(199) 筋トレ と 生理学

(199) 筋トレ と 神経  

今日は老人介護で花形の「筋トレ」を勉強しましょう。

♣ 筋肉には「随意筋」と「不随意筋」があります。「筋トレ」の「筋」は、もちろん「随意筋のトレーニング」ですね。 「随意」とは 自分の意思で「随意に」動かすことができる、という意味です。

♣ 「不随意筋」って言うのもありますよ。血管・胃腸・胆嚢・膀胱などにくっついている筋肉は「不随意筋」であり、これらは“自律神経”が管理しています。間違わないで下さいね;随意筋の「筋トレ」は可能ですが、不随意筋の「筋トレ」は不可能です。

♣ さて、随意筋は運動訓練により、何割か肥大します。すると外見はプロ選手のように「筋肉マン」の姿を呈します。ここで混乱しないで下さいね、 「肥大」と「成長」は はっきり違います。たとえば、10歳の子供が20歳の大人になるのは「成長」であって「肥大」ではありません。「成長」は細胞数の増加を伴いますが、「肥大」は細胞の数は不変で 一個一個の細胞が太くなった状態です。

筋肉の肥大の場合、筋細胞は太くなるが、筋細胞数は増えず、それに栄養を与える血管も増えない、② 筋細胞一本一本には 動く命令を伝える“随意神経”がくっついているけれど、それも増えない。③ 筋肉の鍛錬を怠ると、数ヶ月で元の状態に戻る;つまり「遺伝子はトレーニングする前の基本状態に戻す働き」をします。

♣ 「筋トレ」と聞けば、「筋肉」しか連想しないでしょうが、筋肉は自分では動きません。実は、筋肉を動かすのは「神経」です。解剖学的には、神経と筋線維は1対1でペアになっています。たとえでいえば、神経は「司令官」、筋肉は「兵隊」です;訓練によって兵隊が強くなっても、司令官がそのままでは、良い「いくさ」はできませんね。つまり「筋トレ」とは、司令官(神経)と兵隊(筋線維)の両方の機能が向上しなければ、有効となりません

♣ ところが、人間の神経細胞は年齢に伴って減少します(20歳を越えると脳細胞は毎日10万個ずつ減ります)。すると筋線維は「司令官」を失った兵隊のように、不活性または線維化して、役立たずになります。これが高齢者の「筋肉と神経の関係」です。つまり、訓練は「司令官と兵隊」の両方に行うべき であり、「受身で」または他人の希望によって行う場合の「筋トレ」は期待通りの結果が出にくいです。

このことはピアニストを念頭 におくと理解できるでしょう。アマチュアなら「毎日1時間以上」、プロなら「毎日10時間以上」の練習を、本人が その気で行い続けなければ、「神経と筋肉の技」は、その維持はおろか、進歩などはとてもおぼつきません。一日休めば 一日分だけ後戻りします

♣ また、一般にトレーニングを行う場合、ルー(Roux)の法則 を忘れてはいけません。つまり、① その人相応の運動が有効、② 運動をしないと衰える、③ し過ぎると損傷する。まかり間違っても、「運動すれば筋肉が発育する」と勘違いしないでください。使い過ぎた筋肉の治療は「安静」です、鍛錬の利はなし。

♣ 同じ筋肉でも「自律神経の支配を受ける不随意筋(胃腸・血管など)」は「筋トレ」することができませんね。その他 トレーニングになじまない臓器として腎臓・脾臓・リンパ腺など多数があります。体の大部分は「健康を維持するだけ」の注意がベストなのであって、過剰に 使い過ぎれば「ルーの③」に陥るのが関の山です

♣ 私たちは有限の可能性を持って生まれています。激しく使うと 早く寿命が尽きてします。「B29を竹槍で突き落とせ ! 」というような「精神主義」は若い人の訓練に用いましょう。大人になってからは、「ルーの法則」こそが条理にかなった「筋トレと神経の関係」なのです。

参考: * パールの安全管理 # 45 : ルー(Roux)と智恵。

職員の声

声1: 運動すれば「肉が増える」と思っていたのですが、違うのですか?(係り:人間の神経細胞と筋肉細胞は 一定の数で生まれて来、成長と訓練で所定の大きさに育ちます。筋肉は、スポーツなどで筋細胞の肥大を起こしますが(肉が増える)、筋細胞の数は増えません。絶えず刺激を与えて訓練しないと、筋細胞はスタートの状態に戻って行きます)。

声2: 我々は歳とともに神経細胞を失う;その時、神経支配をしていた筋肉細胞を道連れにして失う;これで歳と共に筋力が弱まっていく謎が解けました;筋肉を動かしているのは「神経でもあるのだ !」と気付きました(係り:スポーツマンは、ある年齢になると現役を退きますが、その理由の一部はここにあります)。

声3: お年寄りの場合、筋肉鍛錬ばかりに注意し勝ちだが、実は「神経の働き」が鍵だったのだ ! (係り:神経性の麻痺の場合、マッサージをしても、筋肉は日々衰えます)。

声4: 私は「筋トレ = 老化防止」と思っていました;真実は「年齢 => 神経 => 筋肉」だったのですね、自分の単純頭を反省しています(係り90歳の人の目標を60歳などにするのは不適当です)。

声5: 「早く回復させてあげたい」との思いから、鞭をふるいますが、その人のペースに会った「ルーの①」でやるべきでした(係り:正しい知識があってこそ良い効果が得られます)。

声6: 神経と筋肉がペアになっているとは初耳です;やる気があってこそ、筋トレの意味がある、と理解しました。

声7:90歳で四国お遍路を済ませた;99歳でモンブランに登頂した、などの行いは良くないのですか?(係り:残り少ないガソリンをどう使うのかは、その人の趣味であって、科学の問題から離れます)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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