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(203) 癌 心 脳疾患 もし なかりせば

 (203) 癌・心・脳 疾患が もし なかりせば  

日本人の死亡原因は 1950年頃まで 国民病の「結核」と「乳幼児死亡」が首位を占めていました。その頃になって やっと日本人の平均寿命は50歳に達しましたが、そこには「成人病」という 新しい「落とし穴」が待っていました。

♣ 成人病とは 厚生省が付けた名称であり、高血圧・心臓病・脳梗塞・糖尿病などの一群の病気を指し、(現在では「生活習慣病」)生活環境が悪かった昔には「結核」、良くなった時には「成人病」が日本の新しい死因に 取って代わったのです。最近の30年間で言えば、三大死因は「癌・心・脳」(各々 約30%・15%・15%)で経過しています。

♣ 死因として多い癌・心臓病を撲滅した時の理論的寿命延長を計算すると、今年の日本人は 男性 87.5歳、女性 93.1歳になるだろうとされました1) 。しかし 癌・心の撲滅は いまだならず、死亡原因の順は相変わらず「癌・心・脳」です。この死因の順番は はたして現在の高齢社会の死亡実態を代表しているのでしょうか?

♣ そこで視点を捉え直します。社会の中での死因と言えば、全年齢を対象としますね。しかし、高齢者年齢を対象とするなら、トップは「肺炎」で、順番が一位になります。実は10年まえからそうだったのです。

♣ 死亡順位の高い「」から 検討してみます。癌は 体力のある若年~中高年の病気です。統計表を見れば、85歳以上では 癌による死亡は激減しています。なぜなら、癌で死んでしまえば 超高齢者にはなれず、癌を卒業したグループが超高齢者と言えるからです。

♣ 次に“心臓で死ぬ”とはショッキングですが、逆に 超高齢者とは「心臓病が無かったか、または それで死ななかった人が超高齢者になれる」訳ですね。心臓病の死亡は たいてい85歳までで終わりです。

脳卒中は、昔は脳出血が多数派、今は脳梗塞が多数派;昔はそれ自身で死にましたが、今は栄養や介護が良好なため、不自由な体になっても「長生き」です。だから10年前の脳梗塞が死因とされれば 実態が見えにくいですね。

♣ でも 所詮、人には寿命があるわけですから、その病名として「心不全」「脳卒中」が そのまま 流用されることが多いですが、死の実態のほとんどは、心疾患でも脳疾患でもなく、実は誤嚥性「肺炎」なのです。もちろん、痩せて 体格指数(B.M.I.)2) も減少して、ギリギリいっぱいの [ 12 ] 近くになるから、「老衰」と呼んでも あながち 無理のない状態でしょう。

♣ そこに死因統計の基となる 「死亡診断書」の問題 が加わります。よくある五つの病名(老衰・心不全・脳卒中・認知症・誤嚥性肺炎)のうち、どれが死亡病名として採用されるかは、死が看取られた場所と担当医の裁量に任されています。

♣ つまり こう言うことです:介護保険が施行される12年前までは、日本人の死亡原因は多い順に「癌・心・脳」でした;よって病気の診断名も「癌・心・脳」に向けられていました。ところが、平均年齢が85歳以上になった今、「癌・心」が 実質的には消えてしまいました。「脳」は残っていますが、「脳卒中」(麻痺)として残っていると言うより「認知症」として残ります。ところが、介護の発達とともに 認知症さえも 死の理由とならず、摂食障害が進行して「誤嚥性肺炎」「脱水」が命取り になった;これが「新しい死のシナリオ」になったようです。

♣ もっと つづめて言えば、人は85歳を越えると 他の理由がない限り 死の原因は「誤嚥性肺炎」が主体 となりました。

♣ 標題である“癌・心・脳の疾患が もし なかりせば”の人生を要約します:人は 85歳を越えれば、どの病気が主体であるとも言えないまま「廃用症候群」の訪れで「誤嚥」を起こし、それが元で一生を閉じる方が主力になるでしょう。つまり、人は「知恵」のおかげ で、遺伝子で決められた寿命(50歳)の2倍以上をうまく生きることに成功しました。その年齢になると 本人の「時間の感覚」は薄れ3) 不安のない安らかな死を迎えられると思います。

参考: 1) 日本経済新聞 記事 2011.7.28。 2) パールの安全管理 # 33 : 天寿の終点は B.M.I. ≒ 12.0。 3) 田代邦雄 :「時・場所・人」と神経学、学士会報 2006-I, p51, 2006.

職員の声

声1: 時代別に 人が死に至る流れを良く理解しました;つまり(昔)結核→癌心脳→認知症→(今)誤嚥性肺炎です(係り:最後者は“大往生”とも呼ばれます)。

声2: 摂食障害が治療可能となれば、人間はどこまで生きるのだろう?(係り:今のところ、記録保持者は122歳のジャンヌ・カルマンさんです)。

声3: 誤嚥性肺炎は「老衰」の一種でしょ?(係り:元総理大臣の宮沢喜一氏は87歳で「老衰死」と報道されました;老衰死は自然死だし、自然に死ぬ人を 手間暇かけて「特別養護」するのは理に合いませんね;いずれ「特別養護老人ホーム」という名称は「老衰院」とでも変更されるかもね。

声4: 私は訊きたい、超長寿は幸せをもたらしているのだろうか?(係り:この質問は当事者を狼狽(ろうばい)させます——本音が分からない のです)。

声5: テレビで「外科の進歩と幸福」を見ました;ロボット手術も夢ではないようです(係り:技術や制度の「細目」は発達しますが、人の心は一万年前から少しも進んでいません)。

声6: 人間の知恵が超高齢社会をもたらし、それが原因で社会にガタが来た;問題の源は人間の「浅知恵」なのだ !!(係り:200歳まで生きる研究が進んでいるのに、残念なことです)。

声7: ナゼだ ! 神様はナゼ食道と気管を途中まで一緒に繋ぐという設計をなさったのか?それが誤嚥の元 ではないか !(係り:動物進化の過程で私たちには「魚」の時代があり、「鰓(えら)と浮き袋」がありました;浮き袋が食道に繋がって「気管・肺」となり、そのおかげで 水中から陸上の生活が可能となりました;この設計がイヤなら 海に戻るしかありません)。

声8: 20歳で成人になり一息したら もう50歳、人生 楽しむ間もなく、わが身の健康を祈るだけ(係り:私らのご先祖は3万年前 15歳で大人、30歳を越える高齢者は稀まれ)でした4) —つまり祖父母というものが実在しなかったのです;今では あなたが曾祖父母にまでになれる有難い社会です)。

声9: あらゆる困難を乗り越えて超高齢者になった人々への「ごほうび」が 認知症→誤嚥→安らかな ”みまかり” ですか?その上、若者の肩を直撃する重い税負担 !係り:このシナリオはきつすぎますね;でも これを人々が選んだのです)。

係り:今日の話題に対して、超高齢を“擁護する派”と“疑問視する派”の両方がありました——パールの「職員の声」は健全だと思われます !!

  参考: 4) Rachel Caspari : The Evolution of Grandparents. Scientific American 8:24~29, 2011.
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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