(689) 風 桶 (かぜ おけ)

    (689) 風 桶  (かぜ おけ)

 「風が吹けば、桶屋が儲かる」という話を知っているね 1 ) 。これを略して「風桶」 (かぜおけ) と呼び、医療・介護で 少なからず出合す お笑い話 である。

♣ 「アイスクリームが売れるにつれ、ビールス性小児麻痺が増える」 という説は、どうだろうか?これは 戦前アメリカで信じられていた実話であり、あたかもアイスクリームにビールスが紛れ込んでいるように受け止められるが、実際には両者の因果関係は全くない。しかし、統計をとれば 「どちらも夏場によく発生する現象」 として有名な民間の迷信だった。

♣ つまり統計分析で得られる 「相関関係」は 必ずしも「因果関係」 を示すものではないのである。「因果」とは、“原因に伴う結果” をつづめた言葉だ。「相関」とは、単に “同じ方向に見える現象” を示すに過ぎない。

♣ たとえば 図 1 の 「身長を伸ばせば賢くなれるんだー ! ! 」 では、「身長と学力」は明らかに「相関」しているけれど、それは 身長が 「小学一年生( 125 cm)が高校生 ( 170 cm) になったから」 と解釈すべきである――これを 「学力のある人は背が高い」、と 逆方向の解釈するのは間違いだ。原因・結果 は「主従関係」(X軸 → Y軸)であって、その逆関係は成り立たなたない。
風桶

♣ また、状態の説明を安易に因果関係で結びつけるのも要注意だ。むしろ、 政治家・官僚・上司などは わざと両者を混同 して、自分の意見を押し通すこともあるほどだ。

♣ ここで、別な病気: 「糖尿病」 を考えよう:―― 日本では糖尿病の 95 % は 「食べ過ぎ糖尿病」 だ、つまり自己責任 (内因性) が 95 % なのだ。自分で過食という原因を作っておいて、「公費」= 健康保険で治療を受けたい … それは あたかも「内因性の病気」なのに、「外因性」とこじつけて、公(おおやけ)の費用で治療するように「不合理」なことではなかろうか? タバコ と 肺癌の関係 も微妙なところがある。

♣ そもそも 「老齢者の健康維持」 は もはや遺伝子の役目ではなく、本人の 「知恵と注意」 だけが頼りなのである。もし 100 歳 のご婦人がトイレの中での転倒・骨折された場合、他人のせい(外因性)であるかの如き解釈をするのはたいてい間違いだろう。

♣ 日常的な介護の仕事でも 似たようなことが発生する――ご利用者の 誤嚥・異食・ずり落ち・転倒」 などで、内因と外因の判断を混同して、介護者が ”切ない思い” をさせられることは少なくない !!

♣ その上、たとえ内因と外因が区別できたとしても、老人の場合、「万年目の亀(老齢) という要素が主因であって、事故は単なるきっかけに過ぎないこともある。 2 ) 
風桶

♣ しかし 内因・外因の区別 を意図的に混同したのでは あなたの「品位」に関わる――だから因果関係が明瞭である場合には それを、第三者にもわかるように 丁寧に説明しよう。

♣ そのためにも、記録・「ヒヤリハット・レポート」 を的確に残し、ホウレンソウ 3 ) をしっかり行おう。標題に挙げた 「風桶」 の滑稽な強弁を避け、事実をしっかりと見極める姿勢を示そうではないか。 

要約:   相関関係とは単に二つのことが同時に観察されるだけのこと(= 風桶)、因果関係は二つのことに 「主従関係」 がある事を示す。 この「相関」「因果」の関係を、間違って 又は意図的に間違えることは 介護の世界でしばしば発生し、弱い立場の人を苦しめる。 因果関係とは X → Y の関係が絶対に逆方向にならないことを肝に銘じて置くべきである。

参考: 1) これは日本の落語の諺(ことわざ)で、その意味は: 風が吹く→ 埃 (ほこり) がたつ → 埃が目に入って、盲人が増える → 盲人は三味線を買う(当時の盲人がつける職に由来) → 三味線に使う猫の皮が必要になり、猫が殺される → ネコが減ればネズミが増える → ネズミは桶をかじる → 桶の需要が増え 桶屋が儲かる ―→ これは 原因と結果をムリにこじつけて滑稽に表現した相関関係に過ぎない … 桶屋が儲かっても風は吹かない ... つまり何も原因・結果を説明していない。 2 ) 新谷:「万年目の亀」; 福祉における安全管理、 # 1, 2010. 3 ) 新谷:「ホウレンソウ」; ibid # 148, 2010.
 
職員の声

声1: 特養では ご家族に「転倒・骨折」の報告をするのが一番辛い(答: “あんたの責任だ ! ” と断じこまれても、前後の様子を率直に説明しよう…因果関係で 正直であれば弁護士も保険会社もあなたの助っ人に必ずなる)。

声2: 相関関係があるだけなのに、「風桶」 の因果関係で事態を混乱させては間違いの元となる(答: 認知症では因果関係のない突飛な行動がしばしばあり、それをあたかも因果関係ありと結び付けては正しい答が出ない)。

声3: 今の麻生・財務大臣が数年前に 「生活習慣病で医療に掛かる人はペナルティを課すべき」 と発言してマスコミに叩かれた … でも、因果関係で見直せば、あながち間違いではなかった !(答: 政治家は 理非に拘わらず国民の味方をするべき、との思いで マスコミは麻生大臣を叩 いたのだろうが、その点、マスコは国民に迎合したのである)。

声4: 認知症薬は無効である と最近分かってきたのに なにしろ関係者にとっては ドル箱、日本では販売が続く(答: 認知症薬は 従来 「風桶」の論理で有効と認められていたが、今回 因果関係で 「薬効なし」 との成績 並びに臨床上の実感が発表された … よってフランス・アメリカはそれを中断 する。しかし 日本はクスリ好き、どうなることか?)。
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「ふじ」=新谷冨士雄
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