(177) 二つの人権

  (177) 二つの人権   

  人権とは、人が生まれながらにして持っている権利を言います。パールの三理念1) のトップに掲げられているものも「人権擁護」です。

♣ 一口に人権と言っても、「国は私を保護すべきだ」という保護を受ける権利と、「国は私に干渉するな」という 不干渉の権利があり、この 「二つの人権」が基本となります。しかし、一人の人の人権は 必ずしも 別な人の人権と両立しないことがあります。その上、個人の人権と社会全体の利益が対立することもあります。

♣ 高齢者は何らかの社会的援助がなければ、その人らしい生活ができないこともあります。そんな人の人権を守るために、私たちは臨床の場で、しばしば「極めて危ない綱渡り」を要求されます。

♣ たとえば、火の不始末、ごみ・ごきぶり御殿、拘束・転倒・骨折など、いくつかの例で考えましょう( 認知症の不思議な事例で対話します)。特に、拘束・転倒・骨折の問題 2) は、私たちを、しばしば「正解のない問題」に導き、この緊張を和らげる手段が 人の知恵 3~4) と「ホウレンソウ5) になるでしょう。

♣ 守る人権と、守られる人権を 各論で考えると、高齢者ケアで 案外に難しい現実が浮かびあがって来ます。

   参考: 1) パールの三理念 = 人間らしい生活、 その人らしい生き方、 お互いに伝えあうぬくもり。パールの安全管理 2) # 62 : 過失と責任、とくに「骨折」について。 3) # 50 : 六つの「べからず」。 4) # 74 : 介護の不足と過剰。 5) # 148 : ホウレンソウ。

職員の声

声1: 在宅ケアで よく問題になるのは「ゴキブリ御殿」です;ご利用者は「紙切れひとつ 捨てないで ! 」とおっしゃるけれど、室内はゴキブリだらけで不衛生だし、ご近所の方々も迷惑されます;ケアから帰った私のハンドバックからゴキブリが出てきたときには「きゃぁ!! 」と叫びました(係り:ご本人の人権を守るために綱渡りをしなければならないこともあります;地域の民生員・区役所・警察などと相談の上 対処します)。

声2: 車椅子のお年寄りは 案外 前下方へ ずり落ちてしまいがちです:「ずり落ち防止帯」を両鼠径部(そけいぶ)に当てれば それを防ぐことができますが、それは禁止です ! (係り:ナゼなら、それはお年寄りを「拘束」することになるからです)。

声3: 紐や帯でベッドに縛り付けるのは論外ですが、なにもしないで置くと トイレや廊下での転倒事故が心配です(係り:しかし、 “見守り待機” あるのみです ! )。

声4: 「私を保護せよ、しかし私に干渉するな」は 普通の人には通用しますが、認知症の高齢者にはムリではありませんか?係り:この一見ムリそうに思える配慮を「二つの人権」保護と言います;認知症の高齢者は「自由と危険」の関係を理屈で説明しても理解してもらえない でしょう?;だから この「正解のない問題」を「拘束をしない“愛”」で解くしかありません;困るでしょう? そのときには「ホウレンソウ」がありますよ)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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