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(652) 認 知 症 は 死 因 の 第 一 位 と な る か ?

(652) 認 知 症 は 死 因 の 第 一 位 と な る か ?

今から 85 年ほど前 (1930 年 …昭和 5 年頃)、赤ちゃんの出生数は今の 2 倍ほど多かった(約 200 万人)。

♣ 当時は「人生は 50 年」の時代だったから、これら多数の赤ちゃんは生後 50 年で(1980 年…昭和 55 年頃)世を去る運命であった。

♣ ところが戦後の 「長生き時代」 を迎えて、人々は死期が約 30 年ほど猶予され 1) 、2010 年頃(平成 22 年)になってやっと遅れた死期が近づき、身罷り (みまかり) 始めた。それはごく当たりまえの現象だが、マスコミはその現象を 「多死時代」 と名付けて騒いだ。

♣ さてさて「死のパターン」は、昔と今ではすっかり変わった。昔(図 1の左半分2 ) : 主な死因は幼若年者の 肺炎・胃腸炎・結核 であったものが、今(図 1の右半分): 超高齢者の 癌・心疾患・肺炎・老衰 で置き替わった。近年の死亡者の大部分は老人であり 、死因を分析すると:―― 

♣  死因のトップは (図1) 、全死亡者のおよそ 1/4 を占める。先進諸外国でも癌死亡率が 一・二位 の国は多く、日本も主要死因のトップを癌が占めていることはうなずけよう。

認知症は死因の第一位となるか?

死因の 2 位は、図 1で見る限り 「心疾患」 であり、癌の半数に及んでいる… だがここに問題があるのだ。ご存知かどうか、「死因統計」とは医師の書く「死亡診断書」の直接死因の病名が統計の基礎資料である。この病名が医療政策の基礎となり、また国民の社会認識を形成している。

♣ そこで諸疾患の年代別推移を、図の左半分と右半分で見比べてよう。戦前の死因では、癌と心疾患が 低いレベルで ほぼ重複しているが、両疾患とも戦後になってにわかに増えてきた(図 1)。ところが 「本当の」心臓病死の増加はこんなに多くない実態があったので、厚労省は 1995 年(平成 7 年)に次のような “勧告” を行った―― 「老衰末期の死因として軽々しく 「心不全・呼吸不全」 等を、死亡診断書のトップに置くべからず」、と。

♣ すると直ちに「心疾患」の報告数はガタ落ち した(図 1)… しかしそれは直後の 3 年間だけ、すぐに元の木阿弥の多数になった。つまり戦後の「心不全」という診断は、必ずしも「心臓病」を表すものではなかったのである。でも それはナゼ?

その第一原因は 「ものぐさ」 である。つまり、死の三徴とは「心停止・呼吸停止・瞳孔散大」であるから、“心臓が止まった イクオル 「心不全」” という 安直かつ “ものぐさな思考” で病名が妥協されて しまうようだ。診断書では死の ”原因” が尋ねられているのに、答は「心不全」 という ”結果” で お茶が濁される。これでは 死に係わる幾つかの疾患が あたかもすべて 「心疾患」 であるかの如く認識され、 国の医療行政の狙いから外れるだろう 3 )

♣ そもそも、心不全の意味が誤解されている … 心不全とは 「心臓の働きが体の血流需要に追い付けず、バテている状態」 を意味し、その臨床上の特徴として「起座呼吸」と、聴診で「第3音」の存在が必須である。ところが、そんなことにはお構いなく「心不全」と書かれ、情報がウヤムヤの内に放置されてしまう。

第二の原因は「忖度 (そんたく) 」だ――日常会話の「心不全」なら ご家族も世間様も診断名を問題視 しないだろう、という “忖度”である 。しかし、死亡の原因をどうしても「心疾患」としたいのなら その基礎疾患として 「心筋梗塞・心筋症・重症不整脈」 等の存在がほぼ必須であるけれど、これらが通常の老衰末期に存在することは まず無い。

♣ 加えて図 1を見ると、右上がりに上昇する平均寿命の曲線と心疾患の曲線は 「並行上昇している」 ではないか。忘れてはいけないーー戦後に獲得された寿命延長の期間は 30 年以上に及び 1 ) 、したがって 平均死亡年齢は 50 歳代から延びて 80 歳~ 90 歳代を越える 超高齢 になったのである。その結果、死亡原因が 幼若年 対 超高齢で これほどまでに大きく変わって しまったのだ ... なるほど... なるほど 目で見て良く分かる。

♣ さて近年、先進国では認知症」を死因として取り上げる傾向が強い。日本では従来この習慣がなかったが、驚いたことに今年 「初めて」、それも 「女性に限って」、“認知症” が死亡順位の 10 番目として取り上げられたのだ (図 2)。

認知症は死因の第一位になるか?

♣ ところで、日本で癌の患者数 約 100 万人で死亡順位は 1 位だ、 これ対して 認知症は患者数が 5 倍の 約 500 万人と高いのに死亡順位は 10 位にも満たない ... つまり日本では 死因を認知症だとするケースはまだポピュラーとなっていない。

♣ 参考までに、外国の認知症死亡の順位例は、オランダ・フィンランド(1 位)、 アメリカ (5 位)、日本の女性データのみでやっと 10 位という実状 4 ) ... つまり日本では、死因としての認知症は まだまだ遠慮されているようだ。

♣ 事実、日本の元首相や有名人の死因が認知症だった、なんて聞くことはない。ところがアメリカの元大統領の ロナルド・レーガン や イギリスの鉄の女首相のマーガレット・サッチャー は周知のように 「堂々と」 死因 = 認知症だった。日本でもキチンと診断すれば、今や死因のトップが 高齢認知症になった時代であることはほぼ間違いないだろう。現今の認知症の蔓延はそれほど日本社会を変えてしまったのである。

♣ なにも死因の一位争いをする必要はないが、国民の健康上の脅威が認知症であることを 今や社会のみんなが知っておくことは大事なことではなかろうか? 1887

要約: ①  日本の上位死因は 現在 「癌・心・肺・老」 とされる。 その死因第二位の 「心疾患」 は必ずしも心臓病ではなく、単に 「死の三徴」 で “忖度 (そんたく) ” されているに過ぎない。 日本では今年 初めて女性の認知症が 上位十番目 に採択された。もし現在の 「心・肺・老」 の死亡診断の幾分かを認知症とすれば、日本でも上位の死因が「認知症」になり、その社会的対応も変わってくるのではないか。

参考: 1) 新谷:「死期猶予 30 年と介護界」; 福祉における安全管理 # 460, 2014. ) がん登録・統計:「2017 年のがん統計予測」;国立がん研究センター・がん情報サービス、2017. 3 ) 広田直樹: 死亡診断書; 院長のここでしか言えない ; 2013.3.20. 4 ) 石原藤樹:「フィンランドがワースト、 認知症はなぜ寒い国に多いのか」;現代ヘルスケア、2017.
*: 60 歳以上の死亡者率 ーー 男 92 %、 女 96 %

出典:――
図1: 主要死因別に見た死亡率をグラフ...http://www.garbagenews.net/archives/1892740.html
図2: 日本人の死亡原因の 1 位は男女とも「ガン」、部位別では「気管支および肺」;シニアガイド、[2017/9/25 00:00]
: Yahoo 各年齢までの死亡率;Copyright © 2005-2017 保険マンモス株式会社


職員の声

声1: 認知症の終末にナゼ心停止・呼吸停止が来るのか?(答: 認知症の末期には老化が著しく進み「嚥下困難・誤嚥性肺炎・外傷骨折・寝たきり」などの生命活性が高度に低下するから)。

声 2: 死亡診断が「認知症」と「老衰」ではどこが違うのか?(答: 「認知症」は若年性でもあり得るが、「老衰」は超高齢が背景として必要である。また厚労省は単なる 「高齢の死 = 老衰」 よりも、原因素性が推定される病名を求め、よって国民の病識高揚を図りたい、としている)。

声3: 癌患者 100 万人の死因が 1 位、これに対して認知症患者 500 万人の死因は 10 位にも及ばない… これってやはり診断姿勢が偏っているよ …どちらも確実に死ぬ病気だし(答: 日本では、まだ“ 認知症” を死因とすることは遠慮されている)。

声4: 超高齢者の死因が認知症であっても、恥ずかしいことはチットモない ! 社会の認識を改めよう(答: いずれ 天皇や総理大臣 が、諸外国のように、認知症と診断される日が来れば、事情は一変するだろう)。
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「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

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