(593) 馬齢(ばれい) と 福祉

(593) 馬齢(ばれい)と福祉 
    
馬齢とは「馬の年齢」の事を言うが、ここでは まず先に、図-1: 百年前の ‘人口ピラミッド!’ と 図-2 : 「人の年齢と就業率: 2010 年 」を見て頂く。以後、皆さん方は図を見つつ、私の話を耳で聞きながら、ゆっくりと 事実を指先でなどって下さい。
馬齢(ばれい)と福祉
図 1 の百年前の 65 歳 以上の人口を現在のものと見比べると、男の人口は 1/10 以下、女は 1/15 以下であって、これなら百年前には “老人問題” は存在しないも同然である ! 現在の人口状態はしばしば「少子高齢社会」と言われ、“少子” と “高齢” が同等であるかの如き印象を与える。しかし、正しくは 「多々々老・ 少子」 なのであり、問題の焦点が “老年人口の増多” である点をぼやかしてはいけない !

♣ 次に 図-2 に移る。 ①: 全体像――この図は「人口ピラミッド」であって、横軸が人口数、縦軸が年齢を示し、図の左半分は男の、右半分は女のデータである。40 歳 頃と 65 歳 頃の人口が多いのは「団塊世代の親子」を示す。 65 歳 を過ぎで 100 歳 に向かって人口はほぼ直線的に減って行く … 65 歳 以下は 男女対称的だが、65 歳 以上では、女性の人口は膨れ上がっている。

② 男性―― “就業者” は 15 歳 から増え始め、65 歳 でガクンと半減、以後 細々と 90 歳 まで続く。次に “その他” を見ると(この領域は ‘失業者・ 傷病者・ ニート・ 引退者等を含む1 ) )それは少数ながら 15 歳 から始まり 65 歳 まで増減なく続き、その内容は主に「傷病者とニート」である。
馬齢(ばれい)と福祉
♣ しかし 65 歳 から急増して 100 歳 に至るまでの 増えている部分は、主に「引退者+認知症」が主体であろう―― 65 歳 を越えれば「ニート」とは呼ぶことはできない。その上、その人口の後半は「認知症」が増え、この部分こそが「老人問題」の焦点、すなわち「馬齢」を構成する 2 )

♣ ③ 女性―― “就業者” の特徴は男性とほぼ同じだが、団塊 2 世代 とも 就業者が ナゼか少ない。“家事” は女性の独断場であり、20 歳 以後 90 歳 まで続く。ここで驚くことに、65 歳 以後、“家事”に従事する女性よりも “その他” のほうが多い、つまり「隠退者」の中に 「認知症= 馬齢」 が増えたことを物語る。しかも 女性の場合、80 歳 を越えて更に著しい。

♣ ④ 男女比較――65 歳 以下では、女性の家事従事者以外 男女差は殆どない。しかし 65 歳 を越えると、女性は仕事と家事を男性と同じようにこなすが、反面 “その他” の「馬齢」も増えている。寿命が男性より長いので、馬齢の多さが目立つ。

⑤ 総括―― (イ) 人間は全年齢を通して “ニート” が一定の比率で存在する;(ロ) この「ニート」は 65 歳 を過ぎると “就業者” よりも遥かに多く、その一部は馬齢であり、85 歳 を越えれば “認知症” が増え、これは女性で更に顕著となる。要するに、図 1~2 を比べて分かるように、無為・無労の老人が著しく増えてくる。

♣ ここで表題の「馬齢」に戻る。馬は 4 歳 で ‘おとな’ となり、10 歳 まで「使役・ 競馬」等の役目を担ったあと、現役を終了する。ところが馬の最大寿命は 60 歳 近い ! と言うことは、隠退の 10 歳 から 60 歳 までの 50 年間 を何して過ごすのか? 初めのうちは「乗馬」などの お役目はあるものの、とても 50 年間 全部は過ごせず、御用の無い日々を暮らすことになる。

♣ 私は子供の頃、“荷馬車” の後ろによく乗せて貰ったが、見ていると私の目の前で、馬は歩きながら拳(こぶし)大のウンコをポタポタ数個落とす。近所の人たちは大喜びで 箒 (ほうき)と塵取りを持って 道路に落ちたウンコを掃除し、自分ちの庭に撒いて肥料にする。また人の場合は、オシッコをコップに何杯、と数えられるが、馬の場合は ‘バケツ‘ に一杯ほども出る。舗装してない道路だから、これはそのまま道路にしみこませるしかない。餌もやはりバケツ一杯ほども食べる。

♣ 馬小屋は 10 畳 ほどの広さで藁(わら)を敷いておき、毎日の糞尿とともにお掃除する。こういう訳で、衛生・ 食糧 を維持しながら、引退後の馬を 50 年 も飼育するのは難しくなる。そこで現役を過ぎた馬の年齢を「馬齢」と呼んで、特定の仕事をしない動物として飼育される。ここから「馬齢を重ねる」という言葉が生まれ、“故事ことわざ辞典” で書かれているように、「世に認められるような仕事もせず、いたずらに年だけを取る “穀つぶし” 」という意味になる。

♣ さて問題は、図-2である。ナゼ就業者は 65 歳を境にしてこんなにも減るのだろう?それは 10 歳馬の「定年」という社会習慣によるものだ。しかし、「馬」の定年は 10 歳 、馬でもない私たちは ナゼ馬に真似て、現役終了を 60 ~ 65 歳 に決めたのか?このままでは定年を越えた人は あたかも「馬齢を重ねる穀潰し」となる。

♣ 実社会では更年期以後であって社会的活躍を伸ばしている人々は多数あり、政治家・ 実業家・ 学者・ 芸能人など 世をリードする人々も少なくない。大事なことは、社会がそれぞれの個人の分に応じた仕事を与え、社会貢献ができるようにすることであろう。図―2 で見られる、高齢者の馬齢の領域を少しでも小さくする社会努力が「本人たちの生き甲斐」にも有意義なことになる。「福祉の出番」は、このように努力する馬齢老人の助っ人をすることではないか。

要約:  百年前 の老人数は極めて僅少であって、老人問題は実質的に存在しなかった。 現在、男性では 65 歳 を境に就業者が激減し、“無職者” が激増する: 女性でも同じ傾向であり “無職者” はさらに超高齢まで続く。 現役終了で無為の状態を馬でたとえると「馬齢」であり、“無職” の内容は「する仕事を捜さない、または老年性認知症」のようである。 無為・無労の生活をする人たちに仕事を配り、社会交流に参加してもらえば、社会も活気づくし本人たちの “生き甲斐” にも有益な結果が得られるだろう。

参考: 1 ) ニート = NEET= Not in Employment, Education or Training;雇用・ 学業・ 職業訓練を受けようとしない者; ひき篭もり。 2 ) 新谷:「在宅亭主は馬齢(ばれい)か?;福祉の安全管理 # 353, 2012.

職員の声

声1:  馬の寿命は 60 年、しかしその現役時代は 10 歳 程度で、退役後が 50 年 もあり、人間の定年後の有様と重なるムードがある …「馬齢」という用語に納得した(答: “馬齢” とはキツイ表現だが、“穀つぶし” にならないように自分の存在を主張したい)。

声2: 本文の人口ピラミッド図はとても分かりやすい … 15 歳 以上 100 歳 まで、職を持たない人がこんなに多いとは知らなかった(答: 助けつ 助けられつ、と言うのが社会の在り方 … しかし、アクセルを踏みながら、同時にブレーキも踏むのなら、エンジンは痛んでしまうね)。

声3: 私は当然 65 歳まで働くが、その後 何歳まで働く体力があるだろうか?(答: 人間、85歳まではキチンと働けるハズ。ただし、残念なことに、平均 85 歳で半数の人たちが認知症になり 働けなくなるという … つまり、その齢頃までは働くべきだろう)。

声4: 働かない 高齢者がどんどん増えて行くし、自分の将来を含めて意識を高める必要がある(答: 単純に考えれば、20 歳から 40 年間 働き、隠退した後の 4 0 年を無為・無労で暮し 100 歳 まで生きる。だとすれば、 20 歳以後の給料の半分近くを、自分の老後のために貯蓄しておくべきだろう――もし それができないと言うなら、60 年働いた後、馬齢 20 年を細々と生きるしかない。ハナから老後福祉に依存したら、みんなが不幸になるよ)。 
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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