(442) 認知症の増大に歯止め?

(442) 認知症の増大に歯止め?

 老人の数が増えるにつれ 認知症の数も並行して増えていく、との観測が一般的だ。両者の関係は それほどに緊密なのか?つまり、老人の数が2倍になれば 認知症の数も2倍になるのか?  もしそうなら、多老少子社会に住む我々は大混乱に陥ることになる。現在 我が国の認知症の数は460万人を越えたという1, 2) 。それは どれほど多いのか?

♣ いま日本人口を1億2千万人とすれば、老人数は その23% ( = 2700万人)、認知症の比率は460万/ 2700万は16.7%;つまり 老人5人に1人は認知症である。老人の数が やがて40% になるのは目前であり、このままなら 認知症の比率は34% に、つまり我々は65歳の定年を越えると 3人に1人は認知症になる割合だ。この頻度は 60年前に日本を席巻( せっけん )した結核をはるかに越え、認知症は日本の「国民病」と呼ばれるだろう。いってみれば、日本社会は認知症過剰の渦巻きの中で 窒息するのだ。

♣ 政府推定では、これら認知症の半数が「在宅介護」で、残る半数が「特養」や病院などの施設介護を受ける。ただし「特養」の収容数は 需要のわずか15% 程度、精神病床は2% 程度を満たすに過ぎないから「専門的な介護」という点では心もとない展望となる。つまり大多数の認知症患者は街にあふれてしまう、という状況になるかも知れない。

♣ 政府が特養や病院などの「受け入れ定数」を増やせば この問題は解決に近づくだろうが、変動する社会情勢に対応する困難も現実にはある。

♣ ご存知のように、アルツハイマー病を確実に予防する方法は 今のところ存在しない。「脳血管性」認知症なら ある程度予防できるが、すでに実行されているのが現状だから、多くは望めない。アルツハイマー認知症の最大の原因は「長生き」 であるから、長寿社会の訪れを受け入れるならば、アルツハイマーもくっついてやってくる両者を分離する方法は 今のところない のだ !

♣ ナゼ分離できないか? それは脳細胞の事情による。人間40歳を越えると誰でも脳細胞の中に「ベータ・アミロイド」という好ましからざる蛋白が溜まってくる。それが加齢とともに濃度を増し、脳細胞内で沈着することによって 脳細胞が死滅する ―― これがアルツハイマーの主因である。つまり発症の要因として“50歳以上の年齢が必須 なのである。昔は首から下の臓器の病気がヒトの寿命を決定していたが、医学の発達とともに これらの病気は治るようになり、結局 今 脳の老化がヒトの寿命を決定する時代になった。それゆえ、 「延寿と認知症」が 仲良くペアを組む ようになったのだ ―― 10年前まで 認知症は「年寄りボケ、痴呆( ちほう ) 」と呼ばれていたが、このほうが実態をよく表していたーー認知症という高尚な名前では、本態が隠されてしまう。

♣ ベータ・アミロイドの沈着スピードには なぜか個人差があり、これが認知症の発症年齢を複雑にしている。しかし大数観察によれば、認知症は、その半数が85歳までに、全数が110歳までに発症する 3) 。換言すれば、あなたや私が認知症でないのは、まだ時が満ちていないからだけ であり、もっと長生きすれば 認知症は まず避けられないのである。これこそ 認知症が、人間の延寿にまつわる「( ごう )と言われる所以( ゆえん )でもあり 4) 人生50年の戦前には 滅多に見られなかった理由でもある。

♣ 幸か不幸か、最近は 事情が少し緩和される見通しになった;なぜなら日本人の平均寿命が86歳近辺で行き止まり のような所見が見られるからである5) 。86歳で延寿が止まるなら、認知症の発症頻度も この辺で止まるのではなかろうか?

♣ もちろん実年齢86歳を越えて生存する人は多数あり、これらの人の認知症発症は実年齢と並んで増えるだろうが、日本人全体とすれば 認知症の増加に「歯止め」が掛かるだろう。 我々は 無限に歳をとることはできないから、このことが案外 現実になるかも知れない。

結論: 日本は 戦後 すごい勢いで延寿を達成し、それに並んで 認知症多発の憂き目を見た。しかし、近年の平均老齢の行き止まり達成(86歳)とともに、認知症の増加も歯止めが掛かる可能性が出てきたように思われる ―― 今後の統計報告を待ちたい。

  参考 1) 斎藤正彦:ブロッグ: 認知症を考える(11)=「本人の努力次第」ではない。2014.3.2 読売新聞。 2) 斎藤正彦:ブロッグ:認知症を考える(3) = 患者460万人以上、 推計の1.5倍。2013.6.30. 読売新聞。3) Brutal Truths about the Aging Brain. Robert Epstein in Discover 10:48~76, 2012. 4) 延寿の業(ごう)を正す:新谷冨士雄・弘子、ブロッグ:パールの安全管理 (# 438)、2014. 5) 各国の寿命:五つのハテナ:: 新谷冨士雄・弘子、ブロッグ:パールの安全管理 (# 439)、2014.

職員の声

声1: ナゼ人の平均寿命は86歳で行き止まりなのか?若返り法・食事の注意・薬などの手段で もっと延ばせないのか? 係り:それが有効なら、王様・殿様は千歳・万寿になっていたハズ:3000年前のソロモン大王6) ( ぜい )の限りを尽くした健康法を実施したが 老いとともに逝ってしまった秦の始皇帝 は2000年前の中国を平定した大王で、無限延寿を得るはずだったが、あわれ 52歳の旅先で急死した ―― 世界174ヶ国の研究で 人類の内部寿命は70歳前後だ、という報告さえある7) ー―平均寿命が86歳だという日本は「論外の延寿国」だとも言えるだろう . . . 人はこれでも短すぎると不満らしいから「遺伝子工学」で「サイボーグ老人」にしてもらうか?ーー 心臓ペースメーカーの埋め込みは ’サイボーグのはしり’である ! )。

声2: アミロイドβが存在しても認知症にならない症例・アミロイドβを薬で治療しても認知症になる症例があって、治療薬の研究は‘振り出し’に戻った、という報告もある。

声3: 長寿社会のデメリットを認知症だとすれば、国民に広く受け入れて欲しい事実は「長生きしたいが認知症(= 年寄りボケ)はイヤ」という矛盾に満ちた言葉を使うのは身勝手だ」ということだ(係り:これは高い給料で 楽な仕事」と同じ発想 だ ―― 歳とりゃボケるのは 避けられない ー― どうしても避けたいのなら、人生50歳の国々へ引っ越せば可能だ)。

声4: 仮に歯止めがかかっても、認知症が無くなることはない だろう ―― それの対応は今後も重要だ(係り:年寄りボケがいない高齢社会とは“雨天で晴天”というに等しい ーー 安全管理 6) で私は兼好法師の徒然草( つれづれぐさ )昔から認知症があった ことを示したーー 昔は稀有な例だったから個別に対応できた ―― 高齢社会では “雨は常に降るから傘を用意する” のだ)。

声5: 人間の脳が 80~90~100歳まで生きて 若い時と同じ機能をもつ訳がない ―― 忘れっぽい・周囲の声に耳を傾けないのは避けられないだろう ―― それより、老人の認知症の増加が行き止まりであっても、代わって若年型認知症が増えるのではないか係り:その可能性はアリだ ―― つまり3万年前、ネアンデルタール人が現世のヒトに駆逐されたように、現世のヒトも来世型人類に駆逐されるかも知れない ―― その理由は 出来の悪い中年の人たちが「生命存続の基本」を、つまり ① 自分が生きてグループに貢献する事、② きっちりと子孫を残す事、の両方をおろそかにし、③ 生命進化の道に反する事(= 老親の人格・尊厳を無視して延命手段に走る事)を平気で行っているからだ。来世型人類は これら①②③の癒しがたき欠点を有する認知症がかった中年の人たちを容易に淘汰して行くことだろう。

声6: 平均年齢の数値に満足かどうかではなく、幸せな天寿を全うできたかどうか が最大の関心事である(係り: 86歳 と聞けば 多くの人たちは“もっと多く . . .”を望むだろう ―― しかし現実には 世界174ヶ国の研究で、人の天然生理寿命は70歳近辺であることを報じ、その現実に驚かされる;パールの特養では皆が一生懸命 取り組んでいるから、私も その平均寿命は おそらく 97~98歳か と思って尋ねてみたら なんと87歳」という答え が返ってきた . . .唖然( あぜん ) とすること しばしであった ―― あんなに頑張っても 統計寿命は日本全国の普通の寿命と変わらないのか? 愕然 (がくぜん ) ! 介護の質を上げても 平均寿命は上がらないのだ ! ーー 私は推定するーー 86歳未満なら86歳に近づく; しかし 86歳を越えると 平均寿命は にわかに上がらなくなる . . . それがヒトの統計的 生理寿命の限度らしい。これなら、昔の王様や女王様たちが どんなに贅( ぜい )を尽くしても 超老人になれなかった理由が納得できる)。

参考: 6) 安全管理 # 3: ソロモン大王の介護、2010。7) 人間の寿命について(後編)、ブロッグ planet_of_homo_sap2 、2013/6/20.  
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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