(144) 津波 と トリアージ

(144) 津波 と トリアージ (Triage)
          
トリアージとは、人材・資源の制約の著しい災害医療において、最善の救命効果を得るために、多数の傷病者を重症度と緊急度によって分別し、治療の優先度を決定する操作です。トリアージ(triage)の原語はフランス語で“選別”(英 = selection)という意味です。6年前の「JR西日本の電車大事故」では、消防署の被災者支援が「トリアージ」に沿って行われたことが特筆に値しました。

♣ しばらく忘れていたのに 4/21 、テレビで久しぶりに「トリアージ」の話題が紹介されていました。今回は もちろん ご存知、東日本大震災についてでした。地震による津波のため あちこちの市街地は一面の瓦礫(がれき)に変わってしまいました。あの 3.11 から もう6週間が経とうとしています。朝日新聞は この情景を短く伝えています:人の姿は絶え、牛は飢え、犬はさまよう —— 作物は枯れ、見る者のない花だけが咲く —— 結局 チェルノブイリと同じこと。でも やっとトリアージの旗が瓦礫の中に立ち始めた、という明るいニュースが入りました。そこでトリアージの「おさらい」をしておきましょう。

♣ その前に、戦(いくさ)で人はどう死んだのか を見ましょう。700年前(1333年)鎌倉幕府を攻めた新田義貞にった よしさだ)は鎌倉の西・稲村ケ崎に迫りましたが、海に阻まれて市内に入れない。彼は海神に祈り、刀を海に投じると潮が引いた。その隙に市内へ侵入、幕府を壊滅させました。私が学生の頃(1953年)近くの材木座で、その戦いで死んだ兵士たちの人骨910体が発見されました。このことを当時の新聞で読み、人の死が 身近に感じられ 気持ち悪かったです。刀傷で死んだのでしょうか?頭蓋骨に墨で念仏が書き込まれたものもあったそうです。北条時宗(ときむね)の僧が弔ったものとされます。

♣ ごく近年では、西南戦争(1877年)。上野公園の西郷隆盛が時の政府軍と 九州の田原坂たばるざか)で戦い、政府軍の死者6000人、西郷隆盛側の死者2万人と記録されています。傷の手当てを含めると10万人を越える大災害でした。この時、日本政府は男子の看護者で対応しましたが、世界の趨勢から学び、10年後の「日本看護婦養成事業」にのりだしたのです。悲惨ですね、近代医学のなかった時代に 槍や刀で傷つくと、人々は何をどうして対応したのでしょうか?

♣ 外国の例では、ナポレオン戦争を挙げましょう(1800年前後)。その頃には、戦いでの重症者は見捨てられ、戦線復帰の可能性のある者のみに医療資源を投入する「差別型トリアージ」が始まったとされます。その50年後のクリミア戦争(1853年)では 従軍した兵士の死亡率は50%にも及びましたが、あの有名なナイチンゲールが看護の腕を振るい、死亡率を 5% に下げた ことで世界的に有名です。それほど、事件があるたびに、人々は大量に死んだのです。

♣ さて話を戻して、近代的なトリアージは 多数の傷病者が発生したとき、治療の優先度を決めるために次の四つの選別法を取りました。① 赤色:最優先、治療によって救命可能な状態。② 黄色:待機的、多少治療が遅れても命に危険がないもの。③ 緑色:軽処置のもの。④ 黒色:死亡したもの。混乱した現場では、何をどのように始めたらよいのか、途方に暮れます。そこでトリアージ実施責任者が ①~④のトリアージ・タッグを右手首関節に付けます。医療者は その色に従って手当てをすれば良いのです。

♣ 私がここでトリアージの話を思いついたのは、昨日のテレビの紹介です。本来の「体の傷」ではなく、「生活の場である家についてのトリアージ」で、①~③の旗が上がっているのを見ました。① 赤色の旗は「我が家に住み続けたい」、② 黄色の旗は「我が家はゴミだらけで住めない、それを取り除いて欲しい」、③ 緑色の旗は「どうにもならん、我が家を取り壊して欲しい」だったかな? まあ、なんと素敵で ほほえましいトリアージなのでしょう !! このような旗色の群れを見れば、関西や東京から訪れた建設援助隊は どこにどんなニーズがあるかが 一目瞭然、順序だった有効な援助が進められることだと思いました。

♣ 災害は 今も昔も 大きな傷跡を残します。皆さん方、現代の智恵がどれほどのものか、記録を読み、話を聞き、画像を見ながら 被災者たちの思いを洞察してみては いかがでしょうか。

職員の声

声1: 災害時の 傷の手当てに対して「トリアージ」という選別法があることを初めて知りました;これによって、より多くの人が助けられます。

声2: なるほど と思って聞きましたが、これが昔からあったとはオドロキです(係り:ナポレオンの時代は200年前、ナイチンゲールの時代なら150年前の歴史です)。

声3: 私もテレビでトリアージを見ました;私はトリアージに大賛成です;その理由は、緊急時に「判断する能力と処理する能力」は別のもの だと思うからです;平時であっても、「介護の計画とその実務活動」は別であるのと似ています(係り:災害時の援助行為を有効にするためには「薄く 広く 平等に」ではなく、「差別を付けて集中して」が求められますね)。

声4: トリアージは素敵ですが、それによって被災者が差別を受けないように期待します(係り:病院の救急室を見ると、修羅場(しゅらば)に耐える心でない限り、やって行けません——「生きるとは二者択一」です、「玉虫色の判断」で ゆっくり考えていては 全てを失いかねません)。

声5: 私は 秋葉原の無差別殺人事件で 私は初めてトリアージを知りました:それによって「傷が浅い」と選別された負傷者が 治療の遅れのために死亡、その家族がトリアージの選別者を責める様子をテレビで見ました;だから トリアージの意味の普遍性を国民に周知させるべきです(係り:人の体の傷を判断する“選別者”は大変なストレスに耐えねばなりません)。

声6: 少数者の死なら 個別に対応しましょう;でも、あれほど多数の死を扱うのであれば、トリアージに匹敵できるシステムはないと思います

声7: 今回の話題は「体の傷のトリアージ」ではなくて、「家屋の被害」を自己申告するものでした;困っている人たちが それぞれ助けを呼んでいる風景が目に浮かぶ思いでした(係り:トリアージの利点・欠点の両方を学ぶことができましたね)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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