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(173) 医療の進歩が老人を苦しめる?

  (173) 医療の進歩が老人を苦しめる ?  

  昨年の「パールの安全管理」の「職員の声」の中で“医療上の発明が年寄りを苦しめている”という発言がありました。その時点では あまり問題にならなかったのですが、私の頭の中に居心地悪く巣くっていました。そこで、最近の事情を考え併せ、この問題を検討し直してみます。

♣ この内容は 主として「延命医療」です。たとえば、延命胃瘻・延命点滴・延命酸素・延命手術などでしょう。たしかに30年以前には、日本にこれらはなかったです。また、欧米では現在でもありません。すると、問題は「延命手技」ではなく、日本独特の「延命判断」であることが推察されます。そこで「延命手技」と「延命判断」のどこが どう違うのか を考えましょう。

♣ 昔、賢いお殿様は 罪人を打ち首にするとき、その判断は自分でしましたが、その実施は決して自分ではせず、処刑人にまかせました。処刑される人は 判断を下した殿様を恨むより、処刑人を恨みました。かくして、殿様は罪人の恨みから逃れることができたのです。つまり、今日の話題で言えば、延命胃瘻は評判が悪いですが、延命胃瘻の判断をした人(家族)が悪いのですか? それとも、延命胃瘻を実行(手術)した人(医師)が悪いのですか?まさか、胃瘻を発明した人が悪い訳ではありますまい。でも現実には“胃瘻”を実行した施設(病院)が恨まれます。確かに、延命胃瘻は「当の本人にとってはひどい虐待」、しかし「その判断をした家族にとっては親孝行の良い気分」;どこが狂っているのですか?困ったことですね。

♣ 五百年前、アメリカ人の祖先はインディアン達に猟銃を安く売り渡しました。インディアン達は お互いに仲が悪く、猟銃でお互いを能率よく殺し合い、その結果、無人になった土地を我がものにしたのはアメリカ人の先祖たちでした。アメリカ人たちはエスキモーに強いブランディーを 売り、酔っ払ったエスキモーは土地契約書にサインをし、その結果 土地を失いました。つまり こう言うことです:欧米人にとって 猟銃やブランディーは正しい社会的位置を持っていたのですが、インディアンやエスキモーは その正しい価値がわからなかったのです。胃瘻・点滴・酸素などは欧米では正しい適応によって正しく使われています。私たちも正しい使い方を学ぶべきではありませんか?

♣ 先月(6月8日)に売り出された「認知症治療薬 = メマリー」を考えましょう(ケアカンファ 6月28日 メマリーについて:三村陽子)。病気の性質からみて、メマリーは認知症の治療薬ではなく、アリセプトと同じく、単なる緩和薬にすぎません。お値段は一粒 427.5円、アリセプトと併用すれば 一日二粒で855円、一ヶ月で25,650円、一年で 312,075円(要介護4の一月分)です。良い効果があるのなら いいけれど、もしも親孝行の気分だけの薬なら、その薬代は 家族の負担する私費にすべきではないでしょうか?

♣ 今、別な 素敵な薬が売り出されかけています、その名は 長寿薬「レスベラトロール」。アメリカの厚生省の未認可ですが、赤ぶどう酒の皮にふくまれている“ポリフェノール”の一種で、NHKテレビでも紹介されました(2011.6.12)。その作用機序は ヒトの遺伝子の中にある加齢因子 サーチュイン(Sirtuin)をやっつけ 長寿をもたらす、と言うものです。アメリカ人は「美味しいものをたらふく食べ、しかし痩せる運動をするのはめんどう」という矛盾に悩んでいますが、レスベラトロールを飲めば、「食べて太っても 寿命は縮まない」と理解され、安心してステーキをほおばれます。レスベラトロールが本当に長寿をもたらし、アメリカ人がデブのまま、さらに大食いになるというのは、世界の食糧事情から見て、釈然としないと思いますけど . . . 余計な お世話でしょうか? なお、日本でも健康保険への認可が申請されています。自由にどっさり食べて太っても、寿命が短くならない薬、といえば 人気が出ないハズがありません。

♣ でも、単純で素朴な疑問です . . . そんな薬を開発して良いものでしょうか? 医療や製薬の進歩が年寄りの数を増やし、苦しむ年寄りも増えることはないでしょうか? 長生きすることは 人々の望みです。でも 長生きは 「喜びも苦しみも抱き合わせ」になるのでは ないでしょうか? 苦しみがあるからと言って、医療の進歩を責めないで下さい。所詮、「生きるとは 二者択一」なのです。 
   
  参考: パールの安全管理 # 18 : 賢い?ずるい?もの知らず? 

職員の声

声1: 医療の進歩が「本当に」年寄りを苦しめているのでしょうか?もしそうなら、お年寄りが病院に行くことは無意味です(係り:実際には、昔の人生50年が人生90年になったため、お年寄りは 生きる喜びと苦しみの両方を感じておられるのでしょう)。

声2: 「こうしないと助からない」と医師が家族に胃瘻の説明をする;分からないから家族はそれに従う;つまり延命胃瘻悲劇の責任の大部分は医師にあると思います(係り:医師にも“言い分”があるでしょう;つまり、栄養をあげないまま放任すると「触法」(しょくほう)となり、検察に逮捕されかねません)。

声3: 延命の見極めは難しいです;「元気で長生きする」のは何も問題ありませんが、「病気で長生きの人」を我らの税負担でやるべきでしょうか? 少なくとも高齢者延命の技術開発は不要です(係り:総論では異議なし;でも たいてい各論(我が親)で意見が変わります)。

声4: ご利用者の御嫁様が「延命医療は果たして必要なのですか?」と悩んでおられます(係り:仏様なら どう判断されるでしょうか、と説明したら?)。

声5: 延命は本当に必要なものを見極めるべきです(係り:必要な延命かどうかの判定基準はありません;多くのご家族は「延命は親孝行だ」と考えますが、「当の親」は延命虐待の苦しみ を耐えることになるでしょう)。

声6: 科学の利便性を正しく享受すべきです(係り:例に引きだした“猟銃やブランディー”、さらに“原子力や胃瘻技術”は欧米では「まっとうに」使われています;しかしインディアン・エスキモーや日本人は これらを民族自滅の道具としての悪用現実があります;大事なのは 技術を使う英知と良識ではありませんか?)。

声7: 私のご利用者宅では、経口摂取の方・胃瘻の方 いずれもあり、どの方も植物状態ですが、ご家族は誇りを持って介護をなさっています;30年前に比べて、現在は「生きにくく、また死ににくい世の中」になったような気がします;命の最期の一滴まで生き抜くことが 難しくも大切だ とつくづく思います(係り:あなたの感性に共感です ! )。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
安全管理 ふじひろのページ

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