(580) 人は助かり、国が亡びる?

  
(580) 人は助かり、国が滅びる? 

  (1)  水素水: このところ、テレビの広告などで見かけることが増えた 「水素水」 。

♣ これは、「水素がたくさん溶け込んだ水」 のことで、それが 美容・ 健康に効くという。水素の元素数は人体の 60 % を占めているが、そのことを知った上で そう言うのか? 水の中に 「酸素」 が溶けていることは 皆さん よくご存じだ … 海の魚は水中の酸素で呼吸をしている。ならば 「水素」 が人体の中に溶け込んで何をするのか? 物理的、医学的な詳細は 分かっていない。まあ、水素水は 珍しがり屋の “小遣い泥棒” くらいのもので、これによって 社会が滅びるような影響はないだろう。
人は助かり、国が滅ぶ?

(2) 救急車: パールのショートステイをご利用の 91 歳 の男性 (要介護 1 )、「苦しい、痛い、トイレが近い . . . 」 が主訴で、ご家族が疲れ果て、家族の疲労回復が目的で ショートステイを ご利用だった。入所時 同伴のご家族が自宅へ帰られた直後から、ナースコール を押しっぱなし、同じ訴えを 5 分 おき; 私たちは 心配して ご家族に 様子を 携帯で お伝えしたら 「すぐ連れて帰ります」 とのお返事; 氏は 2ヶ月 の間に ご家庭からの救急車搬送が 20 回 に及んでいた、とのこと (経費 約 100万円 )。そこで私たちはご家族に適切な病院を紹介し、移って頂いた。ご家族と救急車隊のご心労は察して余りあった。

(3) ドクターヘリ: ある 90 代 のご婦人、今年の 2月、俄かに苦しくなって 「ドクターヘリ」 を要請された。これに対して ある作家が反論; その趣旨は 「高齢者救助の建前とは言え 社会資源を食い荒らす 利己的な寄生虫 ! 」 というものであった。なるほど救急隊の利用は ‘無料’ だが、出動経費は 救急車で 5 万 円程度、ヘリコプターなら 100 万円 程度かかる。いくら “命は地球より重い” と言う 日本 であっても、「身の程」 を知って欲しい、という思いのコメントだったようだ。この例も、前掲の 91 歳 の男性の例も、認知症老人の勝手な 妄想 に 社会が踊らされたのである ―― でもこの程度の打撃なら 社会が 転覆 されるほどの事件では ないだろう。

人は助かり、国が滅びる?

(4) オプジーボ: 2 年 まえから発売されている ‘オプジーボ’ は高度に有用な ‘抗癌薬’ であり、少数の 「黒色腫」 だけを対象としていたが、肺癌 にも効くらしく、利用者数が著しく増えた。問題は 「薬価」 であり、お一人一年分 が 3,500 万円 かかるという。個人負担は 3 % であり、大部分は 国家予算、今の予想では年間 2 兆円 が必要となる。もし 癌患者の寿命を 一年 延ばすために この経費が掛かるとなれば、オプジーボの 恩恵と打撃 は国を滅ぼすかも知れない。なるほど “命は金で買えないほど 尊い” のかも知れないが、この薬が広がれば 国は 窮乏 に追い込まれるだろう。

(5) 認知症: 社会の最大の矛盾は “無病長寿” の願望であり、その根本を 認知症 が揺るがす。認知症は、10 年 前までは 「年寄りボケ」 と呼ばれていたが、これは 「長生きが原因の病」 であって、初老期には ほとんど無く、65 歳 頃から現れ始め、85 歳 で人口の 約半数 が、100 歳 で 8 割 が発症する 1 ) 。その罹患数は現在 400 万人、近いうちに 800 万人へ、そして 更に多く の老人が認知症になると予想されている。要介護 5 の認知症老人 お一人のケアにかかる介護費は 一年で約 500 万円。命は ”お金で買えない” と言われるけれど、介護保険の趣旨通りのケアに専念すれば、先行きの 年間コスト は日本全体で 15 兆円を超える。老人の 「延命」 を尊重すれば、経費の重さに打ちひしがれて 国は やがて滅びるのではないかと囁かれる。

矛盾: 病気がないことは 誰しもが望むことであるが、その望みの達成には、上記のように莫大な 公金 が掛かる。長生きについて考えれば、そもそも “生命” とは、子孫が確保されたところで “世代は交代する仕組み” の生物である。人間だけが 知恵の発達により、近年になって 更年期 (50 歳) では死なず、その 2 倍程度 の延命 が出来るようになった。が、延命 してみると、‘認知症の発生’ という 予期 しない障害 が現れた。

♣ つまり、「無病」 も 「長寿」 も、タダで得られるものではなく、それを希求 (ききゅう) するためには、従来 不必要であった 莫大な ‘延命支出’ が必要になる。それは 単に 「敬老経費」 として片付けられる額を遥かに超える勢いになって来た。

解決: 日本の社会福祉は、「人口ピラミッド」 の 『屈折年齢 2 ) の見地から見ると、無敵のスエーデンに匹敵 しているので、これ以上の ‘福祉欲張り’は考えなくてもよいだろう。だとすれば、行く道は “ただ一つ ! ” ―― 「無病」 にこだわらず、またこれ以上の 「長寿」 にもこだわらないことである。人間は所詮 ‘動物の一種’ に過ぎず、世代交代をうまく済ませたら、程よいところで 幸せな一生に “美しい終止符” を付けることが大事なのである。みんな、国が滅びないことを 真面目に 考えるべきではないか? 「もうちょっと … あと少し … 」 は終わりのない 心労 につながるのだと結論される。1994字

要約    水素水であれ 病気であれ、人が 「 助かる 」 ことは幸せである。   しかし 「 助 ける 」 ときには 「”建て前”と”本音”」 の両方をみつめてみよう: ―― 本文の 「抗癌薬や認知症」 への対応は “建前” だけで進めば いずれ ”本音のコスト倒れ” になる事を教える。   上を向いても キリ がない: ―― 病気や長寿に過剰なこだわりをもたず、有限の人生に “美しい終止符を打つ” ことも また 大事な仕事ではないか。

参考: 1 ) Robert Epstein: “Brutal Truths About the Aging Brain, Discover October: 48, 2012 2 ) 新谷:「屈折年齢」; 福祉の安全管理 # 579, 2016.

職員の声

声1: 私の母は 以前 「マイナスイオン水」 に凝っていたが、今は 「水素水」 を通販で買っている … 多くの人は 長生きしたいと思うのだろうが、「そして何をするの?」 と訊ねたら、たいてい ‘答えがない’ (係り: この現実こそが 商人の出番である ! )。

声2: 救急車の一回出動には 5 万円 ほど掛かるが、続けて 20 回 も使えば 社会に 100 万円 の支出だ、“迷惑料” を請求したらどうか?(係り: この程度なら、国は滅ぶことはないが 区役所なら ‘へこむ’ ね)。

声3: ドクターヘリ の出番に 一回 100 万円 も掛かるなんて知らなかった(係り: 国の広いアメリカでは 500 万円 くらいを私費で請求されるとのこと)。

声4: 救急援助には 「トリアージュ」 というのがあって、「黒・ 赤・ 黄・ 青」 の色分けで対応する … 3,500 万円 もする薬の適応についても トリアージュ の方法を用いたらどうか?(係り: 薬を求める患者は ‘我にこそ薬をよこせ ! ’ と争うだろうが、確かに トリアージュ は良い解決法だ ーー ただし、癌の余命は ’救急’ とは言えないが)。

声5: 一日の薬代が 10 万円 は高すぎる … 誰が儲けているのか?(係り: スイス や アメリカで、“金に糸目を付けず に” 開発する薬 … へたに ”有る” から ウラメシイ ! 無きゃ無いで 自分の運命に従うものなのに ! )。

声6: 介護保険だって ‘要介護 5 ’ なら一年 500 万円 、しかも すでに 17 年 サービスを受けていると 8,500 万円 の経費 ! 政治家はこの事実を知っているのか?(係り: 無為 ・ 無収入の老人が この国家負担で 17 年分 の寿命を手に入れた訳だ、Good luck !)。

声7: 認知症の人は 自分が長寿 なのを理解できていない … 周囲の人が金を掛けて長寿にしているが、それで 国は滅びないのか?(係り: 福祉費の 70 % は老人向け、4 % だけが子供向け … このままでは老人が栄えて子供が滅びる ―― 若い政治家は頑張る必要がある ! )。

声8: 「屈折年齢」 2 ) の観点から見ると、日本とスエーデン の福祉レベルは 同等 であり、人は 「幸せな一生を迎えて 美しい終止符を打つ」 ことが出来るだろう(係り: 福祉と言えども サービスのレベルは有限だ … 美しく 高い位置の終点であれば 満足ではないか)。

声9: 「長生きって するもんじゃないわネ」 と老人たちは よく語るが、じゃ、本人たちは “生きたい” という気持ちが 有るのか 無いのか? 「終活」 は “世代交代” の意味なのだろうが、「美しい終止符」 とは 自分の思った最期が迎えられた証(あかし)なのに違いない(係り: 人も国も 栄えてあれ ! )。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

最新記事
全ての記事一覧
月別アーカイブ
カテゴリ
リンク
QRコード
QR