(19) 天国と地獄

ヒトは天国を夢見ます。と同時に「天国の生活は、すぐアキアキする」とも言います。

♣ 20世紀初頭、まだ人が空の旅をしたことのなかった頃、ヨーロッパでは、空飛ぶ飛行機は「益か害か」の論争があったそうです*。

♣ まず天国論:① 人が天を飛べるようになると 眺めのよさに感激するだろう、② 速く遠くに旅ができるので商人が得をするだろう、③ その結果、人々は幸せになるだろう、等々。次に地獄論:飛行機ができると、① 自分の家の庭が覗きこまれる、② 大砲や鉄砲を素早く運び込む輩(やから)が増える、③ その結果、紛争が絶えず、不幸が訪れる。この論争に加わらなかった物理学者が、こう発言しました:「空気より重いものが空を飛ぶはずがない、君たち、バカな論争をやめたまえ」。

♣ 同じ論法で、今の日本の社会を考えてみます。まず日本天国論:① この60年間、戦死者がゼロである(先進国の中で日本だけ)。② カラーTV、洗濯機、水洗トイレ、エアコンは当たり前である、③ スペースさえあれば、自家用車はあって当然、④ 体重を減らすことにお金をかけられる、⑤ 携帯電話を一人一個持って楽しんでいる、⑥ 男女とも平均寿命が世界一であり、介護保険が世界無比で充実している、等々。

♣ 次に日本地獄論:① 軍隊がないために、他国にもてあそばれる、② 親が長生きで 介護に苦労する、③ 家は狭く、ローンが重なる、④ リストラされると他の仕事がない、⑤ 携帯が普及するにつれ、子供たちが遊び回る、⑥ 物価が高く、生活が苦しい(1ドルを85円とすれば、日本の若年層の年間収入350万円は4万ドルを越え、世界的には信じがたい高所得です)、⑦ その割に高齢者の転倒・骨折は増え続け、誤嚥性肺炎と無制限ともいえる胃瘻など、問題山積です、等々。皆さん方、比べてみて いかがです?

♣ 飛行機の場合、物理学者が論争をバカ扱いにしましたが、にもかかわらず、飛行機は世に現れました。その結果は幸せでしたか? それとも不幸でしたか?. . . どちらもあったのです;人が不都合な部分を削ぎ落とす工夫をした結果、現在の飛行機の平和利用が可能となったのですね。今の日本社会も、言われてみると、実は、天国と地獄は同じものである、と理解できます。日本は長寿という意味で、天国を得ましたが、見たこともなかった念願の長寿も、結局、望ましくない地獄部分を、いかに「削ぎ落すか」の技量が問われます。私は結論的には、今の日本は天国に近いと思います。結婚と子供が増え、転倒と誤嚥が少なくなってくれれば、文句なしの「天国」でしょうが、これは無理な欲張りでしょうか? * ストレール著:航空発達物語(R.Strehl: Der Himmel hat keine Grenzen, 1965)

職員の声
声1: 誰かにとっての天国は、別な人にとって地獄かも知れません。

声2: 65年ものあいだ「戦死のない日本天国」を若者は知らず 当然と思っている、便利な携帯も悪用されれば大変、文明の有難さに無知な人が多いです。

声3:天国と地獄は紙一重で隔てられているだけ、不当な欲望を削ぎ落す以外に良い方法はありません(係り:人って、結局は賢く理解して行動しますが、もっと素早く学んで欲しい)。

声4:90歳のご利用者、「私くらいの歳になれば、歳をとることの辛さが分かるわよ」、私が「そこまで生きられる自信がありません」と言えば、初めて 彼女は明るくニッコリされました。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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