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(735) 骨 折 が 治 る ま で

 (735) 骨 折 が 治 る ま で   
 
  超高齢者は 「転倒 → 骨折 → 寝たきり」 が宿命のようである。

♣ しかも、高齢女性方の間では 「骨折したら、もう人生は楽しめないわよね」 との会話がしばしば聞かれる。 「折れた ! 」 と慌てるだけではなく、先々の事まで気を張っておかなければならない。

♣ だから、もし私たちの周りで骨折が発生したら、単に慌てるだけでは済まされない。それが治るまでの 時間経過 を予想しておく必要があり、また簡単な 用語・ 予備知識 も知っておくべきであろう。そこで、パールの 嘱託医・ Y先生 に一つの症例を元にして相談し、骨折全般について 教えて頂いた。

♣ 症例はデイサービスをご利用の Kさま (82 歳女性) 。今月の初めに室内で転倒され、左肩~上腕にヒビが入り、「胸鎖(きょうさ)関節障害」 と診断され、自宅で安静に過ごしておられる。先週には 包帯姿で デイサービス に参加された。

Y 先生: 「骨のヒビ」 も骨折の一種であり、程度は番軽い(非裂 (ひれつ) 骨折)とも言う。一般に、骨折の治療方針は 「保存療法が基本」 であり、その人の自然治癒力に頼る。若い人の骨はよくくっ付くけれど、50 歳を越えた女性は 骨粗鬆症 が進行し、保存療法だけでは治りにくくなる。もし、保存療法が有効でないとの見通しがあれば 「観血 (かんけつ) 療法 (手術) 」 をする。

♣ 骨折の 治癒期間 は、骨折の場所により大きく異なる。骨折の治癒は 小さい骨で早く、大きい骨では遅く治る; その期間の “目安” は下記の通りであり、暗記しよう —— (治癒の単位は “週、week” )。骨折回復の全体像をよく見取り、ご利用者のケアプラン作成時に役立てよう。

1-w : なし。 2-w : 指骨。 3-w:肋骨。
4-w:鎖骨。 5-w:前腕骨 1本なら5-w、2本なら6~7-w、
6-w:上腕骨、 7-w:下腿骨、 8-w:上腿骨、
12-w:大腿骨頚部 。

ご自分の人指し指で部位と数値を呼びながら復唱すると、楽に覚えられる。こうしてみると、高齢者に多い 「大腿骨頚部骨折」 が いかに治りにくいかが実感されよう。

骨折が治るまで

♣ 良好な治癒のためには、いくつかの条件がある。最も大事なのは 「安静」 であるが、安静を保ち過ぎると 「関節の拘縮」 が起こる。栄養と感染防止も重要であり、リハビリも同じように大切である。一般に 「高齢・ 骨そしょう症・ 癌・ 低栄養」 の場合は治りにくい。

♣ また、骨折治癒と言っても、完全に元に戻るわけではなく、機能的に問題が無ければ ”良し” とするしかない。なお、上記のように 「完治」 (かんち) を待つと時間がかかるので、実務的には 運動量を半分程度に制限した回復を 「略治」 (りゃくち) という折衷案もある。大腿頸部骨折のように、くっつくのに 12 週、リハビリを加えて 24 週、つまり 半年近く かかる場合は 「略治」 で代用しなければならないこともある。

♣ 骨折後は、しばらく骨折部を動かさなかったため、関節が硬くなっており、“以前のようにスムースに動かない” とか、 “痛い” とかの何らかの 機能障害 が起こる。そこで、リハビリを行い、「略治」 を経て 「完治」 に向かい、完全な回復を目指す訳だ。すなわち、骨折を完治させるためには 「骨がくっつくまでのリハビリ期間 × 2 」 が必要となる。

♣ 高齢者で最も深刻なのは “大腿骨の頸部 (けいぶ) 骨折" である 1, 2 ) 。治療の概念図を上に示した。

♣  日本の 90 歳代の方々は一年間に 約 3 % が同部の骨折を経験される。90 歳代の方々を 約 100 万人とすれば 約 3 万人の骨折、東京都なら毎年 何千人もの 90 歳代の骨折となる —— 莫大な損害と経費 ! が掛かる。一人で左右の 大腿骨・ 骨頭と もに骨折される方も少なくない。

♣ パールの大腿骨骨頭骨折は、右だけの人= 6 人、左だけの人= 4 人、左右とも骨折= 5 人、計15人(全体の 30 %)である。

♣ 治るのに時間がかかり、問題がこじれれば、責任追及・ 慰謝料・ 経費負担 の問題がからみ、大変やっかいになる 4, 5 )  。なんとしてでも骨折を防止する工夫が求められる。 1682字

 参考:  1) 新谷: 「万年目の亀」; 福祉における安全管理  # 1, 2010. 2) 新谷 : 万年目の亀、 ibid # 126, 2011. 3) 新谷: 「転倒に備えて」; ibid #209, 2011. 4) 新谷: 「過失と責任」、 ibid # 64, 2010.  5) 新谷: 「二つの人権 」;ibid #177, 2011.

職員の声

声1: 90 歳の男性、先回 転倒 し 鎖骨・ 肋骨 を骨折、高齢のために 手術ではなく 「安静」 第一の生活になったが、治った後 歩けなくなった(答: 治るまでに 4 +3 週の安静が必要だったでしょう…高齢の骨折はこれで しばしば命取りになります)。

声2: 生きて行く以上、体を動かす必要があり、老人が動けば 転倒・ 骨折 のリスクが必ず伴う … ご家族に十分理解して貰わないと(答: パールではご入所の時 「説明と同意の書」 でこのことを入念に説明し、ご理解を得ています)。

声3: 骨頭骨折とは何とも酷い話、二足歩行を選んだ人間が野生時代の 3 倍も長く生きたことの代償か?(答: ヒトに似たサルは骨折をしない… 一つの理由は二足歩行ではないから、もう一つの理由はきちんと天然寿命を守り、高齢のサルはいないから)。

声4: 骨折をしても リハビリ があるではないか?(答: 若者のスキー骨折ならその通り――しかし、老人の場合は 骨粗鬆症 を伴い、元通りの回復をせず、結局 命取りの結果になることが少なくない)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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