから仲間5~6人で組んでお金を出し合って介護2を支持する必要がある。要介護5(毎月約35万円)に至っては気が遠くなる額面となる。

働かない多数を養老する」とは このような難事業 であるが、当の老人は何も知らず 長命でござるこの有様を見て、若者は“自分の場合はピンコロで逝きたい”と洩らす

♣ そこでピンコロの実態を見てみよう。その定義は24時間~1時間以内の急死を指す。その8割は“心臓突然死”である――これは「最期がポックリ」というだけで、本来のピンコロではなく、心臓病死である。

事故死(火事・海川や交通事故・自殺など)はピンコロだが これを希望する人はいない。本当のピンコロは (イ) 老人(男性)の風呂溺れ ・(ロ) 大動脈瘤破裂・(ハ) 大動脈解離 ( かいり )で代表される。(イ) はパールの在宅介護で 毎年何例かが 発見される;(ロ) は パール15年の観察で90歳女子1例のみ(前夜まで症候なし、翌早朝 大動脈破裂で即死);(ハ) も15年間で76歳男子の1例のみ(胸痛発作で救急病院へ、苦悶( くもん )4時間後 大動脈解離で死亡)。 (ロ) (ハ) は稀の中の稀 であって、希望しても叶えられるものではない。

♣ 多くの若者はロマンティクに「寝る時ふつう、朝 冷たくなっている;でも体が腐敗したあとの発見はイヤよ ! 」などとのたまう。どこまで本気か?夢を語るのは自由だが、ナゼそれほどにピンコロ願望が強いのか 社会心理学の分析が必要だろう。

結論 : 若者がピンコロに興味を示すことのないように、老人の死が「美しい」と思わせる条件を追求したい と思う。介護に手間と時間とお金を掛けさせ、挙句の果てに“見苦しい”最期を見せると、私の心は晴れず、「あなた 元気で長生きしたのね? 」と問いたくなる。

  参考: 1)   パールの安全管理 #430:ピラミッドの不思議。

職員の声 

声1: ピンコロは「お金が掛からず 美しい死」だと思っていたのが そうでもなかった ! (係り:ジワコロ10年で5,100万円ほど掛かる ―― ピンコロなら100万円ほどですむ ―― お金は掛からないが、長生きした人に お別れのできない もどかしさ に 人は悲しむ)。

声2: 私は 自分の「要介護寿命」を短縮したいけれど、結局ジワコロ平均12.7年の長き になっちゃうのかなー?(係り:必ず そうなっちゃうだろうね)。

声3: 自立した生活を送れる限り、老人は好きなだけ長生きすれば良い:しかし介護を受ける立場になれば、幸せなのは本人中心、周りの人は凄く大変;ならば 社会貢献ができなくなった その時点でピンコロが望ましい だろう?

声4: 老人も社会貢献ができるように互助の精神を自覚して欲しい;若者も将来の夢が持てるようになって欲しい(係り:たとえば 要介護 4~5 相当の老人に「働きなさい」と言ってもムリ;問題は“浅い要介護度”の多数の老人が甘えて介護保険に 頼り過ぎないようにすること が必要 ―― ドイツでは要支援1・2、要介護1・2は無く、要介護とは3、4、5のみで按配している)。

声5: 若者は、日本を創りあげた老人を尊敬している、が、大人数に増えた老人の養老費の重さ を 建前でなく本音でどう思っているのか?(係り老人たちは 有能であったが、長生きのゆえに過剰な老人人口と 増大した養老費を招き、日本の社会を崩壊させつつある ―― 老人の存在意義は何だったのだろう?)。

声6: 若者は自立できないまま 長生きする老人を尊敬できない . . . 」という項目は なんだか分かるような気がする ――― だって彼らは獲得した「 ( とみ )を 自分たちの長生きのために使い、納税者である若者達に分け与えてくれないから だ)。

声7: 核家族化の今、老いの経過や衰えた姿を知らない若者が増えてきた;シワシワの異星人を見るような目 で老人を見る子もいる ―― 老人も自分の老いとの対話をしない限り 若者からの尊敬を受けられないのではないか?(係り:昔は90歳~100歳の老人は見たくても存在しなかった;今は そんな老人は施設の中で生活している ―― でも、子供たちが美しい老人を見、尊敬することを学ぶ日が いつかは必ず来るだろう)。

声8:老人を尊敬し、その死が美しい . . . 」の意味を追求し、よーく考えたい(係り:文豪ゲーテ は 死に際に「もっと光を ! 」と静かな声で、美しく逝った そうだ。反対に 現代の 延命操作を重ねに重ねた老人の死に様は「美しさ」を求めるべくもない)。

声9:老人は敬うべきだ とは思うが、介護保険の一律性のためか 本人たちの人間味が失われている ように感じる ―― 昔のように もっと個性 が表現されれば 尊敬できる老人が現れると思う(係り:昔は手作りの職人芸が尊ばれていた;今は 良くも悪くも 安価・大量生産の時代だ . . . 老人介護も同じこと; ―― 檻( おり )の中で飼われた群れの羊に 一匹オオカミの味は出しにくいのだろうなー)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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