(556) 病 (やまい) の 順番

(556) 病(やまい)の 順番
(556) 病 ( やまい ) の 順 番

人間が 「科学の目」 で、つまり “再現性のある方法で” 病気治療の手段を見つけたのは 今から 150年 ほど前の 19世紀 のことである。

♣ 19世紀 の半ば 1853年 に アメリカのペリー提督 が日本を訪れ、国内では ‘新撰組’ などの幕末騒乱が 15年間 ほど続いた。そのあいだ、国外では 1855年 に ナイチンゲールがクリミア戦争のさなかで 近代看護 の始祖となった。明治維新のその頃 、欧米で 「石炭酸」 による ‘消毒法 ’や 「エーテル」 による ‘麻酔法’ が開発され、近代医療の 曙 (あけぼの) となった。刀や銃による傷口の腐敗が細菌感染によることなど、当時の知識では まるで考えも及ばなかったし、まだ 「感染」 という言葉さえなかった時代であった。

♣ 時 熟し、19世紀 の後半には、ドイツのコッホ ・ フランスのパスツール たちが 「細菌感染」 の実態を解明し、「清潔 ・ 感染防止」 の基礎を築いた。続いて ラントスタイナーが人間の 「血液型」 を発見、輸血の道を開いた。この頃には 人類の英知の華が続いて咲き、ドイツのレントゲンが 「放射線」 を発見、1901年 には 第一回の 「ノーベル物理学賞」 を受け、現代に至るまで 最高の医療貢献 をした。私はレントゲンに 10回分 の “ノーベル賞” を差し上げても まだ足らないほどの人類恩恵だ、と思っている。


♣ その後、世界は “第一次世界大戦” で 血なまぐさい時代を迎えたが、1929年 、‘大ヒット’ 、人類の救いの主(ぬし)・ アレキサンダー・フレミング の 「ペニシリンの発見」 があり、もちろん ノーベル賞 に輝いた。振り返ってみると、わずか100年 足らずの間に 「麻酔・輸血・抗生剤」 の近代医療の三大要素が 皆 揃ったのである !

♣ これによって 「人類の寿命延長」 が始まった。 具体的には 「不治の病(やまい)= 結核の好転」 であり、人類にとって 「最大の夢」 である ’人生 50年 → 70年’ が達成された。ところが 「好事魔多し」 、今まで考えた事のなかった事態が発生したのである !

♣ 大学病院では、ふつう 100床 のベットにつき、たった 1~2床の 「糖尿病患者」 しか居なかったのだが、みるみる 10床~20床 に増え、入院患者ゼロであった高血圧患者がベットを占めるようになり、中には 「痛風 (つうふう) 持ち」 さえ加わり始め、明らかに 社会背景 が変わったのである。当時 まだ薬の無かった糖尿病と高血圧の対策が急ピッチで進んでいるうちに、なんと次の難問が発生した ―― 日本の平均寿命が 70歳 を越えた頃の 患者の多発 である。

病 (やまい)の順番

♣ 癌多発の原因が 「環境の変化?食生活?それとも?」 と検討しているうちに、ハタと 人類高齢化の問題 に思い当たった ! つまり、諸疾患に共通して言えることは 「高齢化」 だったのだ。従来の “人生 50年 ” なら、結核が主な死因であり、糖尿病や高血圧は 年齢が進んだ 少ない人の 「贅沢病」 であった。また人生が短かった時代なら、「癌年齢」 に届く高齢老人も少なかった ―― は 癌死亡のピーク年齢 が 75歳 であることを如実に示し、癌は 「高齢者の生活習慣病」 と定義しても不思議でなかったのだ。

♣ 結核は結核菌の 「感染症」 であり、糖尿病・高血圧・癌 などは 「高齢者病」 であったが、両群は病気として基本的に別種の種類の病気である。つまり、社会背景が変われば、疾患の種類までも変わってくることが判明する。ここで当然 次に訪れる病気は何なのか、を予想しなければなるまい。つまり、平均年齢が 50歳 → 7 0歳 に増えて 「癌」 が加わって来たのだから、さらに 高齢 70歳 → 90歳 になれば、どんな病気が増えるのだ?、が問題になる。

♣ 実際、新しい病気の ‘お目見え’ が 1973年 の小説 「恍惚の人」 で華々しく デビューした のである ! それは 「痴呆」 つまり 「認知症」 の出現であった。同じ 1973年 には 「老人医療の無料化」 が実施され、病院の待合室は デパート開店時のように 老人で溢れ返る ’珍現象’ が起こった。

♣ 「痴呆」 は 2004年 に 「認知症」 と改名されたが、その原因は いまだに特定されていず、とにかく 「高齢であることが ほぼ必須の条件」だ。それどころか、その発生率は 85歳 で 50% 、100歳 で 90% 、さらに 110歳 ならば 全員 が認知症と推計されている。つまり、認知症は 高齢になれば ほぼ ‘避けることのできない’ 「天寿のやまい」 である。“天寿とは?” ―― 日本女性の 86歳 は人類 初の 最高の平均寿命 であり、これぞ 「天寿」 と呼ぶにふさわしいのではないか?

♣ つまり、こう言うことだ: ―― 病気の時代背景は 永く 「栄養失調・事故・感染症」 であったが、平均年齢が増すにつれ 第一に糖尿病・高血圧に始まり、二番目は 癌など ‘年齢依存性’ の 「生活習慣病」 に広がり、三番目には ‘生命現象の満期’ を暗示する 「脳萎縮 = 認知症」 で人生の終点に達っする ’三つの背景順’で進んだことが 納得される。人間が 平均寿命 = 86歳 を越えて生きるチャンスは 少ないから、この廃用症候群 である 「認知症」 は 病気としては 最終の順番に来た 人生の宿命なのではないだろうか? それゆえ、認知症に対応する 「老人介護」 は、“医療・看護” を越えた 人類に対する 「最期のサービス業務」 であると位置づけられる、と思う。これ以上 思い悩むモノは もう 無いのである ! 2019字 

 結論:   人類が悩まされた病気は、歴史背景に並べると; 外傷・栄養失調・感染症 であった。 この150年の間に、医療の 「三大要素 = 麻酔・輸血・抗生剤」 が揃い、病気の “外因” は退治されたかに見えた。 外因が消えたら、“内因” が優勢となる:―― つまり、結核 → 生活習慣病 → 癌 、そして最終的には 「認知症」 が人生の最期を飾る悩みとなった。 年齢的に、これを越える 新しい 順番を持つ病気 は もう ナイ ! 老人介護は 人類に対する 「最期のサービス業務」 となった。

職員の声

声1: 新年早々 歴史の勉強だった: 病気の 「外因・内因」 に絡む老人の問題は全世界の問題だと感じた(係り: エス様の 2000年前 、世界人口は 1億人 … 死の外因たる 戦争 ・ 飢饉 ・ 感染症 の歴史を通り越して 今や 人口は 70億人 に膨れ上がった ―― 人類は死の外因を征服し、内因である 「老化」 まで乗り越えようとしている … 人口が増えすぎたら地球が滅びるから、増えた老人の数だけ 赤ちゃんを減らすべきだ との論議もあり、今後 人類はどこに向かうべきか?

声2: 私は、レントゲンが人物の名前であり 1901年 の 第一回 ノーベル賞 を貰った人だなんて 全然 知らなかった(係り: 医療関係で 一人の有名人の名前を挙げよ、と言われれば 「レントゲン」 と答えるだろう … それほど彼は人類に対する功績が大きい)。

声3: 病気は “治る” ものではなく、“軽減するもの” と変わった(係り: 治るものは皆 治り、治らぬ 「歳」 だけが残る世になった)。

声4: 昔は 「外因病」 が、そして今は 「内因病」 が卓越しているが、その頂点にある 天寿病 = 「認知症」 には 誰も勝てない(係り: 時間を逆行させることはできない … 寿命の終点状態を 「病(やまい) 」と呼ぶのは間違いではないか?)。

声5: 延命医療は消え、天寿 お看取りケア が栄えてくる(係り: 大脳が働く正常な人間は 天寿を怖がる ―― 大脳の働きが限られている 「認知症」 または 一般動物 は 天寿を知らず 怖がりもしない)。

声6: 我が家の近くに結核病院があったが 今は 「特養」 に変身した … 昔 結核 ・ 今 認知症、どちらも治らない(係り: 結核の平均年齢は 25歳 vs 認知症の年齢は 90歳 … 単純比較はできないよ ! )。

声7: ガンや認知症の人は “十分 長生きした” ことになるのか?(係り: もちろんの事だ ! だって 江戸 ・ 明治時代 の平均年齢は 35歳程度 、大富豪 だけが ガンや認知症になれるほど 長生き出来たのだ)。

声8: 誤嚥性肺炎も 人生 50年 の時代には無かったのか?(係り: 無かった ! その病名さえ 介護保険時代になって 有名になったほどだ ! )。

声9: パールで ターミナル・ケア が行われる 「歴史的背景」 が理解できた;人生の最期は 「廃用症候群」 へまで導くのが穏当であることも 了解できた(係り: キリストは 十字架 の上で亡くなったが、佛 (ほとけ) は 静かに目をつぶって 「涅槃」 (ねはん) を迎えられた ―― 我々は 佛の道を選ぶ)。

プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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