(619) 百 歳 の 壁

  ちかぢか平均寿命は 100 歳 にまで増える、と聞くが1 ) 、いったいいつの事になるだろう? 確認しておきたいが、平均100歳ということは、90歳と110歳の平均が100歳ということであり、単なる100歳お一人とは大違いなのである ! でも多くのご家族も 「… なんとか うちの母を 三桁 にしてください … お願いです」、とおっしゃる。

♣ それほど 三桁 (100 歳) は魅力的なのであろう。現状で言えば、男女合わせた概算は日本の 総人口=約 1.3 億人、100 歳 = 約 2 万人 であるから その比率は 0.0002 % (人口 5 万人 につき 100 歳 は 1 人 )となる。100 歳 以上の総計は 6 万人 で、毎年少しずつ増えている。今日は、100 歳 の壁が人口的にどんな意味を持つものかを三つのアプローチで概観する。

① 各年代の人口分布図 1):――簡便のために図は男性のみを示す(女性も 70 歳 以降はほぼ同じ)。

百歳の壁

上図: 1920 年  (大正 9 年)
 人口: 5千 600 万人
 人口は 10 歳以降、85 歳に向かって直線的に減少する
  屈折年齢 = 10 歳

下図: 2015 年  (平成 27 年)
 人口:1億 3千 万人
 人口は 70 歳以降、100 歳 に向かって直線的に減少 
  屈折年齢 = 70 歳

♣ 上下の図は時代が約 1 世紀 離れており、人口は 2.3 倍 に増えた。上図では 0 歳児 が 産まれたあと、ただちに 多数が死亡、10 歳 あたりで右下方に折れ曲がり、以降は 85 歳 に向かってほぼ直線的に減少する。したがって、屈折年齢 2 ) 10 歳 で、典型的な古典型の人口パターンである。65 歳 以上の老人部分は極めて僅かなことを観察すること。

♣ 下図では、出生直後の児 が上図の半数に近いが、続いて右に向かい増大する二た瘤が特徴的 (団塊世代の親子)。70 歳 前後の窪みは終戦前後の混乱を表す。そこ以後は右下方に折れ曲がり 100 歳 に向かって直線的に減衰、つまり屈折年齢 2 ) 70 歳 である。上下の図で ”赤い老人部分の驚異な差” を観察することーーこここそが現代の最大の問題点なのである !

♣ → 上下の図を比較して異なる点は、()子供層の数はあまり違わない、()年齢に沿って人口が減り始める点= 屈折年齢は上図で 10 歳、下図で 70 歳、()老人の数は驚異の差 !()老人層の終点が上の図(= 85 歳)、下の図(= 100 歳)。屈折年齢 という現象はどの国にも必ず観察され、日本やスエーデンは 70 歳、トルコは 40 歳、アフリカは 0 歳など、各国の福祉状況によって異なる 2 )

② 64 歳以上の高齢者部分図 2):――各柱の上の数値はその年代の人口を示す(単位:千人)。この図で読めること:-- (a) 64・ 65 歳 の約 220 万人 は日本最高値であり、その右側に終戦前後の揺れがある。
百歳の壁

(b) 70 歳 あたり以後は加齢と共にほぼ直線的に減少して 100 歳 に至る。つまり 30 年間 で 70 歳 の人口がゼロになるので、人口は毎年 70 歳の 3.3 % ずつ減少する。このパターンは日本の他に 北欧 4か国・ フランス だけであり、他の国の屈折年齢はより低い値に分布 する 2 )

(c) NHKは、30 年後 の日本は平均寿命が 100 歳 になると推定 した 1 ) ;つまり上の図で言うと、今の男子平均寿命 80 歳 の位置が図の右方向 100 歳 の位置までへ移動することになる。すると、今の100 歳人口 も20年分ほど右へ押され、移動先で 120 歳 は 大人口となるだろう。フランス女性カルマンさんは 122 歳 だったが、142 歳 の女性 も現れ、世界は 「超々々高齢者」で混雑してくるだろう。

③ 加齢の困難度を最後に示す。 図 2 の柱の上に記載されている数値同志の割り算から、その困難度を推定してみよう。70 歳人口 を 8 0歳人口 で割れば 約1.5、80 歳人口 を 90歳人口 で割れば約 3 …のように演算すれば 図 3 が得られる。つまり 70 歳 が 80 歳 になるときの困難度は 1.5 倍 に増え、80 歳 が 90 歳 になるときは 3 倍 に、90 歳 が 100 歳 になるときは 17 倍 に増える (17 人 の 90 歳 のうち 1 人しか 100歳 になれない)。同じ 10 年 ほど長生きするのに 100 歳 の手前には巨大な「17 倍 という壁」 が見えるだろう ――現代人 は 90 歳 になるまでは なんとか順調に行くが、100 歳 の手前には大きな壁があるのだ。
百歳の壁
♣ ちなみに、特養パールに入所している近年の利用者数の年代別比率をみると:--60 代(0 %)、70 代(8 %)、80 代(54 %)、90 代(36 %)、100代 (2 %)… つまり、80 代 が一番多く、 その代 を乗り越えられた人の多くは99 歳 まで進むが、ナゼか 100 歳の手前で ガクンと減り、「百歳の壁」 という描写は現場の印象をよく反映している。

♣ もし 100 歳 を越えたらどうなるか?以前にも述べたが、100 歳代 とは 「耳に優しい」けれど、実質的な生存上限は 「105 歳」で大部分が終わってしま い、統計的な分析はできない 3 )

♣ すなわち、上記の年齢の所見 ①・②・③ から見て、平均的な人間というもの は 「50 歳 で更年期・ 70 歳 で屈折年齢 そして 100 歳 で生存の壁」という 三ッの臨界年齢 を持っていることが分かる。つまり、人々は屈折年齢の 70 歳 を越えれば 医療・福祉のケアがあろうとも、毎年 3.3 % ずつは逝く、という天命を避けられないようだ。このことは 医療・ 福祉家が活動する際の大事な心得となるのではないか。 

要約:  百年前と今の老人数を目視的に比較すると天地の差があり、多々老少子が明瞭だ(図 1)。 10 年 ごとの生存困難度を比較すると、100 歳 の前に大きな壁がある(図 2・ 3)。 人間というものは 三つの臨界年齢を持ち、それは 「更年期 50歳・ 屈折年齢 70歳 および “生存の壁 100歳” である。

参考: 1 ) 新谷:「寿命の延長はどこまで続く?」; 福祉における安全管理 #516, 2015. 2 ) 新谷:「屈折年齢と福祉」; ibido # 579, 2016. 3) 新谷:「超高齢にたまげない」; ibido #611, 2016。

職員の声

声1: 人類には三つの「臨界年齢」があり、ホップ・ ステップ・ ジャンプと覚える … 四つ目のステップは無いのか?(答: 三つ目を通り越すのは百歳越えであり、これ以上の長命は非常に困難となる)。

声2: 人生の終点は 100 歳 らしいから、自分の年齢を 100 から引き算すれば、今後の自分のビジョンが見えて来る(答: その意味で言うなら 「余命表」 が役立つ … たとえば、今 60 歳 男とすれば 余命 = 23.5 年 と読める … 余命については次回のお話で解説する)。

声3: 105 歳 の人が実質ゼロなのに、平均年齢がやがて 100 歳 になると予想する NHK はどんな根拠なのか?(答: 過去の成績で将来を予測する過誤を犯しているのだ)。

声4: 日本や北欧諸国では 多くの人たちが 70 歳 まで あまり間引かれずに生存できる ―― それが「屈折年齢」 3 ) の考えになったのか?(答: その通りである … 人類および各国の事情は様々であるにも拘わらず、屈折年齢の現象には目を見張らせられる)。

図の出典: 下記の 1. 2. 3. を筆者がそれぞれ改変して意味づけしたもの。
1. http://xn--eckyfna8731bop8c.jp/geinou/%E6%97%A5%E6...
2. http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/pyra.htm...
3. 日本の人口統計 - Wikipedia  ja.wikipedia.org/wiki/
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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