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(102) 説明と同意の書 (I..C.)

(102) 説明と同意の書 (I.C.)

現在のパールの特養運営において「説明と同意の書」(Informed Consent, 以後I.C.と記す)は極めて標準的なプロセスであり、何も特筆すべきことは無いと思います。ところが、今日の演題はパールの介護福祉士 * が、パールのケアカンファの特別演題として発表したところ その内容に一般職員の反響がとても多かったの です(会議出席者51名中40名がこの演題に意見を提出、一位)。デイザービスや在宅介護の職員にとって I.C.に関する知識は、ふだん縁遠いものと思われ、これに関する関心の高まりを共有するのが適当だと考え、ここに この問題を取り上げました。

♣ 今ではI.C.という立派な名前を貰っていますが、私の若い頃(50年まえ)は これを“ムンテラ”と呼んでいました。これは和製ドイツ語で、“Mund (ムント:口)+Therapie (テラピー:治療)をつづめて“ムンテラ”です。つまり、患者さんやご家族に「病状を口頭で説明し、治療方針の了解を求める」という行為のことです。その内容はカルテに記載されますが、印鑑を取って正式な書類にすることはなかったようです。

♣ 患者さんとの最悪の人間関係は“不誠意なムンテラをすること”——例:すぐ治りますよ;なかなか大変ですよ、など。次に“ムンテラをしないこと” ——例:何にも言わないで処置に入る、など。一番良識的なのは“誠意あるムンテラをして意見と了解を得る”ということです。外科系などの「手術」をする科では「手術承諾書」がムンテラの役目を果たしていました。

♣ 時代がうつろい、1990年のころから このムンテラを「書類として残す」ようになりました。訴訟大国のアメリカの影響で“Informed Consent”という名称が日本医師会で取り上げられ、現今に至っています。その形式と内容は医療施設や介護施設で異なります。今日はパールで 開所以来用いて有効性の分かっている書式内容を説明します。(書式のサンプルを写真版にすると 読みにくいので、次回の安全管理 # 103 で、活字としてお示しします。)

♣ ご存知のように、特養パールは医療を行う施設ではありません。しかし、ご高齢の入所者は いつ重大な体調の不調を起こされるかわかりません。その時にどのような対応をするかを あらかじめお伺いします。これは「ご希望の書」として任意に取り交わします。細かい内容は別として、医療に関する方針の希望は、① 病院を利用するor しない、② 経管栄養を希望する or しない、③ 救急蘇生法を適用して欲しい or 欲しくない

♣ ご入所者は65歳~100歳以上の方、そのうえ 様々な医療歴をお持ちですから、ご家族によって①②③を全部希望される方から、全部 不希望の方まで色々で、私どもは特養の使命によって、ご希望に沿うようなケアを行います。また、経過の観察で「御見送り」が近づいたことを示唆する徴候が現れたら、本格的な「インフォームド・コンセント」を行います。

♣ パールのI.C.の特徴は参加するスタッフが「医師・看護師・介護士・理事長・施設長・栄養士・特養相談員」の全部が揃う ことでしょう。また ご家族は なるべく近親の方全員の同席を求めます。その流れは:① 現在の状態の説明、② 今後の予想、③ どんな選択肢があるか、④ ご家族の意向の確認と⑤ 書類作成 です。大事なポイントは、できるだけ「やさしい言葉や表現」を選び、ゆっくりと、ご家族が十分「理解・納得」して頂けるようにします。また、もう一つの特徴はご家族の希望は「お申し出により、随時 内容を変更できる」という点です。誠実に話あう中で、ご家族との信頼関係をさらに深めて行くこともできます。

♣ パールでは12年まえの開設初期では、多くの方々が「病院に移って」お亡くなりになりました。当たり前のことですが、病院とはその職務として「最後まで治療に専念するところ」です。したがって「お別れ」のひとときには、ご家族を病床から離さざるを得ないこともありましょう。しかし、パールではお看取りのI.C.を行うようになった8年まえから、ご家族は病院よりもパール滞在を希望される方が増えました

♣ パールでお看取りをするのを見ると、ご家族の皆さま方は 逝く人の手を握り、声を掛け、頬をさすり、深い感動のうちに 心行くまでお別れをなさいます。そして、そのあと、私どもに深い感謝と満足の言葉を語られます。例外はありませんでした。関係者一同は 憂いと悲しみ、そして安堵のひとときを共有します。これこそパールの誇りであり 命であろうか とさえ思われます。

* 参考:高橋浩宣、44歳、法政大学卒、介護福祉士、特養相談員:火曜討論にて 2011.1.4 発表

職員の声

声1: ちょうど私が生まれた頃 インフォームド・コンセントが日本に紹介されました;今後もその重要性を頭に入れ、本人・家族の意向を取り入れて行きたいです。

声2: 私は外科手術の時だけにI.C.が行われるものと思っていました;パールの特養でI.C.を取り交わしているとは“初耳”でした;高齢の利用者の今後の方針を相談できるなんて 有難いことです。

声3: I.C.のサンプル・プリントを初めて見ました;「特養でできること、できない事」など明瞭に書かれています;職員の説明と共に 分かりやすく、ご家族は安心なさるでしょう。

声4: 親の病気を「理解」できても、「納得」は困難です、多くの方が「不条理だ」とつぶやかれます;I.C.を担当する方々は難しい職務を全うしておられますね。

声5: 自分の親の場合、どのような説明を受けるのか、自分の質問・疑問をどう表わせるのか、不安を感じました;他の施設で I.C.のトラブルがあるとも聞いています(係り:パールでは参加者の顔ぶれが豪華です:医師・看護師・介護士・理事長・施設長・栄養士・相談員などが 複数のご家族と一緒に集まり、互いを尊重しながら話し合います;他に類を見ないでしょう;たった一人でやるI.C.とは格調が違います;いまだ パールではトラブルもクレームもついておりません)。

声6: 私はDr.や理事長のお話の進め方から多くの事を学んでいます;パールの「説明と同意の書」は介護業界の標準になるかも知れません。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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