(630) 福祉 と カーボン ・ ネガティブ

(630) 福祉 と カーボン・ネガティブ

近年、地球環境のことがやかましく言われており、主に空中の炭酸ガス(CO2)が悪者となっている。そこで地球の過去を短く振り返ってみよう。

♣ 地球は、46 億年 前に生まれたとき、空中にはCO2がいっぱいあった … 今の金星の大気は主にCO2が主成分だ。約 3 億年 前の温暖な頃、地上に植物が生まれ、空中のCO2を吸い取って植物体にした。CO2は目に見えないが、植物体(炭素)は目に見える。このことを環境学の用語で 「カーボン・ポジティブ」 と言う … つまり空中の炭素が地上に固定され、目で見えるようになったのである。(“ポジティブ” とはプラス、“ネガティブ” とはマイナスのことである)。

♣ 他方、もし地球に植物が大量にあるとすれば、空中の炭酸ガスは植物に吸収され尽くされてしまうが、動物は植物を食べ、(または植物を食べた動物を食べ)、呼吸によって炭酸ガスを吐き出す。このように、固定された炭素をCO2として空中に放つことを 「カーボン・ネガティブ」 と言う。つまり、植物によって空中から取り込まれた炭素と、動物によって吐き出される炭素とが、過去にはうまくバランスされて空中の炭素は常に一定の値になっていた。このことを 「カーボン・ニュートラル」 と言う。 ( “ニュートラル” とは「中立、中性」のこと)。
福祉とカーボン・ネガティブ
♣ 気候学者の研究で、第二次世界大戦のあと、世界の気温は上がり続け、空中の炭酸ガス濃度は正常の 0.03 % から 0.04 % 以上に上昇し、その勢いはとどまることを知らない(図 1)。原因は化石燃料の使いすぎ、つまり 「カーボン・ネガティブ」 が過剰なのだ。化石燃料は 1 億年 ほど昔の炭酸ガスである。これを、わずか 150 年このかたで燃やし切ろうとする勢いである。環境が 「気候温暖化」 という「仕返し」をするのは当然かも知れない。

♣ 徳川時代の終わり頃の 京都市の写真 がある。見渡す限り、山々は禿げていた。推定だが、その時代の釜でお風呂を沸かすのに どれだけの薪が必要だっただろうか?風呂一回につき 直径 30 cm の薪束が 2~3 個 必要である。
福祉とカーボン・ネガティブ

♣ 江戸の人口は 100 万人 と言われていたが、そのうち 10 万人 が入浴すれば、薪束が 25 万個、杉の木で換算すれば、入浴一回につき 5 万本 くらいの木が山から消える。「入浴 = 山禿げ」 を覚悟しなければならなかった(図 2)。食生活の厨房活動はさらに激しく木材を消費した。事実、終戦のころ、中国・ 朝鮮 の山々は禿山、大陸から日本へ帰国した人々は、日本の田舎の山々がまだ緑に覆われているのを見て感激したと言う。つまり、日本には 緑が残り、「カーボン・ニュートラル」だったわけだ。

♣ 日本の燃料の歴史は 木 → 石炭 → 石油 → 天然ガス → 電気 ... と移り換わった。今後、私たちはどうすれば緑を残せるのか? やはり「カーボン・ニュートラル」を目指さねばなるまい。

♣ 具体的には、どうするか? 植物を育て、植林を広める: これは「カーボン・ポジティブ」で、植物にしかできない作業である。 燃料は天然植物を利用する: 植物は、すでに空中の CO2 を吸収して植物体をつくっているから「カーボン・ポジティブ」。だから、それを燃やすとき CO2 が発生しても「カーボン・ネガティブ」、ちょうどプラス・マイナスになり、結果はカーボン・ニュートラルとなる。 できるだけ化石燃料を使わない … これは「カーボン・ネガティブ」を抑える。

♣ さて、原子力利用が止まった現在、電力のほとんどは 石炭・ 石油・ LNGの燃焼で賄われている … つまりカーボン・ネガティブである。 石炭・ 石油を使わずして、老人福祉ができるだろうか を考えてみよう。人間が高齢になることができたのは「電・ 水・ 熱」を効果的に利用できるからである

A もし電気が無かったら?夜中のトイレは真っ暗だ … 私の子供の頃はそうだったが、視力の衰えた老人なら夜中のトイレ利用は無理であろう。 B もし 「水」 が自由に使えなかったら? 水洗トイレ は使えず、昔のしゃがみ式トイレだ … 老人は大きく空いた穴に足をとられるし、一旦しゃがんだら もう起き上がれない。 C もし電熱が無かったら部屋の温度は、冬は 0 ℃ で肺炎は必至、夏は 35 ℃ で熱中症に負けてしまう。これは 10 年前 にフランス・ パリの老人施設で実際に発生したことであり、老人はバタバタ死んでしまった。

♣ つまり、老人福祉は電力あって初めて可能になる のであり、そのためには「カーボン・ネガティブ」が必須なのである。なるほど、地球の大気環境を正しく維持することは大事なことであるが、もしそのことに固執すると、老人福祉は成り立たなくなり、他人事ではないのだ。難しい取引きになるのだなあ ! 1908字

要約: 空中のCO2は植物に取り入れられて目に見える物体になり (ポジティブ)、 動物は植物を食べて目に見えないCO2を吐きだす (ネガティブ)。 ポジティブとネガティブのバランスが取れていれば地球の大気環境は良好である。 人間の社会活動は化石燃料の炭素を空中に放出して大気を汚染する … 老人福祉も大量のCO2を吐きだしてバランスを崩すが、このことを念頭において無駄の節約に努めようではないか。

参考: 新谷:「遺伝子の新しい指令」;福祉における安全管理 # 600、2016.

職員の声

声1: 電気・ ガス・ 水道が制限なく使える日本の介護は快適、他方 発展途上国での老人福祉サービスはどうするのか?(答: 無い袖は振れない … 日本も 2000 年 の介護保険以前はとても不自由だった)。

声2: 環境を守るために CO2 排泄を節約すべきだが、老人保護に努めれば CO2 排泄は増える … どうすれば良いのか?(答: 極端に走らず、どちらもほどほどを考えれば良いだろう … 大盤振る舞いを避けよう)。

声3: デイ・サービスでは入浴を希望する老人がどんどん増えているが、もし薪を燃やしてお湯を沸かすとすれば、山が幾つあっても禿山になる … 薪の代わりに石油を燃やせば環境悪化を招く … この矛盾をどう調整するか?(答: 人間は最高の捕食者であり、かつ地上の王様である … 矛盾を言い立てられても引っ込みがつかない)。

声4: 電気の無かった時代の介護はどうしていたのだろうか?(答: ローソク時代 なら介護度の高い人の介護は不可能、愛情の介護だけとなるだろう)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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