(85) 寝たきりのひみつ

 (85) 寝たきりのひみつ 
  
  みなさん、命が懸かっている「三つのこらえ」を考えてみましょう。① お釈迦様が修行なさったように、「絶食」は何日間こらえられますか? たぶん、せいぜい20日程度でしょう。② 次に、「水なしの生活」は何日こらえられますか? 多くの災害記録では10日と言っています。③ 最後に「息こらえ」は何分できますか? この実験は簡単で、腕時計を相手に 息こらえをすればよいのです。30秒?1分?2分?息こらえになれた海女(あま)さんは5分くらいできるそうです。

♣ 息こらえをしていると、肺の中の酸素はだんだん減っていきます。空気は 酸素を20%ほど含みます(残りは窒素)。普通の状態では、吐き出す時の酸素は5%ほど減って15%程度です——だから、息を止めていても、まだ利用できる酸素は肺の中にあるのです。しかし、時とともに肺の中の酸素は減り、酸素欠乏に陥り、苦しくなります。それが続けば「窒息」です。

♣ さて、脳は酸素を大食い します。それだけに酸素不足に対して敏感であり、実際、脳に行く血流が「4秒途絶えると失神」(=大脳の機能を一時的に失う)、「4分途絶えると植物状態」(=その他の脳の機能も回復困難)になります(4秒4分の法則)。だからこそ「救急蘇生」では、秒を惜しんで息を吹きいれ、胸を押すのです。

♣ ところで、よく聞く「脳死」と「植物状態」とは どう違うのでしょうか? 30年以上前、「死」とは単に「息を引き取ること」でした。ところがその頃、「臨床的に信頼できる呼吸器」が発明され、人の死への流れは一変、死を延期する医術が工夫され始めました。呼吸器を付ければ生きていられる状態を「脳死」(=大脳機能は消失)と呼び(脳死は臓器移植医療に伴って作られた言葉)、呼吸器をつけなくても生きられれば「植物状態」と呼びます。(→ 末梢神経麻痺を除く)。

♣ では、「寝たきり」は どう位置付けされるのでしょうか? 「寝たきり」は欧米の言葉に翻訳することが困難です(bedridden?)。寝たきりは、進行した認知症や老人性衰弱の植物状態の全てを含み、基本的には全介護を必要とする状態です。その対応法は「医療」よりも「介護」です。私が以前、スエーデンやイギリスの施設を見回ったとき、彼らの介護の原理はこうでした:「お年寄りには 枕元にパンとスープをお運びします;自分でそれを食べられなくなったら、その方の人生は終わりです」。つまり、彼らは「自己摂食を生命の基本」として理解するようです。このことは、どの動物でもそうですね。なるほど、動物は「介護」をしません。つまり、「寝たきり=> 植物状態 => 死」と解釈するのでしょう。

♣ でも、「寝たきり」という言葉を私は子供の頃から覚えています。それは たぶん、中風のお年寄り、または肺結核の末期の人を呼んでいたと思います。今の日本には、食事介助・IVH・胃瘻・人工呼吸器などのおかげで、もっと沢山の 高齢の「寝たきり」がおられます。さて、日本とスエーデン、あなたはどちらの国に住みたいですか?

職員の声

声1: 欧米で寝たきりがいないって、信じ難いです(係り:日本の1/10~1/20程度はあるようです)。

声2: 自己摂取不能の人を助けなけないのならば、ヘルパーの活躍の場は減ります(係り:パール特養では、全介食が43%、半介食が16%、自力摂食は41%に過ぎません。

声3: 「寝かせきり」という別な状態もあります;どんな状態でもよいから、生きていて欲しい という家族の意思を無視できません。私はスエーデンより日本を選ぶ。

声4: 宇宙論で世界一人気者のホーキン博士は「寝たきり」ではないの?瞳(ひとみ)の力でワープロを打つというからには、知能があるわけだ、誰かが介護しているだろうけれど、立派に生きている(係り:彼は脳に故障はなく、末梢筋肉の変性・アミトロです)。

声5: 食べられなくなったら放置するのが西洋流なのですか?まるで「早く死ね!」というようです;人の死は野生動物の死と同じではありません;人間だからこそ「介護」があるのだと思います。

声6: ケアする側が「その方の存在意義を理解」すれば、たとえ食事介助してでも「肉体が存続することの意義」はあると思います(係り:あなたの優しい心に感激します;もし日本のやり方に問題があるとすれば「ヒト・モノ・カネ」ではないでしょうか?日本人は一年に約110万人死にますが、シンプル計算で、一年500万円、一年延ばすごとに5兆5千億円かかります)**

声7: 30年前までは、長男の嫁が主に親の介護の役目を果たして来ました;今の介護保険制度は 家族介護だけではないので、涙が出るほど有難い制度です、この制度に欠点があるとすれば それを補って行くことで これを継続されることを望みます。

 参考:パールの安全管理 #40 食べられぬならムリせず。 **: #3: ソロモン大王の介護。 
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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