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(17) 胃瘻と尊厳生

1980年以前には、「老衰、老化による自然死」が存在しました。老衰により、経口摂取ができなくなり、家族に見守られながら自宅で(畳の上で)亡くなる高齢者はむしろ自然でした。

♣ しかし1980年、アメリカ・スエーデンなどで「胃瘻」の技術が開発され、爆発的に普及しました。しかし、やがて反省期に入りました。それは「人間の自然な死とは何か?」という世論が高まったからです。日本では10年遅れで胃瘻の技術が輸入され、爆発的に広がり、同じく反省・縮小の機運となりました。

♣ ところが、2000年の介護保険の開始とともに、利用者の権利として、日本では、またもや胃瘻設置が復活してきました。経口摂取ができなくなった高齢者に対して、欧米では「放置」が主流ですが、日本では、約7割で経管栄養が行われ、これは平均1年2カ月の延命効果があります。経費はおよそ900万円。意思疎通のないご利用者に栄養剤を、ご本人の代謝需要がない量を注入すると、多くの場合、えも言えない苦しみを訴えられ、誤嚥性肺炎の合併頻度も高まります。体格指数(BMI)も徐々に低下して行きます。しかし、その「延命効果」のゆえ、法律上の「尊厳死」の問題も遠のきます。

♣ いったい「人間の生の尊厳」とは何を意味するのでしょうか?胃瘻はむしろ「不自然な生」を強いる状況をもたらすものとさえ思えます。スエーデンでは、国民のほとんどが高齢者に点滴・胃瘻など不自然な栄養補給をしないとの世論です。もし補給を行わなければ、数日で死が訪れますが、その時、ご本人の生前に一番好きだった着物を着せて、家族とともに、その数日を過ごすと言います。

♣ 日本の法律は「人間の生の尊厳」について、何も語ってくれません。私は「尊厳死」が認められるようなら、むしろ「尊厳生」を、もっともっと考えたいと思うのです。私たちは「人間の自然な死」をめぐって、日本の世論が高まってくるのを待たねばなりませんね。  * 佐々木英忠:高齢者肺炎における誤嚥性肺炎の重要性、日内会誌 138:1777, 2009.

職員の声

声1: 「尊厳死」はよく聞くけれど、「尊厳生」は初めて聞きます。

声2: 諸外国は胃瘻から撤退したのに、日本ではナゼ復活しているのですか?(答え:親を思う日本の風土、これに加えて「負担が無料」という背景があるからです)。

声3: 私の在宅で「胃瘻」の例;本人は「早く死にたい」と幻覚に悩まされています、胃瘻は正解だったのか、疑問を感じながらケアをしています(係り:親孝行の名を借りた拷問である、との声もささやかれます)。

声4: ご利用者が「尊厳死協会」に入られましたが、ご家族は猛反対でした(係り:胃瘻が生の尊厳を保つ手段であるかどうか、決着はついていません)。

声5: 「尊厳」は「民事」(みんじ)の評価に用いられる言葉ですが、「刑事」の目でみると、別な展開になるようです(係り:つまり、家族が欧米風に「放置OK」であっても、警察は それを許さない場合があるのです)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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