(95) アル・マータ宣言と日本

   (95) アル・マータ宣言と日本  

  アルマ・アタ (Alma Ata) は 旧ソ連邦のカザフ共和国の首都の名前です。ソ連崩壊後、今はアルマティ(Almaty)と名前を変えました。カザフ共和国は中国の最西端・タクラマカン砂漠の西にあり、ロシアがロケットを発射する場所として有名です。今を去ること43年前 (1978年)、「世界保健機関・WHO」はアルマアタ市で 世界143ヵ国の代表を集め、プライマリ・ヘルス・ケア(基本的保健管理)について討論をし、「アルマ・アタ宣言」という当時では有名な 歴史的な宣言を出しました。

♣ アルマアタ宣言は10条よりなります。詳しくはネットで見てください;ここでは その概要と、日本の現在でも意味のある内容について検討します。さて、参加の143ヶ国の ほとんどは「先進国」ではありません。したがって、このアルマアタ宣言は「発展途上国が先進国に過剰な援助を期待すべきではない」という匂いを持っていました。と同時に、先進国といえども、自国内の医療に過剰依存をすべきではない、という匂いも持っています。

♣ 「基本的保健管理」の概要は次の六つです:① 自助と自決の精神が必須、② 地域社会 or 国が、開発の程度に応じて、③ 負担可能な費用の範囲内で、④ 地域社会と家族の十分な参加によって、⑤ 普遍的に利用でき 科学的に適正で、⑥ かつ社会的に受け入れ可能な「手順と技術」に基づくこと。

♣ さて、アルマアタ宣言は現在の日本の介護についてたいへん示唆的です。順を追って検討しましょう。①と②は 先進国の日本、大丈夫でした、が、この数年 波乱含みです;文末に述べます。③ は大きな矛盾を抱えています。国民は 保健管理を ほぼタダで、と望んでいますが、それは無茶です。私は50年前の病院・家庭のあり様を知っていますが、それは「人生50年時代にふさわしい質素なもの」でした。ところが「人生90年」の現在、負担可能の範囲は大幅に越えられています。④ については、「家族の参加」の意味は すっかり変わりました。家族が居ても「独り暮らし」、家族とは言うが「老々家族」、家族があっても「施設まかせ」の方があります。

♣ ⑤ も問題をはらんでいます。人間は 誰しも強欲ですから、長生きすればするほど、不平不満の人が増えます。さらに、代替医療費は空に舞い上がり、テレビ広告は お年寄りの懐から小遣いを召し上げます。

♣ ⑥ の「手順と技術」は すっかり変わりました。昔の「医療」はおとなしい「お仕着せ」の流れでしたが、今日の流行は「自己選択とテーラーメイド」で、格段のお金と手間が掛かります。また 「介護」は新時代の「保険」となり、家庭での負担は楽になったものの、介護の財源は将来の子供たちからの借金が主力です。これが社会的に受け入れられる手順だ と言えるでしょうか?

♣ さて、大きな問題 ①②③も近づきつつあります。つまり団塊の世代が高齢化し、介護の対象者が今後15年間は増え続きます。現在でさえ介護経費は毎年一兆円以上も増え ていますが、今の政府のマニフェストでは 新規の財源確保は困難でしょう。「働かざる者 食うべからず」と言えば 身も蓋もありませんが、やはり なんと言っても、日本の平均寿命90歳の重みは強力なものなのだな、との実感です。

♣ こうして見ると、アルマアタ宣言は43年まえのものですが、今日の日本へも良い示唆を与えているように思えます。

職員の声

声1(19歳女子): 団塊の高齢化のなかで少子化が進んでいます、少しでもこの方向を変えて行きたいです(係り:生活レベルが上がれば少子化が常となる歴史がありますが、あなたはすぐ出産適齢期です、3~4人を産む気魄(きはく)を持って下さるよう お願いします)。

声2: 薬や老人ケアの需要がどんどん伸びています(係り:持続可能な範囲のレベルで対応しましょう;背伸びし過ぎたサービスにならないためには どうすれば良いでしょうか?)。

声3: 介護の家族負担金を減らすとは、他人の僕の給料から天引きされる と言うこと、ハッキリさせたいです。

声4: 介護は社会の大事な「資源」です、不要不急なものに向けるべきではありません(係り:アルマアタ宣言は決して半世紀前の古文書ではなく、100年後を見据えて作成された「すぐれもの」の印象です)。

声5: アリセプトは一錠450円、月に14万円にもなります、さらに新薬発売が続き、喜び・驚きともどもです(係り:それに必要な経費は子供たちの将来から徴収する予定になっています)。

声6: アルマアタ宣言の骨子は ① 発展途上国は先進国に過剰な負担を期待しては困る、という意味を根底に宿しています;これをさらに説明すると—— ② 国民は国家に過剰な援助を期待しては困る、と取れます;さらに ③ 要介護者は家族に過剰な負担を強いては困る、となります--—現実には老々家族・独り暮らし家族が増えているのに ですよ;④ 政治家は国債発行のみに過剰な期待をしては困る、と私は言いたい;つまるところ「国民も政治家(国)も、「自立・自律」が期待されるのだ、と学びました。

声7: 「働かざる者 食うべからず」—— 日本全体がこの趣旨を真面目に認識しなければなりません(係り:親は子を育てるために苦労して死ぬのが天然界の生命です:ヒトだけが親を生かすために死に物狂いします—— これは日本の儒教(じゅきょう)精神に基づくものですが、インタナショナルに受け入れられてはいません)。

声8: 昔 私がこの宣言を学んだときは、女性の進出・祖父母との同居など 今とは格段の相違がありました;今 勉強し直すと この宣言は別な意味を持ちます;これは ずるい役人たちの予言であって、先行き 弱者と老人はきつい社会に住むことになるぞ、と脅していたのかも知れません;私は今、目の前にいる高齢者が 健やかに過ごせるように、微力ながら頑張っていきます。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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