(213) 判断は 帰無仮説 (きむかせつ)で

 (213) 判断は帰無仮説(きむかせつ)で !

 パールの会議録の「職員の声」を聞きますと、「いろんな意見」があるのを知ります。このように、あるテーマに関して意見を求めると、さまざまな見解が帰って来るのは当たり前のことなのです。

♣ 「賛成・反対」の意見をまとめるとき、民主主義の国会では「多数決」で事を運びます。では「有罪・無罪」を判定する裁判所では、どのような原理で判決を下すのでしょうか? それは「帰無仮説きむかせつ)」です。この仮説は、“無()に帰る”ということ、「双方の争いの事情の間に有意な差はない」、つまり裁判官は「無罪」を まず念頭に置きます。しかし、 「無罪」とするには「あまりにも証拠上の矛盾が多い場合に限り「有罪」とする、これが帰無仮説です。

♣ この仮説(Null hypothesis)は統計学の考え方です。ここでは 分かり易いように、男女の背丈の違いを例に 出します。男と女と、どっちの背が高いか?と聞かれれば、“人による;一般的には 男の方の背が高い”と答えますね。男女とも背丈にはバラツキがあるから、一般的な答えが求められるならば、数学的処置をする必要があります。その根本原理は「生物学的特徴のバラツキは“正規分布”をする」と言う原理です。

♣ ここでは どんな操作をするかの各論は述べませんが、今の時代、あなたはパソコンをお持ちですよね;そこから「有意差(ゆういさ)検定」というソフトを引き出します。 / 例えば えば 5年1組の生徒40人の背丈を まず男組のデータを次々と入力、つぎに女組も同じように入力し、最期に“検定 !”のボタンを押すと、それぞれの組の平均値、偏差値、有意差が、直ちに表示されます。

♣ ここで 有意差って何でしょう?有意差とは「間違うことの確率」のことです(probability of error, 「p」で略記)。何事であれ、判断をすれば 間違いの確率が発生します。あてずっぽうな判断をすれば、間違いの確率は「当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦」(p ≒ 50%)となるでしょう。実用的な有意差としては p < 5% がよく使われます(100の判断中、間違いは5%以下)。これは p < 1% や p < 0.1% などにgrade-upできますが、絶対に間違わないという判断は存在しません;それを望むなら、初めから判断しないことです。ここの例では 帰無仮説 p < 5% で「有意差あり」または「なし」と判断できるでしょう。

♣ 裁判の場合、数学処理は困難でしょうが、判定の原理は同じです。裁判官は まず「犯人はシロである」と帰無仮説を立てます。審議を重ねるうちに「シロ」という帰無仮説が守りきれなくなったら、「クロ」と判定します。

♣ 福祉の世界では、ケアマネの調整など、判断に迷うことは山のようにあります。この場合、「背丈」のような「数値」の問題(デジタル)は少なく、むしろ「裁判官」の気分で「アナログ」な判定 1) を下さねばなりません。

♣ いろいろな意見について、まず あなたは直観で感じ取るでしょうが、最期に私のお奨めを二つ:帰無仮説という考えがあることを思い出すこと、あなたは「裁判官」になったつもりで「帰無仮説」を頭に描き、物事を判定して下さい。

参考: パールの安全管理  1) # 205 : デジタル と アナログ。

職員の声

声1: 「帰無仮説」という言葉を初めて聞き、その重要性を認識しました(係り:無罪を念頭に置くのは なかなか難しいけれど、「無に帰る」という考え方は、感情的になった気持ちを冷ます効果がありますね)。

声2: 「帰無仮説」と聞き、“お坊さんの話か”と思っていたら「読んで字の如く」でした;判りやすいお話でした。

声3: 看護教育で統計を学んだのですが、理事長が「帰無仮説」をケアマネに応用する とはオドロキでした;5%以下の危険率で判断するのは大切な思考だと再認識しました(係り:どんな判断にもエラーはつきものです;そのエラーを5%にするか、1%で納めるかが頭の中で問われます)。

声4:無罪を念頭に置いて判断する」とは、福祉の世界で、まさに適切な言葉だと思いました(係り:哲学では“疑わしきは罰せず”ですが、「帰無仮説」は まさにその心を表します)。

声5: 感情的な、または恣意的(しいてき)な判断を戒め、なるべく客観的な結論を得る 良い方法だと感じました。

声6: 「帰無仮説」は黒白(こくびゃく)を無理につけず、双方の言い分を調整する 上でとても役立つ考え方だと捉えました(係り:この考え方は将来 きっと あなたのお役にたつと思います)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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