(501) 介護進化 の 位置づけ

   (501) 介護進化の位置づけ 

人の延寿は まだ将来の余地が有るようだが、人が他人の 「お世話」 をする能力にも 将来の進化余地があるだろうか? . . . たとえば、 120歳 の人の食事介助を 100歳 の人が行う ことができる、など。

♣ もし人が長生きを求めるのなら、延寿の進展と並行して日常動作能力の進化も必須ではないか。歳だけ取って、後は ‘してもらう姿勢’ は、前回にも述べたように、それは “オーナス” ( = 他人負荷) 1) に他ならず、21世紀 の社会では 社会衰亡の原因となる “罪悪” の一つ に数え上げられている。

♣ パールでは 108歳 の女性が最高寿であり、歩くことは出来なかったが 「歌」 がお上手で、‘箱根の山は天下の険’ が オハコ だった。彼女は 愛嬌を振りまきながら 最後までお元気ではあったけれど、日常生活のすべては完全に ‘他人依存’ で、最期は 誤嚥性肺炎 で亡くなった。だって百歳寿だもの、当たり前でしょ? とあなたは尋ねる。そう、20世紀 までは問題なし だろうが 21世紀 からは 「オーナス」 ( = 他人負荷) になる のだ。

♣ 別の例、ある 55歳 の主婦、息子にお嫁さん が来た。途端に生活態度が変わって 家事の一切をしなくなった。公言するに 「私は若い頃 身を粉にして働いたから、歳をとったこれからは 家事は嫁の仕事、私は楽隠居」 。呆れ果てたお嫁さん は離婚を求めて実家に帰ってしまった。息子の次のお嫁選びには、その主婦は目を皿のように広げて、息子の妻を選ぶのではなく、自分の嫁 を選ぶことに専念、結局、息子のお嫁に来る人はいなかった

(501) 介護進化の位置づけ

♣ 女性は生活の世話をする役目を背負っている;それから解き放たれるのは “老齢か 要介護” になった時だけであろう。上記の百歳寿 は 「世話を受けても当然だろうが、55歳 の事例では怠けることが許されなかった―― 彼女は ‘他人の世話は自分でしたくないし、自分の世話さえ他人にしてもらいたい’ のである。そして、人間は “楽 (らく) をしたい動物” であるから、それは本能的な欲求であろう。

日本の介護保険には 「要支援 1 から 要介護 5 」 までの7段階があり、おそらく 世界一 「手厚い介護」 が提供されている。介護保険審査会では 介護希望者の選別が行われるが、国民の権利意識は高揚 し、些細なことを理由にして 重い段階の介護を求める人が多い。軽いほうから数えて 「要支援 1 と 2、および 要介護 1」 の 3段階で 介護予算の半分が消費されてしまう。

♣ 直接の比較はできないが、ドイツでは 「要介護 3 ・ 4 ・ 5」 の 3段階 しかなく、日本が如何に軽い介護に目配りをしているか が如実に表れている。したがって必要な総予算は膨大となり、初期の年間 3兆円 が去年で 10兆円 に膨れた。本人負担は 1割 で残りは 「税負担」 である。我々は 「楽 (らく) をしたい動物である」 ことを自他ともに認めるが、その 「楽」 の原資は 「税金」 であることを忘れ過ぎてはいないだろうか?

♣ 私は思う: ―― 百歳寿だから 身の回りの世話をしてもらうのは当たり前、ではナイのだ !  百歳寿 だけで 1960年 以来 去年まで なんと 550倍 に増えた . . . これは ‘おめでたい’ のか、それとも何なのか? 基本生活を自分自身でできないのなら、それは 他人迷惑でない別な方法を工夫して生きて欲しい。

♣ 戦後、とくに 15年前 に介護保険が始まって以来、老人は著しい ‘他人依存の怠け者’  になった。彼らは認知症で、怠けている自覚もないだろうが、周囲の心が 「自立」 を志していない。よく思い出して欲しい ―― 介護保険の設立趣旨2) :① 尊厳の保持、② 自立の確保、たった この二つだけなのだ ! 日本人の優しい特性として 「尊厳の保持」 は容易に確立できたが、 「自立の確保」 は 情けないほど無視され、同情心で補われている。その結果、ただ廃疾の身のまま 世界一 の長寿国であって 世界に誇れるだろうか?

♣ そもそも、生命の基本は 「親は子を育てるために死をも恐れず働くもの」 であるが、儒教の教え では ’子と親の立場が入れ替わって’ 「子は親のために死ぬほど自己犠牲」 することが要求される。だが、それは間違っている ―― 親は大事だが、命を受け継ぐ子はもっと大事である。生命の進化は 異なった環境に適応して繁栄することであり、適応できなかった過去の生命は すべて淘汰 (とうた) されている。21世紀 の今、日本の介護福祉は長足の進化を遂げてきたが、老人の数が増え 子の数が減っていく社会に 将来の繁栄 が期待できるだろうか?従来の生命の歴史では 繁栄どころか ま反対の 「衰亡・淘汰」 しか待っていてくれなかったのである。

結論: 介護保険では 「尊厳と自立」 が目標として設定されるが、「人は楽 (らく) を求め、怠けたい動物であるから よろず 介護を求めて 自立しない人が増え、 「介護オーナス」 ( = 老人重圧) が問題視される時代になった。 生命は変化した環境に対して正しい適応をすることで進化を遂げてきた。多々老・少子社会の日本が 生き残るためには 適切な環境適応 ・ 進化 によって 淘汰の路から離脱しない限り 繁栄への選択肢はないだろう。

参考: 1 ) 新谷冨士雄・弘子:「本当の介護とは」 、福祉における安全管理 #494、2015. 2) 新谷:「あすの介護と人口オーナス」、ibido : # 499, 2015.

  職員の声

声 1: 110歳 の親を 90歳 の子が介護するなんて出来る訳がないだろ? つまり、人間、ほどよく逝くのも 「社会貢献」 なのだ(係り: 「老々介護」 は 自然界には存在しないが、かと言って、無為徒食老人のお世話に子を侍らせれば 国は傾き、孫 はますます減っていく ―― 「長生きをしたい者は自立せよ ! 」 は今後の大事な課題だね)。

声2: 日本の介護は 「手厚すぎる」 から 老人は自立したくない んだよ : ドイツでは 「要介護 3 ・ 4 ・ 5 」 しかなく、しかも “現金給付” であって ‘体のお世話’ はしない って聞き、なるほどな、と思った(係り: 私の若い頃、90歳代 の婆さま は 大抵の身の回り を自分でやっていた ―― それが出来なければ、出来なくなった年頃で逝っていた)。

声3: 子は宝」 と言われるのに、’子を産まない自由’が大幅に珍重される昨今だ(係り: 昔の‘子無し夫婦’は 悲惨な老後 を送ったものだ . . . ところが今の高福祉は ‘子無し人’ にも厚い老後を約束する ―― 子が減って 日本が衰亡・淘汰 される日が近づいている)。

声4: 命を受け継ぐ子供は 親よりも大事」 、という言葉に刺激を受けた(係り: ‘親孝行 したい時には 親は無し’ ―→ 昔の親は還暦の前後に死んだので子の負担は ほぼ 無かった . . . 今は違う ‘親孝行 したくはないのに 親は居る’ 、の時代 ―→ 親は 90歳 ~ 100歳 まで生きるから 介護保険 があっても 親孝行は大変な時代 ! でも、あなたの子孫も 100歳 のあなたに孝行をする時代になったよね)。

声5: テキストに出ていた 55歳 の主婦、その歳で 「老人オーナス」 になりたいと望むなんて 狂ってる ! 95歳 まではムリだよ ! 介護保険の目的は 「自立 ! 」 だってことを勉強して欲しい係り: 老人は 自分が早めに 「自立」 したら 「楽 (らく) 」 できなくて 「損」 じゃない?今時の年寄りたちは ‘若い世代の弱者がどうなろうと 知ったこっちゃない’、その我侭 (わがまま) を通そうとする)。

声6: 介護保険では ‘依存老人と怠け者家族’ が増えた だけの印象 ; かと言って 今更 切り捨ても出来ないが、社会に 「自立の精神」 を尊ぶ気迫を求めたい(係り: 介護保険が 「自立」 を推奨する設定でないので、迷ってしまう ね)。

声7: 自分の仕事と親の介護を両立させれば アブハチ取らず ―― 介護保険は有難いが 老人が増えると子供たちは死に物狂いだ ! (係り: ’人生 50年 の半世紀前’まで 重過ぎる子の負担はなかった ―― つまり、近年の日本社会は 多々老・少子化 とともに 劣化 ・ 衰亡 してきた)。

声8: 人間社会は日々変化するものであり、一つの ‘敬老モットー’ に盲従するのではなく、変化した環境に適応して生きるべきだ(係り: これを 翻訳 すると、老人数は人口の 4 % だったものが 今や 24 % 、もうすぐ 40 % にまで増える ―― 老人数が 10倍 に増えれば、老人の自立心 が必須とされて然るべきだろう)。

声9: 介護需要の急増で日本は ピンチ 、保険以外の方法 を求めたい ―― 相互扶助 ・ 介護のポイント制 など(係り: よくよく考えてみよう ―― 介護保険の活用は ‘素晴らしい’ の一声だったが、現実の虚妄として ① : 平均寿命は延びていない 3 ) 、② : ご本人たちは ‘苦しい人生が長くなっただけで幸せは来ていない とおっしゃる 4 ) ③ : 国家予算は 3兆円 から 10兆円 に膨れ上がり 納税者は大打撃 ―― よくよく振り返って 考えてみよう . . . ヒト ・ モノ ・ カネ はどっさり掛かっているけれど、何が良くなったの? )。

参考 3) 新谷冨士雄・弘子:「平均寿命――3っの驚き 2015年、福祉における安全管理:# 496, 2015. 4) 新谷:「長生きして 幸 多かれ」、ibido : # 482, 2015.


プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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