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(754) 微 笑 ん で み よ う

(754) 微 笑 (ほほえ)ん で み よ う

  元気な心は元気な体に宿る。でも これは簡単なようで難しい。笑う門 ( かど) には福来たる ! あ、これならいい !

♣ ‘箸が転んでも笑いこける’ のは うら若い女性特有の現象であり、高齢者では、そうそう たやすく 笑顔を見せて頂けないようだ。パール・ 特養の サロン は 3 階と 2 階に分かれていて、3 階のほうは要介護度の進んだ方々が過ごしておられるが、テレビをご覧になっていても 声を出すことなく 大変静か である。

♣ これに対して、2 階のほうは要介護度の軽い方々が過ごしておられ、笑顔が多く、テレビを見ても 声を出して 多くの人たちが どよめく雰囲気が見られ、3 階とは対比的である。2 階も 3 階も、平均年齢は 87 ~ 89 歳であって、有意の年齢差はないが、認知症のレベルには明らかな差がある。

♣ 「笑い」は、喜びの感情と繋がっている “副交感神経反射” によって起こる。人間の脳は ‘二階建て’ になっており、一階部分は 「動物脳」、二階部分は 「人間脳」 だ。「笑い」 は 「動物脳」 がリラックスし、「人間脳」 が ’おかしさ’ を感じた時に発生する。 認知症になると、「人間脳」で ‘おかしさ’ を感じることができなくなり、「笑い」 が分からなくなる。

ほほえんでみよう

♣ 猿や犬・ 猫は ‘喜び’ を感じるようだが “声を出して笑う” ことはない。愛犬家の中には 「僕の犬は笑うよ」 という人があるが、複数の犬が一斉に笑うことは決してない。まして “鳥や蛙” は笑わない。つまり、「笑い」 とは、人間のように発達した大脳の所産なのである。

♣ 皆さん方、日常のケアを通じ、ご利用者が 「どの程度 お笑になるか」 を観察すると 「動物脳と人間脳のバランス」 が理解できるので、ひとつ 注意を向けて見られると良い。

♣ 「笑い」 は 「ストレス解放、免疫強化」 などの理由で健康増進に効く とされる。ならば、高齢者介護で 「笑い」 を誘うような行動をもっと取り入れたらどうか、とさえ思う。しかし 同じ笑いであっても 「空笑い (からわらい) 」 では意味がないとも言われる。

♣ 空笑いとは、笑う内容がないのに、顔だけが笑っている状態であり()、ヒトの場合なら統合失調 (分裂病) の特徴でもある。そこで ナゼ認知症で ‘おかしさ’ が分からなくなるか、の理由を考えてみよう。

記憶の喪失: 落語 (らくご) を思い起こして欲しい ―― ちょっと前に耳で聞いた事と 今聞いた事が矛盾すると 人はハテナ?と思い 笑いが誘われる。膨らんだ 「期待と関心」 が裏目に出ると 思わず 「笑っちゃう」 のだろう。

♣ もし記憶のない人の心なら そもそも 心の中に “矛盾” なんて存在せず、ただ 平坦な 「無」 があるだけ で 「笑い」 の存在する理由は全くなく、仮面状の無表情が続く のみだ。

時・ 所・ 人 の喪失 (見当識の喪失) : 認知症に “時” の概念はない ―― 夏と冬の意味は分からず、8 月に冬服を着て汗を流しているが、本人はちっともおかしくない。 “場所” の感覚が薄い ので、トイレではない場所で排便しても、“変だ?” とは思わない。 “人物” の区別がつかなくなる ので、自分の息子に “あなたは どなた様でしたかのう?” と語って平気でいる。

♣ 要するに 「笑う」 とは高度な感情であり、人間は大脳皮質の発達により、辻褄 (つじつま) の合わない現象に出合うと 「思わず笑ってしまう」 ようになった。逆に 大脳細胞数が減少し、所定の脳細胞の協力機能がなくなる 認知症では、笑う内容が脳の中に発生しなくなるのだ。老人のケアを続けている皆さん方の中で、この 1 ~ 2 年で 「笑い」 が消え、ハテナ? と思った症例 をお持ちの方もあるのではないか?

♣ ある高名な病院の院長先生、75 歳。その年の忘年会で、若者たちが披露する 「お笑い劇」 を一番前の席で見ていて 苦虫を噛み潰したような顔でおっしゃる ―― 「皆はこの劇を見て笑うが、私には何がおかしいのか、さっぱり分からない」 と。案の定、半年後には 「正常圧水頭症」 のために職を辞されてしまった。この病気は 脳細胞数が減少し、“ボケ・ あひる足歩き・ おもらし” の特徴を示すことが知られている。

♣ 別な例で 女性 104 歳の Y. 様 ―― いつも怒りっぽくて機嫌の悪い方だったが、「お化粧の会」 に参加して綺麗にしてもらったところ、カメラの前で 満面の笑み を一同に披露され、周りの人たちを唖然 (あぜん) とさせた。

♣ つまり高齢者は一般に笑わなくなる、とは言うものの、問題は単に “高齢” だけが原因なのではなく、 環境と “認知機能の強弱” で 「笑い」 の存続が決まる のである。 1811字 

結論:   気分にムラのある高齢者でも、介護者が笑うと相手もつられて笑うことがある。 90 歳でも 100 歳でも、笑ってもらえるようなケアができれば この上なく楽しい。 “笑うとボケない; 笑う門(かど) に福来たる” など、介護にとって 「笑い」 は とても大事な雰囲気要素 ではないだろうか?

食員の声

声1: お年寄りで認知機能が落ちると 「笑い」 が失われるとは … 目からウロコだった(答: 廊下ですれ違った時など、ふつうなら 会釈 などをするが、もし 相手が “無愛想な無関心顔” なら そろそろ怪しいと思わなければね)。

声2: 認知症の デイ・サービス で、ドタバタ劇の 「ドリフのお笑い」 を見ていると、ご利用者も職員もある場面では ドット 笑う ―― 笑いの ツボ は認知症の有無に関係ないと感じた(答: 笑いは伝染する性質があり、誰かが笑い始めると周りの人も笑いに釣られる)。

声3: よく笑う人は 不平や不満 も少ない、と思う(答: 落語や漫才も役立つし、一緒に笑うことも大事です)。

声4: 「笑顔」 って気にも掛けていなかったが、それほど高度な認知力の源であるとは … 勉強になった … 認知症で いつも笑顔の人がいるが 「空笑い (からわらい) 」 なのか?(答: もし表情の欠ける仮面様であれば 「統合失調」 を考える、そうでなければ 「笑う」 と言うよりも、穏やかな心を反映する “微笑み” なのだろう)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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