(91) 老衰とは

 安全管理 (91) 老 衰 と は ?   

今日は「老衰死」について考えましょう。いまから60年前まで、日本人の死亡順位の第一位は「結核」、次は「栄養失調」でした:今で言えば、開発途上国並みの病気で日本人は死んでいたのです。その わずか30年後の死因順序は (1) ガン、(2) 心臓病、(3) 脳卒中、(4) 肺炎、(5) 自殺、(6) 水の事故 . . . となりました。今でも、その基本は変わってはいません。このうち、65歳以上で統計を取ると、一位は「肺炎」です。お年寄りは「肺炎」で死ぬのです !

♣ パールでは特養の定員50名に対し、いま一番新しい番号の方は179番;つまり11年で129名が死亡されました。 特に初期のうちは病院に移られて亡くなっているので、正式な病名は不明ですが、パールでお看取りした方々の初期の病名は ほとんどが「心不全」でした。上記の分類によると (2) 心臓病となります。しかし、実態は無限に「老衰死」に近いものでした。では、なぜ昨年亡くなった森繁久弥氏(96歳)のような有名人の病名 =「老衰死」とならないのでしょうか?

♣ 30年ほど以前まで、東京都は都立老人病院付属施設で 身寄りのない貧困なお年寄りを引き取り、亡くなるまで無料で お世話をしました。福祉目的でしたが、死後の解剖を条件としていました。つまり、お年寄りはどんな病気で死ぬのかを、100% キチンと研究したのです。解剖によって臨床診断より ずっと正確な診断が可能となり、市中の不確かな「老衰」という診断を排除しようとしたのです。ところが、あにはからんや、 2% 程度の例で「老衰」としか言えない状況が明らかになり、頭を抱えこむ事態になりました。つまり「老衰」という実態の存在を認めざるを得なかったのです。

♣ しかし「老衰」の「老」とは、何歳を念頭に置けばよいのでしょうか?昔は還暦60歳を迎えて中風や癌になって死ねば「老衰」で文句なく通りました。しかし、今は超高齢社会であり、医療も進歩しているので、たとえ超高齢者であっても正しい「死因」が求められます。よくご覧ください;上記の死因 (1)~(4) は、みな「内科疾患」です。つまり、人が「死ねる」病気は、極めて限られており、それらから外れると法律的に“オヤ?”と不審がられます。だって、眼科や精神科の病名では、事実上 死ねませんね。最終死因は「癌」や「心不全」、「肺炎」が妥当になってしまうのです。また 病院で「老衰」ならば、世間様は“手を尽くした後の病名だろう”と思って、疑いません。しかし、家庭や施設で「老衰」ならば、“手抜かりがあったのではないか?”と不審の念を抱かれることもあるのです。検察の目もあります。まだ日本の社会は成熟していず、家族が家庭で看取ることに問題を抱えているのです。

♣ 最近のパールでは、特養・在宅ともに ご家族による「お看取り」が主流になってきました。もちろん医師・看護師・介護士の連携があってこそです。これには「ご家族の希望」「インフォームド・コンセント」「納得の行く経過」などが必須です。また、パール独自の研究で、「体格指数(BMI)の経過が徐々に12に近づく」という臨床背景も必要です。それによると、「老衰死」の実態は、かなりの確率で「誤嚥性肺炎」がきっかけで、食事が進まない経過であることが分かりました。たとえ「胃瘻」をつけてもBMIは低下して行き、それが12になれば、天寿の終わりが訪れました。

♣ 「老衰」とは、さびしい言葉ですが、最近の老年医学会では「衰弱を伴わない老化が可能」であり、それが学会の大きな目標になっているそうです。森光子さん(92歳)の元気なお芝居や日野原重明さん(99歳)の定期刊行「生き方上手」をみると、ほんとに さわやかなたたずまい を目の当たりにすることができます。
  
職員の声

声1: 暦の上で老化があっても、衰弱がなければ、何の問題も生じないのですね(係り:その通りです !)。

声2: 私は自宅での老衰死が一番理想的と思います;ペースメーカーや胃瘻は嫌です(係り:要介護5になると、自分の意思は消えてなくなり、家族の意思に従うほかはありません;現実は「ボケ勝ち」**なのです;自分の意思で胃瘻をつける人は稀でしょう。

声3: 老衰とは「ロウソクの灯が徐々に消えてしまうようなものだ」と思うに至りました(係り:もう体の中に エネルギーを燃やす力がない、という意味ですね;それはパールにおける“BMIの研究”で判明したようです;つまり正常なら体格指数が(BMI)≒ 22以上あるのに、それが 12 にまで低下したら、もう燃えるべき命が残っていない、と推定できるのです)***

声4: 老衰死と言っても、医学的な死因をなるべく特定して欲しいです(係り:人生50年の時代には それが可能でした;ところが 人生100年になると 病気~寿命~天寿の違いが不明瞭になりつつあります;多くの場合の第一死因は“反復性誤嚥性肺炎”のようです。

声5: 老衰とは「内科疾患」なのですか?私は 苦しまないで死ぬのが「老衰」と思っていました(係り:要介護5になれば、基本的に、誰も苦しまないで死ねます;なぜなら「時間の感覚がなくなり、死の意味が分からなくなる」からです;あなた、まさか「眼科疾患などで死にたい」とは思っていないでしょう?:死は「神様の科」です、神様のご名代として「内科」がそばに勤めているに過ぎません)
 
参考:パールの安全管理 #33: 天寿の終点はBMI=12.0。 **#31: ボケ勝ち。***:BMIから見る生と死のはざま:新谷冨士雄・新谷弘子、老人研究 31:13~23, 2010(パールのホームページ——{社会福祉法人パール}を呼び出し、“ふじひろのページ”をクリックして見ることができます)。
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Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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