(573) 70 歳 の 壁

   (573) 70歳 の 壁

縄文以前の時代、人は 20歳 までの寿命があれば 種族の断続は免れた という。数万年前の ネアンデルタール人 は、化石の歯の調査によると、15歳 頃に子を産み、30歳 頃には世代交代をしていたようだ 1 ) 。未開の環境下では 人類の寿命が 20歳 ~ 30歳 が普通であったと理解されている。

♣ ところが 中世から近年にかけて、人々の寿命は延長され、更に 今年は国内で 100歳寿 の方々が 6万人 を越えるような新時代が訪れる時代となった。私たちは 今や 長生きを当然とみなすに留まらず、今後も 更なる延寿が期待されると思っている 2 ) 。そこで 人類の過去から現在に至る 「命の足どり」 をたどりながら、将来を展望してみよう
70歳の壁

① 世界の過去 
上左図は 16世紀 以降の世界平均寿命の経過を示す(上から、西欧・ 米・ アジア・ アフリカ)。不思議なことに 19世紀 半ばまでは寿命は 35歳 レベル、以後 直線状に 80歳 に向かって上昇している(アフリカはやや下)。右上図は各国の細かい事情を示すもので、いずれの国でも、20世紀 初頭に 寿命は 40歳代 であったものが、現在の 80歳 に向かって上昇している。   ◎ ☛ 20世紀 に何があったのか? 
100年 まえの寿命:――
     英: 50歳、米・仏: 47歳、
     日: 44歳、印: 24歳
   世界: 31歳

70歳の壁

② 日本の過去
  寿命は ゆっくりながら人口とともに 増えている:鎌倉(25歳)、江戸(30歳)、明治(35歳)、大正(40歳)、昭和(50歳)、☛ 平成 いきなり(86歳 !!! )。

   ☞ 蝋燭の灯下で出来る介護は限定的..... 電燈なくして介護 なし。
   ☞ 点滴の始まりは 大正天皇(1926年)....救命、延命の始まり。
   ☞ 終戦のあと「真の老後生活」あり .....  更年期後の暮らし。

“人口”は江戸時代に 三千万 に、明治維新以後 爆発 ! 2007年 に頂点に到達、以後は 昔に戻る? 寿命の延長は 「社会の安定」 とともに起こり、それに連れて “人口” も増えた。現在は 「最大寿命 ・ 最大人口」 だ。

③ 寿命が延びた社会背景  
寿命の延長は 戦後 短期に30歳以上も延びた。その説明は多面的になされている ――平和・インフラの整備・ 栄養・ 医療・ 介護など。寿命の延伸を促した社会背景のいくつかを紹介・ 説明する:―― イ: (1950年)洗髪は月に 1~2回、 ロ: (1955年)三種 の神器で主婦は楽 ―― 洗濯・ 掃除・ 冷蔵庫、 ハ: (1960年)老人の失禁は “ゴム合羽の上で” ; 神田川を “糞尿船” が通る;点 滴の普及、 ニ: (1965年) 水洗トイレ・ 内風呂; 室内暖房の普及; お湯のシャワーで洗髪、 ホ: (1970年)冷房のはしり、 へ: (1973年)老人医療はタ ダ 、 ト: (1980年)肩のフケ無しね ! チ: (1985年)朝シャン、 リ: (1990年)胃瘻 のはしり、 ヌ: (2000年)介護保険、 ル: (2005年)紙オムツの使用・・・たった 10年 前だ !
70歳の壁

 ♣ ④ 70歳の壁   
 上図は 日本男性の年齢別人口を示す。人口は 70歳 以後 直線状に 約 30年後に ゼロ に近づく(毎年 ほぼ 3.3 % ずつ逝く)。若い年齢層の人口は 一般に ‘社会状況の違い’ によって 多少増減のバラつきがあるが、70歳 を越えると、下図に示す 九つ の国でも、直線状に人口減少する 共通性 が見られる。このことから、先進国での寿命は 70歳 前後までは保障され(共産圏では 50歳 頃まで)、これは人類に広く共通な 遺伝子の性質であろうことが推定される。つまり、ヒトは “70歳の壁” を越えれば、ランダムに 毎年 ほぼ 3.3 %ずつ 世を去る寿命を持つ動物であろう。
70歳の壁

 ♣  以上、「命の足どり」 を概観すると、人の寿命は “野生” の環境であれば 20~30歳 前後、“文明・ 文化” の開花により 50歳 の更年期まで延び、“福祉” の進歩により 70歳 の壁まで延長されることが推測された。 この年齢以後 人は ランダムに毎年 3.3 % ずつ世を去る。しかし、各国ごとの “福祉事情” によって 60歳のー、50歳のー、40歳のー、というように「壁の位置」は低くなるようであり、現状では 70歳の壁が一番高い。
  
要約: 古代 ~ 中世までの平均寿命は 30歳 程度であったが、文明・ 文化の開花により寿命は漸増した。 戦後には著名な寿命の延伸があり、社会環境の好転との良い相関が見られた。近年、人は 働かずして長寿は保障される 3) 、そこにも ‘70 歳の壁’ が存在する。 “不老不死” という モットー は ’クラゲの 分身増殖’ に戻る方法 しかなく 4 ) 、ヒトは 「歴史的 最大寿命 = 122歳」 を 誇りをもって受け止めるべきである。
 
   参考: 1) Rachel Caspari: The Evolution of Grandparents; Scientific American, August 24~29, 2011. 2) 新谷:「不老長寿」、福祉における安全管理 # 492, 2014. 3)   新谷、「寿命延長はどこまで続くか?」、ibido # 516, 2015. 4 ) 新谷:「130歳を目指す人のために」; ibido # 575, 2016.

職員の声

声1: 今後も寿命は延びてくるだろうが、様々の問題が発生するかな?(係り: なかんずく、養老担当の現役層は青息吐息という問題があるが、老人たちは、寿命がどんなに延びても “幸せ という自覚” は決して持たないのが常である)。

声2: 医療と福祉で “生かされている寿命” は 幸せではないのか?(係り: ご自分の目で 実態をよく観察せよ ! 大抵の老人は “幸せ” よりも “長生き” のほうを はるかに 優先する … 特に老人の家族は)。

声3: 延びる寿命が ‘病気寿命’ でなく 「健康寿命」 であって欲しい(係り: その人を 客観的に しっかり みつめて見よ ―― 心身の健全な能力は 90歳 が限度だと思わないか? … 人間、限度年齢 を越えれば その人の生理は 必ず 衰えて いくーー超高齢で 病気寿命でない老人は きわめて稀 ! )。

声4: 老人の寿命は延びるけれど、赤ちゃんの数は減っていく … 両方の数が増えた 前例 はナイ ! (係り: 現在 生存している人の利益が 最優先されて 人は長生きになる … 赤ちゃんのために 自己の長生きを犠牲にする老人はいない ... これは 人類に共通な宿命 だ)。

声5: 寿命が延びた裏にある 「社会環境もろもろ」 を知れば、各時代を “駆け足” で覗いた気分になる(係り: 平安時代 から 昭和 までの千年を “平成 一時代“ だけで走ったように思える)。

声6: 長寿の美点をどう活かすか?(係り:昔の長寿 ―― 還暦 (60歳) や古希 (70歳) は “物識り” として社会に役立ったが、今の長寿・ 認知症は キリギリス)。

声7: 今 70歳 の人は 世にありふれているが、自分の両親が 70歳 を越え、体力・ 能力が衰えてきたのを見ると 「なるほど 70歳 は壁 ! 」 と感じる(係り: 確かに今どきの 70歳 は 「古希」 (古代より稀なり) とは言えないが、この歳 以後 毎年 3.3 % ずつの人たちが 規則的に 間引かれて逝く … 人間は 70歳で 種(しゅ)としての天寿に達した訳だ)。

声8: 先進各国の人口ピラミッド図 を よく見ると、70歳 以降の人口は 100歳 に向かって キレイな直線となって低下している … 例外はナイ ! (係り: 個人的な バラツキ は当然あるが、こう言えるだろう:―― ヒトという動物種 は 70歳 が天寿であって、以後 毎年 3.3 % ずつ ランダムに間引かれて行く、… 不老不死願望なんて とんでもない ! 現実は 最大寿命 といえども 122歳 が限度なのだ、と)。

声9: もし 70歳 から 3.3 % ずつ間引かれなかったら 全世界の社会状況はどうなるだろうか?(係り: 人口ピラミッド図から想像すれば、人々は平均 100歳 まで長生きして、世界は “働かない老人” で溢れ返るだろう … 増えた老人のぶんだけ ‘赤ちゃんの数’ は減り、お目出度 も一服(いっぷく)となるだろう)。

プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR