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(151) 残存機能の保持

  (151) 残存機能の保持   

 「残存機能の保持」とは美しい言葉ですが、戸惑う経験をお持ちの方もあるでしょう。

入浴時に関する一つのお話をします。リウマチの ある80歳の女性、用心を重ね、二人介助で 無事入浴がすみました。浴室から脱衣所に移動して椅子に座る直前、ご本人が介助の手を断ったとたんに 転倒されました。怪我はありませんでしたが、ご本人は“自分に油断があった”と苦笑いでした。ご家族からも できるだけ手を出さないように、との要望がある中で、私どもの安全に対する 介護者の油断から事故が起きたのではないかと反省しました。「絶対に無事故」がサービスの基本であり、二度と事故のないように工夫して行きたいと思いました。つまり、この事例の場合には、後づけの智恵でしたが 本人の意思に“反し 仮に揉()めても”徹底的に“手を尽くすべき”でした。

食事介助についても私の母への介護経験で、私なりの感想があります。食事介助の基本は“なるべく自分で食べるように促す”ことであり、私は母の手が止まったところで食事を介助していましたが、その頃には満腹感を訴え、思うように食事が進まなくなりました。そこで、最初に食事介助で“ある程度の食事量を確保”してから、その後 自分で食べるように促したところ、所定のカロリーが確保できるようになりました。この例の場合、ある年齢を越えた認知症では 摂食機能に関する残存能力の保持は期待薄ですから、実務的に“カロリーの確保”を優先すべき ではないでしょうか? 私も悩みます。

♣ 「残存機能を保持したケア」を 言葉通りに実行すると、リスクも高く、危険を伴うことがあります。3 + 7 = 10 ではありますが、7 + 3 = 10 でもあり、時間切れの要素を考えると、後者の方が実務的に優れているかも知れません。

♣ 医療・看護・介護は「過剰であってはならない」1) と言われます。それはその通りですが、「残存機能を保持しようとすると、「かえってリスクが多い場合もある」ことも念頭に置き、事例ごとに あなたの判断を生かすべき だと思いました。このことは、ルー(Roux)の法則 2) として 広く知られています。

職員の声

声1:多くのご家族は リハビリをお求め で、「うちの婆様を歩かせて ! 」とおっしゃいますが、実際は「危険」と同居であり、まず「無事故」が条件となります(係り:リハは 専門施設であっても危険と同居であり、責任も大きいです)3, 4)

声2:残存機能の保持は「利益・不利益」のバランス点 をよく見極める必要があります(係り:Yes, yes ! )。

声3:私は「残存機能」という言葉を使わず、「持てる力」と考え、失った部分に焦点を当てないように工夫しています。

声4:リスクの多い介護ほど 重要なケアだと思いますが、リスクを うまく乗り越えたとしても、残るローソク(人生)を長く使い伸ばす工夫も必要です(係り:ローソクが あとどのくらい残っているかを判定するのに 「体格指数」(B.M.I.)の知識 がとても役立ちます 5) )。

声5:私は まず安全を優先;「リハビリ = 社会復帰」と学んだものの、実際には、夢のまた夢、現状維持だけで手いっぱいと知り、理想と現実の葛藤 を見つめています 6)

声6: 「正常な老化」をリハビリしようと思っては良くない!親切心とリスク」は隣り合わせです、この問題で いつも悩みます(係り: 「オーイ、お茶 ! 」と叫ぶ爺さまなら、ご自分でお茶を入れて頂きましょう;でも 進行した認知症の方の「残存機能の保持 ! 」に固執(こしつ)するのは、きっと美辞麗句びじれいく)に過ぎないのでしょうね)。

参考: パールの安全管理 1) # 74 : 介護の不足と過剰。 2) # 45 : ルー(Roux)と智恵。3, 4) # 50 : 六つの「べからず」。# 62 : 過失と責任、とくに「骨折」について。 5) # 33 : 天寿の終点は BMI = 12.0。 6) # 26 : 満足とは何?
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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