(433) 無産延命を調節する

  (433) 無産延命を実現したいのか?   

 ルーの3法則については、今まで何度も出てきたが、簡単な‘おさらい’をしておく(=口述)1) 。さて、先回の「介護展望」で玉置さんが‘ピンピンコロリ’(PPK)と‘ネンネンコロリ’(NNK)のお話をされたのが印象的であった2) 日本人は世界一の長生き だ;それは おめでたいことである反面、それを支える年金・医療・介護費も世界一になったことを 彼女は気付かせてくれた。

♣ 生命は38億年の昔に生まれ、以後「死なずに存続すること」を最大の任務としてきた。その目的のために工夫された手段は二つあった:―― 一つの個体が無限に生き続けること、or 無限の生存の中には 破壊や死亡があり得るので、程よい間隔で‘世代交代’して長生きを達成する。

♣ ① の例としては アメリカの樹木・セコイアがあるが、それでも最高4千年程度だ、とても38億年間は生き続けられない。人間は哺乳類として かなり長い生存を誇るが、それでも せいぜい百年程度の生存であり、① の目的には遠く及ばない。結局 生命の基本的特徴たる 無限長命 のためには ② の「世代交代」に尽きる

♣ ここで動物界の状況を観察してみると、三つのパターンがあることに気づく:―― (A) 多産短命、(B) 少産長命、(C) 無産延命の三種だ。 (A)は体の作りが簡単で容易に壊れてしまうけれど 個体数の多さで危機を補うことができる生命で、良い例は ‘昆虫’がある。 (B)は体の作りが複雑・高級で 傷に対する自己修復が可能な生命で、魚類以上 の生物種が該当する。人間はその内の最高種族で、ある程度の傷や病気を克服する方法を知り、長命の基礎構造の点で 他の生命とは画然と異なる。

♣ しかも 20世紀後半になって 人間は「年金・医療・介護の進歩」によって著しく長命になった。その特徴は 人間だけに見られる(C)である。つまり、従来の長生きは (A) (B) 共に 常に「繁殖の多寡」で支配されてきたが, (C)は「無産延命」 なのだ !! ―― 半世紀前まで、人間は子を産み、更年期になったら世代交代して命を後世に繋いだものだが、最近の半世紀は‘世代交代’終了後 新たな若い命の補充をせずに 更年期の2倍にも及ぶ長い老年期を生きている。人間は知恵によって、この偉業( いぎょう )を成し遂げたが、ちょっと待て ! 待て ! ―― やり残しがあるのだ !

♣ それは 自分の延命を支える経済構造を作り忘れていた点である。働かない老人を養うためには大金が掛かる ―― 百歳になるためには平均お一人1億円の社会経費が必要なのだ3) 日本の百歳寿は1960年に100人からスタート、今年には5万5千人、つまり50年で550倍に増えた。5万5千人に お一人1億円の社会経費を掛けると5兆5千億円となる;日本の総歳入が45兆円であることを考えると、震えがくるほどの百歳寿 維持費である ―― しかも対象老人は百歳だけではなく、101歳、102歳 . . . 複数あるのだ !

♣ 一事が万事であって、日本の台所はクラッシュ寸前。そこで日本倒壊のシナリオを避けるために「福祉経費の3割削減」が提唱された4) 年金を3割減らす? ―― 20万円の年金を14万円に減らして生きて行くのか? 医療費の3割削減なら、風邪・傷などの軽い病気は健康保険外となる。介護費を3割減らすためには、要介護2以下はドイツ並みの保険外とする。でも これを もし実行したら、政治家は全部 馘( くび )になるだろうが、もし実行しなかったらスエーデン並みに国は倒壊する5)

ルー(Roux)は言う:一番いけないのは‘無見識な長生き’(= 無産延命を助長)、次に望ましくないのは‘何もしない’(=無産延命を放置)、そして最も望ましいことは‘丁度よく手を打つ’こと(=無産延命を調節)―― それは 倫理的に可能か?  

結論 私たちの現状は無産延命の巨大経費を「国債発行」の借金でしのいでいるが、ここで 「借金無しの打ち出の小槌」 があれば、問題は解決する、かに見える。

♣ あなたは どんな「打ち出の小槌」を見つけて下さるか? → 声5を参照 !

   参考1) パールの安全管理 # 5:長生きのひみつ。#45:ルー(Roux)と智恵。 2) 安全管理 # 431 : 世界一長寿国日本が抱える問題。3) 計算式は:20万円 ×12ヵ月 ×40年 = 9,600万 ; これに加えて+ 医療費 +介護費+お小遣い ≒ 1億円;収入が10万円としても 5000万円だ。 4) # 426:福祉の国民負担。 5) # 417:福祉における費用対効果。

 職員の声

   声1: 人間は「延命法」を入手したが、それを裏づけする 「ヒト・モノ・カネ」を無視し、長命の一点集中しか考えなかった;ルー(Roux)1) の言うように「ちょうど良く 広く手を打つ」ことの大事さ を私はひしひしと感じる。

声2: 50年後の日本を予想すると日本は本当に滅亡だ;政治家は耳当たりの良いことを言うだけで頼りにならない(係り:その頃 パールの職員たちは70~80歳の老人になり 総人口の半数を占め、働かないまま若者に寄生してブラブラ遊んで暮らす ―― そんな弱体化した日本は 間違いなく近隣国の植民地にされてしまう)。

声3: 100歳になるためには1億円必要というが、どうしたら そんなお金を貯められるの?(係り:計算は上記3) 気持ちさえあれば 月10~20万円は稼げるのだが、政治家が過保護だからブラブラ遊んでいる)。

声4: 金が掛かるから老人給付金を減らす?やってみたらどうか? 老人が早死にする? それが合理か不合理かが分かるだろう(係り:現在 社会福祉費の70%が老人に、4%のみが子供に振り分けられている . . . 不当に老人優遇である)。

声5: 不足する老人給付金を賄う「打ち出の小槌」が見つかったらどうなるのか?(係り:欧米先進国はこれを「植民地経営」で入手した;もし日本で見つかれば、お金が倍に増え、老人の数も倍に増えるだろう ―― 問題の先延ばし)。

声6: 若者が支えきれないほどに増大した老人層 . . . それでも老人は大切か?(係り:政治家の「票」のために作られた老人優遇策、しかしそれはハンディキャップとなって日本商品の国際競争力を落とし、いずれ日本衰亡に繋がる)。

声7: 雇用を広げ、老人にも働いてもらいたい係り:それを「虐待」と称して許さない左派勢力がある;また現実問題として 要介護3~5の人たちの優先保護が適切か? 言っちゃ悪いが、船が難破している時に 老人を優先的に救助艇で助け、働く男女たちを海に沈めてもいいのか? )。

声8: 老人たちに尋ねたい:-― 子育て困難な環境を提供し その上赤ちゃんを、はムリです: 保険料を納める若者をしごいて ご自分は楽をしたいの? 自分たちの老後を良くしようとして子供たちの生活をナゼ乱すの?

声9:子を産まずに(= 社会貢献せずに) 長生きしたい(= 社会負担を増やす) 、すなわち 無産延命」は難しいジレンマだ:高福祉のスエーデンは潰れるし、低福祉のアメリカは悲惨だ;医療格差も大きく、どれも解決は難しいナー(係り:そもそも「生きる」ことは、がんらい上昇すべき自然エントロピーむりやり下げる ことであり、天然法則の例外である ―― 無産延命は人類以外にはありえない怪奇な珍現象」である ―― 我々は「例外的で怪奇な珍現象」の中を生きているから、そりゃ難しいのも当たり前かもね ! )。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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