(195) 介護 と ゴミ御殿(ごてん)

 (195) 介護とゴミ御殿(ごてん)
 
 在宅介護で 切っても切り離せない問題が「ゴミ御殿」ですね。

♣ ここで言う「ゴミ御殿」は、主に独り暮らしの高齢者が 自室の生活空間に 処理しきれない物品を貯め込み、ご自身と介護者の 衛生上の問題が発生している状況を指します。ゴミ御殿のトラブルは、2000年に介護保険が施行される前から よく知られていました。しかし介護保険が機能し始めた2000年以後、この問題は深刻の度合いを深めました。

♣ なぜって、善意による強権で「ゴミ片付け」をすることは可能ではありますが 一方でご利用者からの反発が根深いし、他方 ご利用者の希望(人権)を優先すると 衛生問題が深刻化し、いずれにせよ 問題は解決しないからです。話を進める前に、まずゴミ御殿の心理の一端をご紹介しましょう。

♣ ① 私の小学校時代の仲良しの友達宅、終戦前の話です。誘われて遊びに行くと、母子家庭でした。昔の日本家屋というのは 畳と障子以外はカラッポの空間が普通ですが、行ってみると その小さな家の中は たまげるほどの雑物であふれ返り、寝るスペースさえ見つけられないほど でした。天井裏を走るの足音、床下にうごめくゴキブリの一団、部屋から外を見渡せないほど うずたかく積まれた家具・書籍・新聞紙の山 . . . 田舎の母子家庭では、経済的に楽(らく)ではないし、どんなものも捨てにくかったのだな、と感じました。

♣ ② 私は18歳、兄と同じ下宿で同室でした。 兄の机の上は乱雑 かつ 清掃なしの状態で、その上にパチンコの景品が積み重ねられて行きましたので、ある日、意を決して片付け それを整頓しました。すると 大きな雷が私の頭に落ちて来ました:「君にとってゴミのように見えるかもしれないが、これは“僕の宝だ ! 混沌の美である !! だから、いじってもらっては困る !!! 」。 まったく反論できない論理でした。これ以来、私は、他人の「お片付け」に口を挟まないよう、注意することを学びました

♣ 要するに「片付いていない」という状況は かなり主観的要素に支配されるものであり(= 趣味か?芸術か?)、他人が入り込むときは、注意に注意を重ねるべきなのでした。

♣ しかし時代が変わって、この10年余、高齢者のゴミ御殿の問題は 日本中 どこでも見られる ありふれた事態です。しかも、従来の心理学者社会学者の解釈では片付けられないようです。従来の「ゴミ御殿」は“普通の人間の心理”で説明されていました。つまり、少なくとも その人が好んで選んだ“能動的な”「ゴミ御殿」でした。反対に、認知症の「ゴミ御殿」は、“減少した脳細胞”が 了解可能な理性的な判断をすることなく、“成り行き的に”もたらされた「ゴミ御殿」です。だから“認知症の心理?”で、これを照らし直してみなければ 新しい説明と対応はできないと思われます。

♣ 認知症のゴミ御殿がどんなものであるかを知ることは大事ですが、皆さん方は 現場の経験をお持ち ですから、お互いに語り合って頂くのがベターでしょう。その後で、この問題の姿と対応を総括してみたいと思います。

職員の声

声1: お年寄りにとって、ゴミは宝物なのです、もったいなくて捨てられません(係り:そうかも知れませんが、どんな基準から見ても“ウンチ”を宝物とみなすことはできないでしょう?)。

声2: ご本人が「綺麗」というのと、私どもが「綺麗」と思う 「その差や隙間」をうまく調整したいです(係り:認知症の世界は 私たちとは異なります;調整というより、理解するほうがベターかな?)。

声3: 「散らかっていても、その方が安心する」とおっしゃいます;私は庭の小枝を切り取ったところ、その方の思い出まで切り取ってしまいました(係り:ご本人の情緒的な意向や思い出を大切にする必要があります;ただし くよくよしなくてもいいですよ;愛があれば、忘れて下さいます

声4: 信頼関係を維持しながらゴミ片付ける事を心がけています(係り:Good ! ゴミ御殿の清掃は「必要最少限」に留めておく とトラブルが少ないようです)。

声5: 臭いがひどかったり、ゴキブリが部屋いっぱいに走っていると、衛生上の問題があり、ご近所からクレームが出てきます(係り:説明しても分かってもらえない場合は、パールに事例をお持ち帰り下さい;清掃を強行するとトラブルが起こることが多いです)。

声6: ゴミ片づけだけに100万円も掛かる場合があるのですか?(係り:あります;私的契約による清掃・区の清掃局・便利屋などを利用して、ある程度良好な状態に整備した後、介護保険のヘルパー導入が望ましいでしょう)。

声7: ゴミ御殿は「ご利用者の体・心」の、どちらも失調するから生じる現象だと思います(係り:人格の失調ではなく、老化の途上で起こる現象ですね;要介護5 のように、体も心も衰えると ゴミ御殿はなくなります)。

声8: 特養に勤めていると、このような例は不思議でなりません(係り:特養でも、N氏の床頭台しょうとうだい)に隠してあった食品にウジムシが湧いていた例があります)。

声9: この問題は介護保険だけで対応しきれないのは分かりますが、根本的解決はどうすれば良いのでしょうか?(係り:総括します。認知症の方に 衛生とか秩序とかの“理性”を説いても根本解決にはなりません;気分を“情緒”にシフトして、粘り強い信頼関係を構築することが大事だと思います—— Body Language と言います —— 言葉の分からない赤ちゃんを包む母親の愛です)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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