(201) たそがれ領域

 (201) たそがれ領域  

 夕暮れ になって、あちらに立っている人の顔が判らないとき、古代の人たちは「たそ彼? 」と言ったそうです。これが「たそがれ」の語源です。

♣ さて、私たちの周辺では「あっち」と「こっち」の境界が一本で仕切りがつくとは限りません。特に人の体では、年齢や病気の範囲をくくるとき、かなりの冒険を冒します。たとえば「若年と高齢」;40歳の人はどちらに所属するのでしょうか? また「左麻痺」とは分かり易い表現ながら、ほんとうに左の上下肢が完全麻痺しているのでしょうか?

♣ 心筋梗塞や脳梗塞の場合、梗塞の中心部は完全に壊死えし)しているので、治療による回復は困難です。しかし、中心部から2~3cmの部位は健全なはずです。この「病気の所」と「健全な所」の境の幅1cm程度は「たそがれ領域」と呼ばれます——朝鮮半島の「38度線」のようなものでしょうか。治療の目標は「たそがれ領域」を健全な組織に組み込み、正常な「縄張り」を少しでも広く確保することです。

♣ お年寄りで脳梗塞になる方は たくさんありますが、リハビリの原理はここにあります。先回の安全管理「筋トレ」 1, 2) で説明しましたように、「神経細胞」と「筋細胞」は一体ですから、脳梗塞になると、脳および、その支配下にある筋線維は不調に陥りますここで めげずに、リハビリをすれば「たそがれ領域の脳や筋肉」を正常な縄張りの中に生き返らせる可能性があります。”Use it, or lose it.” (使わないものは 失われる)という格言3) はここでも有効となります。

♣ 近年では、発作後 半年程度でリハビリ効果が止まってしまう現象(6ヵ月の壁)を克服する試みがなされています。壊れた神経や筋肉が再生するかどうかが問われますが、やりかた次第で筋肉の力が蘇る(よみがえる)方向もあるようです。この方面の進歩をよく見張って行きましょう。

 参考: 1) パールの安全管理 # 199 筋トレと神経。 2) # 181 : 筋トレに関する三つの誤解。3) # 45 : ルー(Roux)と智恵。

職員の声

声1: 古代の人が「たそ彼?」と言ったのが「たそがれ」の語源とは、初めて聞きます。

声2: 薄暗いタソガレの脳や筋肉を「自分の明るい縄張りの中に引き寄せる」のがリハビリの原理だと実感しました。

声3: 前回の“安全管理”1) は、神経と筋肉が不可分な関係であることを、今回は 努力してトレーニングをしたら「たそがれ領域」を 健康領域に引き込むことが可能、とのお話でした(係り:このことを理解した上で訓練すれば「結果に差」が出て当然ですよね)。

声4: “Use it , or lose it.” (使わないものは 失われる)と、自分に言い聞かせています(係り:初期に宇宙旅行をした飛行士は地球に戻ると 立つこともできず“へなへな”と歩き崩れていました;今では宇宙の無重力による筋力喪失に対抗するため、宇宙船の中で 寸刻の余念もなく運動訓練を心がけています)。

声5: 「たそがれ領域」を失わないように、私も適度な運動を心がけています(係り:Very good !! )。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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