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(109) 長寿とアポトーシス

  (109) 長寿とアポトーシス  

  望遠鏡でみると、月の表面には無数の穴凹が見えます。人が月に到着する前には、これら「月のアバタ」の説明として「火山説」と「隕石(いんせき)説」があり、両者はあい譲りませんでした。ところが1969年、人が月の上に到着してみると、「隕石孔説」の正しいことが分かりました。20世紀前半までは、推理小説で「月の人」を想定した物語がフアンを楽しませてくれましたが、想像の喜びが一つ減った結果になりました。それでも、まだ金星人や火星人の存在がSF小説の題材として残っていましたが、今では、それらさえ否定されています。人間は「地球」にしか存在しない ようです。

♣ でも何だって「人」は地球の上に生きているのでしょう? 宗教家は「人は がんらい、あの世にいた;現世にいるのは仮の姿である;よって、またあの世へ戻るのは当たり前である」と説明します。哲学者アリストテレスは言います:「万物は“水・火・風・土”の4元素より成る;形あるものは、元の4元素に戻る」。このように、生き物の存在の説明は多くの人たちを悩ませています。19世紀後半からの科学の発展とともに、悩みは促進されて来ました。地球外生命の研究を“セティ”と言います (SETI) 。欧米では、ますます熱心にSETIが討論されています。しかし、何だって人は生まれ死ぬのですかね? 私もよくは分かりませんが、今日は、ヒトではなく「細胞が死ぬ理由」を紹介します。

♣ 約38億年もの昔、細胞は地球で自然に発生し、分裂・進化を始めました。生命にとって細胞分裂(繁殖)が必要なように、プログラムされた細胞死(アポトーシス)も必要なのだそうです。だって、もし死がなければ、地球は生命で覆い尽くされ、足の踏み場もなくなります。そこで細胞には寿命が設けられ、遺伝子の働きで 死滅する時期が決められます。細胞が死滅する方法は“二つ”あります。それは ① 壊死(えし)と ② アポトーシス(計画的細胞死)です。

① の壊死は分かりやすいです。つまり、細胞が「外力・有害物質・栄養・酸素など」の要因で死滅させられるものです。お年寄りの介護で一番問題になる「床づれ」、あるいは「誤嚥性肺炎」は壊死の典型です。あなたが正座を続けていると足がしびれますね。それは、足への血流・酸素不足の警告で、放置しておくと足は壊死に陥ります。

② の計画的細胞死は、例で示しましょう:オタマジャクシは育つにつれシッポが消えますね。これは遺伝子の計画によって、シッポが溶け、体の栄養にされ 大人になるのです。私たちも胎児の頃、手はミトンのように「うちわの形」をしていました。遺伝子の計画に従って各指の間の組織が溶け、5本指ができました。女性でいえば、月経の初めに起こる子宮内膜の剥離(はくり)は細胞のアポトーシスによっています。アポトーシスは、死滅させられるのではなく、体全体のために「組織が自から死ぬ」のです。

♣ 私たち 個体の死は、各種の臓器の壊死・計画死によってもたらされますが、また、永い長寿の場合には細胞分裂回数の極限到達2, 3) という機序も参加します。細胞繁殖があるところ、必ず細胞死があります。もしその機序がない体があるとすれば、細胞は無限に増えつづけ、それは つまり「ガン」に他なりません。心配しなくても、長寿にはアポトーシスなどが付きもの;生命の仕組みはうまく出来ていると、達観(たっかん)できますね。
  
 参考: 1) SETI (セティ)= Search for Extraterrestrial Intelligence (地球外知能生命の探求)。 2) 福祉における安全管理 #92 : ヘイフリックの回数券。 3) 安全管理 #99 : 人はなぜ死ぬのか?

職員の声

声1: 細胞が死ぬのに、①「外因によって死滅させられるもの = 壊死(えし)」と ②「自分から進んで死ぬもの = アポトーシス = 計画死」の2種類があることを知りました(係り:壊死 + 計画死の両方が発生すると、個体の死が生じます)。

声2: 自分の想像つかないところで細胞はプログラムされた通りに生きているのですか?;生物って本当に不思議です(係り:ヒトは10歳前後で歯が入れ替わったり、髭や生理が始まったりします;これらは皆 自分で決めることではなく、遺伝子でプログラムされています;老衰のアポトーシスも同じ原理です)。

声3: 興味深いお話しです;私は何も知らないのに、体は勝手に細胞レベルで頑張っている;私の「脳」は 私の「体」を借りているのだと思う;だから私の「脳」は「体」をいたわり、磨いてあげようと思う。

声4: アポトーシスの必然性はよく分かりました、よって私も人間として日々の老化は必然だ と知りました;ご利用者の老化も同じ流れの上にあるのですね(係り:Yes, yes !)。

声5: ガン細胞には寿命がないのですか?(係り:ガン細胞は宿主の指令を受けつけず、増える一方です;しかし宿主は、いずれ ガンによる栄養失調ないし老衰で死にますから、死ねばもろとも、です)。

声6: ご利用者のアポトーシスは見えないので防げませんが、 「床づれ」は組織の壊死だから、大きくしないように努めます。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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