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(484) 実態 と 理解

   (484) 実態 と 理解

  百歳の ご利用者が亡くなると、ケアに関与するあなたは 感慨に打たれるだろう。亡くなったご本人はたぶん感謝で一杯だっただろうけれど、ご家族はまた別な気分かも知れない。ケアの世界は最低 三つの部分 から成り立っている: つまり “本人・家族・介護者” 。それぞれに気持ちの “実態” があるが、三者は互いに “理解” し合えているだろうか? 今日は 最近の 「二つの実態」 で考えてみる。

(第一の実態) 左の図は、フランスの シャルリー・エブド社 発行の雑誌に出た風刺画 ( ふうしが )で、題名は 「星は産まれた」 : “星” とは イスラム教の予言者 ・ モハメッド、そのお尻である。これを見て 憤激したイスラム信徒は 今年1月7日、 エブド社にテロ攻撃 をし掛けて、筆画者を含めた 12人 の社員を殺害、これが全欧州人の反感を煽り、今なお アラブと欧州勢は 一触即発 の対立状態にある。欧州側は 「表現の自由」 を掲げ “すべては赦される” という立場であり、アラブ側は “教祖侮辱は死罪” として一歩も譲らない。

中の図 は 日本の明治初期に フランス人が描いた 「日本人の紹介」 であり、題名は 「日本人は洋装を学んだが、鏡で見ると 中身は “サル” 。私がこの絵に接したのは中学時代だったが 非常に驚いた、ナゼってフランスは優れた文化先進国であり、先の 第一次・第二次世界大戦 の戦勝国; その偉大なフランス人が見た日本人とは こんな哀れな存在だったのか? 今、私は何十年ぶりにこの絵に接して、複雑な思いである。
実態 と 理解
右の図 は 先週 1月18日 の NHK の大河ドラマ 「花 燃ゆ に出てきた アメリカ人の 「ペリー提督」 。幕末の 1853年 、彼は艦隊を浦賀に導き、徳川政府に日本開国を迫った。高飛車な要求に驚いた日本はペリーの似顔絵を全国に手配、ドラマ 「花 燃ゆ」 の 吉田松陰 が手に入れたのは この瓦版である。まるで 角 ( つの )が無いだけで 「大江山の酒呑童子( しゅてんどうじ ) 」のような “鬼の絵” ではないか ! これが 「尊皇攘夷( そんのうじょうい ) の心をくすぐったのであろうか―― 松陰の妹 ・文( ふみ ) は この瓦版を見て キャー ! 。松陰も ‘ふみ’ も この絵で ペリー提督の実態を理解 したとは とても思えない

♣ 左と中の図はフランス人が描いた挿絵、右の図は まだ写真機のなかった時代の日本人の挿絵師の絵; 日・仏の絵師はいずれも 真実の理解に資するために描いた絵ではない と思われるが、あなたはどう思うか? 私たちは たとえ風刺画であり、写真機の代わりの絵であっても、それを見た人の心が曲がってしまうような作品を作らないように心がけるべきではないか?

(第二の実態)  死の床にある人のケアは 心 寂しいものがある。本人も さることながら、親族の方々のお気持ちは察するに余りがある。この状態にある方は 多くの処置やケアを必要としないが、儀礼と惜別としての見守り、とくに深夜の見守りやケアは欠かすことはできない。一昔まえまで、家族がこれに従事するのは当たり前であった。ところが時代の変遷とともに、介護職員がこれの代理を担う機会が増えてきた。そこで 「労働問題」 としての 見守り業務の位置づけ が問題となる。昔の家族労働や封建社会と異なり、新しい 「労働の実態とその理解 」 が頭の中に整頓されねばなるまい。

♣ ここで、使われる用語を簡単に復習してみる。 ① 日勤と夜勤: 労基法の基本であるから説明は不要であろう。② 宿直: 日勤者が去った後の夜のお留守番であるが、専用のお寝床が必要; 日祭日なら ‘日直’ もあるが、労働密度は低く、労基法との関与は薄い。③ 当直: 夜の “臨時重労働” に対応する勤務を行うこと; 労働密度は高く、労基法も密接に関与する。

♣ ④ とのい : 殿居と書く。奈良時代からあった制度で、夜間、貴人の身辺警備を行うことであり、ひいては 病人の傍に侍る寝ずの番」 。 これは 夜勤であり当直でもあるけれど、その特徴は 小さい労働密度と過大な責任である。近年は 重症老人の見守りが頻繁になってとのい」 の需要が増えた が、その労働形態は何か? 労基法では連続 8時間 を越えてはならぬ、深夜料金はキチンと支払え、となれば、料金は一晩で 3万円 を越え、月100万円 以上となる。

♣ つらつら思うに、昔は人使いが荒くて 「とのい」 は義務的、かつ無料であったが、現代では 「不寝番 という長時間の労働形態により料金も割高な実態となっている。百歳老人の 「とのい」 は、ケアする人の感傷に訴えるものがあるけれど、責任は重く、ご家族の理解も必須となった。これも時代の流れを反映するものであろう。

結論: 三枚の絵 = 予言者のお尻 ・ 鏡で見た日本人は 「猿」 ・ ペリー提督は大江山の酒呑童子 ―― 「実態と理解」 が ‘泣き別れる’ ことの教訓 であった。② 夜勤 ・ 宿直 ・ 当直 に加えて、近年はとのい」 の 「実態と その理解」 が 強く求められる時節になったことを概観した。

職員の声

声1: エブド社の風刺画は回教徒への刺激が強過ぎた事は明白だ; 他者への心配りが無かったことが殺人テロを招いたのだろう(係り: モハメッドの代わりに 「キリスト」 や 「マリアさま」 が描かれていたなら、フランス人だって不愉快だっただろう)。

声2: 他人を侮辱する自由があるのかね?アメリカも北朝鮮をパロディー侮辱して、その結果 サイバーテロの報復を受けたではないか(係り: アメリカン・ジョークですませたつまりだったのだろうが、自分が報復され返すと カッカ と怒るのは 良くないね)。

声3: 回教の開祖・モハメッドを愚弄し、明治の日本人を 「猿」 扱いに描いて紹介したのは いずれもフランス人だ; 彼らは 「自由・平等・友愛」 という立派な 人類標語 を持っているのではないか?(係り: 彼らは ’人類は自分たちだけ’ 、アラブや東洋人にまで 気が回っていないね)。

声4: ペリー提督 は 瓦版で見ると 酒呑童子 のような恐ろしい鬼に見えるが、ナゼ吉田松陰は そのペリーの黒船に 国禁を犯してまで接近したのだろうか?(係り: 松陰は 「鬼」 の恐ろしさに圧倒されず、ペリーの実像が 文明開化 のために役立つと理解したから だろう)。

声5: 介護の世界では、夜勤 ・ 宿直 ・ 当直 に加え、近年 とのい」 (殿居) の実態と理解が求められる世相となった(係り: 「とのい」 とは 「不寝番」 、超高齢の老人が増えるにつれ、実務の介護 礼儀の介護、両方の需要が増してきた)。

声6: 病院は 「治す所」 であって 「死ぬ場所」 ではない、という考えが社会に浸透するにつれ、老人の自宅でのお看取りが増えてきた(係り: 「とのい」 の実態を “本人 ・ 家族 ・ 介護職員 ”の三者がキチンと理解する気運が生まれつつある)。

声7: これら三者が互いに理解し合うためには お看取り」 には 「とのい」 が適切であるという実態を理解・共有 することが大切だと思う(係り: 特養では “説明と同意” ( = インフォームド・コンセント)で ご利用者の実態を共有し、三者の理解を進めながらケアを行っている ―― 在宅ケアでも、お互いに “有難う” と言えるムードを醸し出したい)。

声8: 介護は傍からの 「お仕着せ」 ではない . . . 今回のフランスのテロ事件に接して、“相手のある仕事で 相手を慮る姿勢の大切さを しみじみと賢く学んだ。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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