(468) 介護 「アイコン」

 # 468 介 護 「 ア イ コ ン 」   

 まず、アイコンの意味から入ろう。アイコンとは 「小聖像」 の意味を表すギリシャ語の 「イーコン」 に由来する (下図)。

♣ ご覧の通り、アイコンはキリスト関係の聖像であるが、ローマ ~ 西ヨーロッパ方面の聖像と異なり ① 小さい、② 古風な技法で出来ていて、利用者は主にギリシャ ~ 東欧方面の素朴な住民が多い。現代風の習慣で言えば、恋人の写真を小さなロケットに入れて持ち歩くようなもので、大聖堂に掲げられている聖像とは利用法が違う。

介護の「アイコン」

♣ 日本風に解釈すれば 仏像画を縫い込んだ法被( はっぴ )を着るようなものか。‘小型で身に付ける’ ほどのものといえば、像に対する親密度も高く、絶大な尊敬と帰依( きえ )を表す。したがって、もし書籍や文書の頭にアイコンが印刷されていれば、それはとりもなおさず “絶対信頼” の合言葉として了解される。

♣ 私は 子供の頃、このようなアイコンに大した興味を持たなかった。時が移ろってパソコンの時代になると、カタカナ語が氾濫し、その一つが “アイコン” であった ―― ご存知、パソコン・ソフトで ワード・表計算・作曲等のプログラムを画面上で見つけやすいように 爪」 の大きさの 小さな画像がそれだ。まことに利用しやすい その画像は その昔、ギリシャで用いられていた 「イーコン」 (上図) を英語風に発音するとアイコンになるとは気付かなかった。

♣ ところで、アイコンは文字の情報よりも象徴性に優れ、小絵画で 「聖書」 の意味する内容を記号化して表現できる ―― この意味で 「紋章 . . ロゴ . . シンボル」 として、絵そののより深い意味を表すことに使われ始めた。つまり、「犬棒カルタ」 のように、短い語句で 意味深長な真実” を代弁するようになった ―― 犬棒カルタの例としては:― 「犬も歩けば棒に当たる」 「良薬は口に苦し」 「苦あれば 楽あり」 などである。

♣ ここで私は目が醒めた ―― 元来のアイコンは 「絵画」 そのもので意味を表したが、それは同時に  「文字列」 で一連の意味を伝える手段 になり得るのではないだろうか? 私は “短い文字列のアイコン” を用いることで、 「老人介護のイロハ」 を理解・伝達できるのではないか、と思い立つに至った。

♣ ここで 「犬棒カルタ」 に沿って、三っの例を述べてみる:―― ① 犬棒 = 転ばぬ先の杖” を ’介護アイコン’ で言うと = 「後ろから 声掛ける べからず 年寄りに」。その意味は = 歩いている お年寄りの後ろから うっかり 「田中さん、お忘れ物ですよ」 などと声をかけると、田中さんは後ろを振り向きざまによろけてしまい、下手すると転倒・骨折をしてしまう ―― 歩いている お年寄りへの声掛けには注意をしよう。これが私の 「介護アイコン」 の一例である。

 ② 犬棒 =  “知らぬが仏” を ’介護のアイコン’ に翻訳すると = 「膝の中 そこには 軟骨寿命あり 」。真意は = 膝の軟骨は他の組織と異なり、 生後 細胞分裂をせず、生まれたときのままの組織を一生 用いる; よって大切に使うべ き であり、いったん故障したら、軟骨を補充することは 誰にもできない。この事を本人は ‘知らぬが仏’ 、ーー 肥満・過剰運動などで 若いころ好き勝手に膝を酷使すれば、歳をとって泣く ことになる。膝を悪くした老人には悲しい知らせであるが、介護者は 無意味な慰め言葉を弄してはいけない。

 ③ 犬棒 = 礼儀も過ぎれば失礼になる” を ’介護アイコン’ に直すと = 「大王も 過ぎたる介護は 受け付けぬ」 :今から3000年前、権力と栄耀栄華に満ち溢れたソロモン大王も、歳を取れば 只の老人になった ―― 死の床に伏せた彼を 若き美女二人が体を包み込み 冷え行く体を温めた。女の体が冷えたら別のペアがそれを続けたが、結局 ソロモンが逝くのを避けることはできなかった 。この真意は、点滴も胃瘻もなかった3000年前の介護は、冷える体を温める以外の方法はなかったし、それが 高い地位の人への礼儀であった。現代の介護事情の中で、似たような 過剰な延命礼儀が行われてはいないだろうか?;これも私の 「介護アイコン」 の例である。

結論: アイコンというギリシャの 小聖像の風習を紹介した。アイコンは絵そのものよりも意味深長な真実を伝えてくれる。そこで、絵の代わりに文字を用いたアイコンで 「老人介護のコツ」 を 理解・伝達 できるのではないかと思い、その例を三っ挙げた。今後、 「犬棒カルタ」 に沿って 色々な 「介護アイコン」 を作成して 勉強したいと思う。読者も ふるって アイディアをご一報ください。

  参考:  新谷冨士雄・弘子:ソロモン大王の介護、パールの安全管理 # 3, 2010.
 
  ――― パールの 介護カルタ の サンプル ―――

年寄りを トイレに残して 出るべからず
呼ばれたので トイレから出て、 戻ってみれば、トイレ内で 年よりは 転倒・骨折していた。

褒めたらば 杖 足にもつれて 転倒す
まあ ! 杖でチャンと 歩けるじゃない ! と褒めたら、おばあちゃん 得意に歩いて こけてしまった。

ムセた後 (のち) 9℃の発熱  肺炎か?
これは 誤嚥性肺炎の典型 !

認知症 あしたのことは 気にならぬ
物忘れを気にするお爺ちゃま あしたの予定には 無頓着――認知症は「時間感覚」を失う。

ここは何処? あなたは誰? と言うばかり
認知症の典型は「時・所・人」の弁別ができなくなる。

弟と 夫の区別できない 我が婆様
夫の訪問を受けたお婆ちゃま、‘この人 私の弟です’と 人に紹介。

親子なら 遺伝子 半分 共通なり
親子は 年をとっても 所詮 兄弟よりも 血は濃い。

延命は しばしば 頑迷 ( がんめい ) 理外の理
酸素に胃瘻、我が親を 一分でも一秒でも 長生きさせてくれ !!

 ーー こんな調子で 「 パールの介護カルタ」 を作っていく予定だ。 ーー

  職員の声

声1: 介護 「アイコン」 は とてもユニーク なお話で感動した; その発想力に敬意を表したい。

声2: 介護のコツが楽しく理解でき、教育方法としても有効だと思う。

声3: 介護を 「視覚」で覚える ことは面白く、また記憶に繋げる ことにも有効だと思う . . . 視覚障害者でも聴覚から入れるのではないか。
介護「アイコン」

声4: 思い出されるのは 「東京オリンピック」の時の 「絵文字 だ !! 特に、外人に人気のあったのは「非常出口の絵 」だった ―― 現在でも全世界で共通に用いられているという(上図)。

声5: もし このようなカルタで ご利用者と “カルタ取り をすれば、絵の意味を 専門家の目で ゆっくり解説できるだろう。

声6: これが完成したら 「商品」 としての価値 があると思う;デイサービスなどでも  「笑い」 を誘って気持ちが楽になる。

声7: サンプルのカルタは 「うまい言葉で その場の特徴」 を掴んでいると思った ―― このようなカルタを通して一般の方に介護のことを理解してもらえは 福祉を より身近に感じるようになるだろう
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR