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(769) 体 格 指 数 (B.M.I.) の 初 歩

(769) 体 格 指 数 (B.M.I.) の 初 歩

 老人介護と B.M.I. は切っても切れない重要な関係にある。

♣ 我々は 10 年前に、体重の指標 B.M.I. が 「12」 に近づけば お年寄りが 「生と死の狭間」 にあることを すでに 発表した* 1 ) ~ 3 ) 。その臨床的意義の 深さは限りなく大きいが、ネットで検索すると、現時点で、B.M.I. の応用は相変わらず 「肥満領域の指標」 としか知られていないようだ。

♣ 従ってお年寄りへの B.M.I. の使い方についての解説書はほとんどない。そこで今回は 初歩者に使いやすく応用しやすいように工夫した 短い学習を考えた。

♣ 人間の体格を表す 「身長と体重」 は非常に重要な 数値指標 であるが、臨床的に 肥満・ 正常・ るい瘦 を一つの数値で表すことができれば便利である。B.M.I. は近年 広く用いられている方法であって、その方法は ポケット電卓ひとつ で誰にでも簡単に算出できることだ(図1)。

♣ B.M.I. の数値は一個だけでも意味があるが、継続して、例えば入浴サービスの時 毎月一回 必ず体重を測る習慣があれば、その臨床的価値は大きくなる。その一例を 図2 に示す。体重の測定は毎月第一回目の入浴時、これを図の上、J 氏で描く (94 歳女子、認知症)。縦線は B.M.I. の数値、横線は一枡につき 1 年、合計 8 年ぶん。入所当時から B.M.I. は 臨床的に安定、正常な 20 ± でほぼ水平、それが 5 年続いた。7 年目の終わりに 「誤嚥」 、以後 1 年かけて B.M.I. は急峻な角度で低下し、B.M.I.= 13 あたりで亡くなった。

♣ 水平の部分は、曲線の揺れに個人差があるものの、死亡の前 1 年から B.M.I. が急に低下し、このパターンは高齢の認知症・死亡例でしばしば見るパターンである。B.M.I. が水平 ± であるうちは、簡単な言葉で言えば「 決して死なない」 が、B.M.I. が 1 年で 「4」 以上急に低下すれば 「死ぬ確率」 が非常に高くなる。要するに、「絶食」 に近い食習慣は非常に危険である。

♣ 図の下は K 氏を描く(96 歳女子、認知症)。全経過は 9 年、スタートの B.M.I. は正常下限であったが、臨床的には何事もなく、2 年目以後 ほぼ直線的に低下して行った。8 年目には B.M.I. が 12 に達し、痩せ細って頑張っていたものの、とうとう 9 年目に ジワリジワリ と亡くなった。これら B.M.I. の曲線は毎月コンピュータで出力・ 図形化し将来の事態の対応に役立たせた。私どもは 1 年ていどの経過で亡くなれば 「並みコロ」 と、年単位で ジワリジワリ と亡くなるのを 「じわコロ」 と呼びならわす。いずれにせよ、この所見は死亡時点がかなり事前に推測できる特徴がある。

図 3 は 「誤嚥が契機」 となって誘導された B.M.I. の低下 死亡の 3 例を示す。縦横の線は 図 2 と同様である。H 氏(96 歳女子、脳梗塞)は B.M.I. が堂々と正常の上位で、5 年目の終わりに誤嚥・ 入院、これ 4 回繰り返し、5 回目の誤嚥では家族も死を覚悟、10 年目に定規で延線した推測通りの日時で亡くなった。

I 氏(90 歳、認知症)は入所時すでに B.M.I. がかなり低値であったが、食事にうまく反応した 2 年間を過ごし、そこで誤嚥、1 年余掛けて B.M.I. の低下を見、予測通りの日時で亡くなった。J 氏(99 歳、脳梗塞)は入所時すでに B.M.I. = 14 と痩せ細った状態であったが、2 年間をよく保ち、そこで誤嚥、1 年後に B.M.I. = 12 となり、99 歳でもあって死亡を覚悟した。しかし、家族のたっての希望で 「胃瘻」 を増設、だが B.M.I. の回復もままならず、半年後に亡くなった。

♣ 最後に B.M.I. が連続・ 高度に低下する場合の意義を説明する (図 4 )。症例はいずれも超高齢の認知症である。症例 A は 100 歳の言語障害と認知症のある静かなお婆ちゃんで肥満。4 年目の終わりから誤嚥によらず体重が減少し始めた。その特徴は 1 年に 1-B.M.I. 程度の軽い連続減少であり、その領域が肥満域にあることである。B.M.I. の低下が軽く、肥満域にある場合は、まず死亡することはナイ。

♣ 症例 B は 85 歳で B.M.I. は正常域にあるが、B の印のところで誤嚥、プラス 1 年間で 4-B.M.I. の低下をみて死亡した――つまり B.M.I. の位置が正常であっても、その低下スピードが毎年 4-B.M.I. を越える場合には死亡の可能性が高い。症例 CD は 97 歳と 96 歳の高齢で、いずれも B.M.I. が正常値以下の領域にあって 3 ~ 4 年に亙り右下さがりである。定規による延長線が 「12 近辺」 のラインと交わる時点で亡くなった。

♣ つまり B.M.I. はその位置が十分高ければ その変動によって死ぬことはない;また 1 年に 4-B.M.I. を越える強い低下は死を覚悟する; さらに低 B.M.I. 領域でコンスタントに低下が続くときは 定規による延長線上での死亡時期が現実となる。1908字

要約:  認知症老人の元気さを推定するためには 「正常な B.M.I. の経過」 を観察する方法が有効である。 B.M.I. は平時に大きな変化を示すことは少ないが、1 年間に 4-B.M.I. を越える直線的低下のあるとき、それは 「死の兆候」 となる。その場合、定規で延線してその期日を推定しよう。 特に 「誤嚥」 の後に直線低下があって、B.M.I. が 「12」 に近づくときには、“死の狭間” であることを予想する。 老人独特のいろいろな臨床トラブルがあっても、B.M.I. が 20 以上を保っていれば、まずはまず 死の訪れとは無縁である。

参考:  新谷: 「体格指数 (B.M.I.) から見る生と死の狭間」;老人ケア研究、No.33, page 13~23、2010.
なお、インタネットで頭記のタイトルを単純に打てば、入手することができます
1 ) 新谷: 「天寿の終点は B.M.I. = 12 」、福祉における安全管理 # 33, 2010. 2 ) 新谷: 「安息の心と B.M.I 」、ibid # 94, 2011.
3 ) 新谷: 「安息の心と B.M.I.」、ibid #742, 2019.

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