(176) 神は無謬(むびゅう)なり

  (176) 神は無謬(むびゅう)なり 

  無謬とは、理論や判断に間違いのないことです。それも単なる間違いではなく、絶対に間違わないこと を言い、そんなことは「神」にしかできません。神は無謬であるがゆえに、聖書や仏典を“疑う気持ち”で読んではならないのです。その気分を福祉の世界に持ち込んで 話に花を咲かせてみましょう。

♣ 近年「責任」という思考が世界中に広く行き渡ってきました。自分の仕事に「責任を持つ」とか、自社の製品に「責任をもつ」などです。当たり前のことですね。ところが、世界に工業製品が広がってくると、単に「責任」(responsibility)だけでは“あいまいさ”が残るので、「製品責任」(liability)(ライアビリティ)という観念が普及しています。「自動車」にたとえてみれば、製造会社の責任は 1990年の頃まで「キチンと走ればOK」だったのが、いつの間にか、3年保証、5年保証、10年保証とアフターサービスがエスカレートしてきたのです。だから、近年では、国内・国外ともに「リコール」という現象がふえてきましたね。製品の具合が悪かったら、何年後であっても製造会社が製品責任をもって修理してくれます。消費者にとっては有難いことですが、会社にとっては、厳しいご時勢です。

♣ では、その「製品責任」とやら言うものは「制限のない無限責任」でしょうか? さすがに そこまで責任をとることは難しいでしょう。ヒトや天然というものは、神と違って「無謬」ではありません。そこで、常識的な「製品責任」の年限を考えてみましょう。

♣ ① 「人の作品」:人が作る機械類の製品責任は15年でどうでしょう?木造建築の家は30年、コンクリートなら60年で原価償却しますよね。② 「芸術の作品」:ストラディバリウス(Violin)は300年? 仏像は1,000年? ツタン・カーメン(エジプトのミイラ)は5,000年でしょうか? ③ 「天然の作品」:人体の保証は 50~100年?

少し へん ですね? 人体は「天然の作品」つまり「神の作品」でしょう?「三段論法」1) で言えば、神は「無謬」だから、「人体の作り」も無謬と言えるはずです。人体の保証が50~100年とは短すぎると思いませんか? アダムがリンゴを食べた罰だ、との説明はありますが . . . )。

♣ さて、今年3月11日に東日本大震災が発生しました。日本国内は大混乱でしたが、海の向こう、アメリカの西部海岸でもパニックが起こりました2) 。地震と津波で死者2万人余の大惨事に対して アメリカ人たちは とくに驚かなかったようですが、一人の死者も出なかった原発事故に対して ひどく神経をとがらせ、薬局にあるヨード剤の値段は20倍に値上がりし、そのうえ、海藻類までの買い占めが発生したそうです。その理由がおもしろい;地震と津波は「神の行い」だから 従うほかの道はない(よって驚かない)、しかし原発事故は「人の行い」による事故だから 必死で それから逃れようとした、のだそうです。つまり、神の行為(地震と津波)は無謬であり 批判できない、しかし人の間違い(原発事故)は許さず、自己責任で逃れるべき、と判断するのです。その気持ちは分かりますね。

♣ さて、この話は福祉への意味付けがありますか? ありますよ ! 天然の作品、つまり 神の作品であるヒトは、年老いると転倒し骨折します。馴れた職員たちが目を皿のようにしてお年寄りたちを観察しますが、ヒヤリハット報告書から転倒事故が消えることはありません 3) 。つまり、もしヒトが神の作品であれば、転倒を起こすような神の無謬があってはなりません。逆に言えば、ヒトの体は神の作品ではない、よって老人は転倒をするのである ! この結論も「三段論法」なのでしょうか?

♣ いずれにせよ、私たちは 老人の転倒について 神の製造責任を問うことはできず、よって転倒事故から逃れる方法を常に考え続けなければなりません

 参考: 1) 三段論法 = AはBである;BはCである;よってAはCである、とする古典論法。 2)  Jason Daley : What You Don't Know Can Kill You. Discover July ~August : 50~57, 2011. 3) パールの安全管理 # 50 : 六つの「べからず」。 
 
職員の声

声1: 神は無謬(むびゅう)、とは初めて聞く言葉で、老人の転倒に 話がよく繋がっていました係り:ヒトは無謬ではないから、常に正しい道を考え続けなければなりません)。

声2: 私も無謬とは初めての言葉です;でも神はわざとヒトを壊れる(死ぬ)ように創られた と思います;ヒトという作品を存続させるために 50~100年の期間を定め、生老病死の中で 代々バトンタッチをして受け継ぐシステムをお創りになったと、感謝します(係り:老人の転倒が後を絶ちませんが、それを神の製品責任に押し付けることはできませんから、私たちが対応力をつけて行かねばなりませんね)。

声3: 近年、たいていの人は神の存在を信じていないよ;だから ヒトは神の作品ではない !

声4: 石原都知事によると、「津波は天罰」だそうです(係り:私もテレビで聞きましたが、神が“誰に”与えられた天罰なのかなー?と不思議です)。

声5: テレビでは原子力の話が多いですが、やはり原子力は一番多くの電気を生むのですか?(係り:事故を避ける努力さえすれば、一番 能率的です;だって太陽や星々は みな「原子爆弾」の塊なのですよ)。

声6: 日本人の「危機管理能力」はアメリカ人のそれより劣ります(係り:日本も「明治維新~日露戦争」の頃は危機管理に優れていましたが、その後の後継者たちは「神頼み」の人々が勢力を伸ばし、これが太平洋戦争~今回の原発事故に繋がったようです—— 「想定外 ! 」という東電の弁解 は「神頼み」以外の何物でもありません)。

声7: 厨房では調理した物の品質を保証し、無謬を求める品質管理をせねばなりません;その点で私たちは誠実な仕事を追求しています(係り:世の中には モンスターが多くて、無謬かどうか 批判が激しいですよね;頑張りましょう ! )。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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