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ロ ハ の 功 罪

(721) ロ ハ の 功 罪   
  
  さて、今日のお話の中で 「無料」 とは 「対価を払わず モノを得ること」 で、これを 「ロハ」 という。

♣ 人も動物も 何か欲しい物があれば、まず その物に近寄って 「食べるか、所有すれば」 よいのだが、もし先客があれば 歴史的には 「盗む」 = 「無料」 から始まり、それができなければ 「取引する」 = 「有料」 になる。

♣ 人の本性 は、進化の真髄 = つまり「横着 (おうちゃく) で 楽 (らく) すること」 だから 1 ) 、「ロハ ! 」 の一声で誘惑に負けてしまう。たぶん多くの人は 「医療や介護」 のロハ を望むだろう。

♣ 我が国の厚生省は半世紀前の 1973 年、理想に燃えて老人医療を無料化した ! ! 私は うかつにも 病院の待合室が 突然 老人で込み合ってきた様子を見て、「あっ ! 医療は無料化になったんだ ! 」 と気付いたのを覚えている( = 病院待合室の老人サロン化)。

♣ また、「社会的入院」 と呼んで、回復の見込みがなく 手間ばかりかかるお年寄を ロハに近い待遇の病床に永く預ける、などの風習も全国的に広がった。

♣ 無料であれば 対応がどれほど手間取るかの 料金体系 にも無関心になるから、風邪や軽傷でも大病院へ駆け込み、高度な治療が当然という風習も確立された。サービスを受ける側 (患者側) の権利が強調され、患者さんは 「患者様」と 呼ばれるようになり、節度を知らない彼らの高い要求レベルから 「モンスター」 (化け物) と言う名称も 一頃 生まれたほどであった。

♣ 当然 医師・ 看護師 の不足に拍車 (はくしゃ) が掛かる世相が生まれたわけだ。一床当たりの単価は、医療設備のある病院では高価にならざるを得ず、医療費は ウナギ登り となって福祉予算を圧迫した。無料化してから 9 年目、ついに 「無料化は廃止」 に追い込まれた次第なのである。「無料化の理想」 は 付随する強い副作用に負けてしまったのだ。

ロハの功罪

♣ このように、理想と現実 との間にある 不都合な解離を 「モラル・ ハザード」 と呼ぶ(図 1)。その意味は、「モラル」 とは “倫理”、「ハザード」 とは “望ましくない事態” のことである。合わせて 「モラル・ハザード」 は 「倫理欠如の事件」 のことで、がんらいは経済学の用語であった。太宰 (だざい) (おさむ) の小説・ 「走れ メロス」 は倫理の約束をキチンと守ったフェアな心のメロスを褒め称えている。

♣ つまり、倫理欠如とは 「みんながやるから 僕もやる」 という一種の 群衆心理の無責任節 である。例: 保険を掛けておいた我が家に火をつけ、多額の保険金を請求する行為、これは犯罪である。これほどではなくても、保険をかければ、注意義務は低下し、結果として火事のリスクが高まるかも知れない。保険金詐欺や殺人の手口にも使われている。危ないことだ。

♣ その根本原因は 「社会全体の利益」 を考えずに、「自分の利益だけ」を追求する人間の 「ずるい心」 にある。人は 「生命進化」 の過程によって “賢く なった” ハズだが、残念ながら同時に 「ずるくにもなった」 ので、解決困難なトラブルが続くことになる 2 ) 。「ロハ」 は人の心を 「佛から鬼に」 してしまう。

♣ このように 「無料化」 と 「モラル・ ハザード」 は互いに手と手を携えて進軍する。ここで注意しよう ―― 「無料と無償」 は似て非なるものである (説明――図 2)。無償の例は ボランティア、 生活保護費の支給、 福祉の「セイフティ・ネット」、 ニート・引き籠り手当て支給 などなど ―― 第一 これらは、そもそも有料を考えていない。一般に 「人気取り政治」 は無料支出に熱心であって、結局 莫大な無料のための借金を国民に押しつけることになる。

ロハの功罪

♣ あなたにとって、そして誰にも通用する社会を愛する姿勢とは、「入 (い) るを計って 出 (い) づるを制す」 という 「先を読む慎重な姿勢」 ではないか?たとえ 理屈と手続きを通した場合であっても 「ロハ の一声」 に転んでしまえば、モラル・ ハザード の罠にはまる危険があることを知っておきたい。

♣ 1973 年の ロハの医療 (老人医療はロハ )は その典型だった。只今、2000 年スタートの 介護保険は まだその轍 (てつ) を踏んでいない ―― その理由は、「僅か一割」 であっても個人負担の制度があるからこそハザードを免れているのだろう。

♣ にも拘わらず、全身機能の著しく低下した高齢者への過剰医療は相変わらず少なくなく、胃瘻 (いろう) や不思議で高価な延命処置はロハに近い。これらは 病院も家族もが 陥るモラル・ ハザード であり、慎むべき現象ではないだろうか。もし これらの処置が 「有料」 であったのなら、諸外国と同じく ロハのモラル・ ハザードは防げると思う。

♣ 福祉における正しい 「ロハ」 は非常に有難いけれど、相乗りの 「よこしまな人の心理」 をなんとか防いで、「健全な社会的ロハ」 が享受されるようなシステムを求めたいものである。

♣ 動物なら自分の利益だけで行動する … 敬老精神なんてナイ ... 人間は大脳の発達により 「賢く」 なり、また 「ずるく」 にもなった ―― そのためか、佛さまやイエスさまがお生まれになったのかも知れない。 1972字 

要約: 人間はロハ (無料) になると、サービスの注文を意図的に増やす 「悪乗り」 の誘惑に駆られることがある。 そのような 「倫理欠如」 の行動を 「モラル・ ハザード」 と呼び、「無料」 と 「無償」 の違いをはっきり認識した行動が望まれる。 ロハ の一声に転んではいけない――また、公 (おおやけ) の会計だからと心を許し、モラル・ ハザード に陥いる事のないように 心を引き締めよう。

参考: 1 ) 新谷:「正しい横着をお奨め」; 福祉における安全管理  # 719, 2019. 2 ) Wheel-right, J. : "Days of Dysrevolution" ; Discover May 32~39, 2015.
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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