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(221) ちび漏れ

 (221) ちび漏れ  

「おしも」のトラブルのうち、自分でなんとか処理できる範囲のものなら内緒ごととしてすまされますが、高齢者介護の場合、ここが問題となります。赤ちゃんとは違って、羞恥心は残っている のに「ちび漏れ」を他人に知られたくない思いが強いからです。だから、ちび漏れしたパンツを引き出しの奥に隠す、という行為は ごくありふれた行為です——浅知恵ですね、すぐみつけられちゃうのに !

♣ そもそも、私たちは生まれた時100%「お漏らし」でした。心身の発育とともに 膀胱も大きくなり、排尿を司る神経も発達し、お漏らしの頻度が減ります。その様子は「2歳で2人に1人、3歳で3人に1人 . . . 5歳で5人に1人と、「お寝しょ」は減ります。夜尿症の頻度の目安は:-幼稚園年長で15%、小学校6年で5%程度です——小4の頃のあなた、世界地図を物干し竿(さお)で干されて みじめだった記憶はありませんか?

♣ これほどに排尿習慣は生後 遅く完成する ものです。そして、歳をとれば、何事によらず「赤ちゃん還りをする」と言うでしょう? つまり 高齢者は ふたたび「ちび漏れ」から100%「お漏らし」になります。恥ずかしいと思うか否か、ヒトはそう造られており、長生きすれば 誰でもこれを経験します。

♣ ここで「尿」に関する生理学を二つ三つ。尿は血液が腎臓で濾過(ろか)されてできます。濾過とは「濾し取ること」で、血液が篩(ふるい)組織で濾し取られ、赤血球や白血球などを残した水分が「原尿」(げんにょう)となります。これが 毎分約100cc。原尿の中には まだブドウ糖などの栄養素がたくさん含まれているので、腎臓はそれを再吸収し、最終的には 毎分約1ccの尿を膀胱へ送ります。

♣ 一日は何分ですか? 計算すると、一日 = 24時間 = 24×60分 = 1440分です。つまり、尿は「毎分1cc、一日1440cc≒ 1.5リットル」出ます。もちろん体の大小、ビールを飲んだかどうかによって尿量は変化しますが、基本は「一日1.5リットル」と覚えましょう

♣ さて、あなたは 一日何回排尿しますか?そんなこと 考えてもいない? では 考えましょう。(1) 起床時、(2) 勤め先に到着時、(3) 昼食前、(4) オヤツの頃、(5) 退勤前、(6) 夕食後、そして (7) 寝る前——全部で7回、こんなものでしょうか? では、一回に何ccの尿が出るでしょうか? 入院すれば 測られますが、計算上は 1500cc / 7 ≒ 214cc。おー、これで常識に一致した成績が得られましたね。水洗トイレでは約200ccの尿を流すのに20倍の水(4~6リットル)が使われる のです !!

♣ そこで症例の相談に移ります。デイサービスを利用されるA.Y.様(86F 認知症 要介護2)はトイレに5分前に行ったにもかかわらず、すぐに「漏れてしまう」と言い、トイレが頻回です。家庭でもそうだ、との事。私たち職員の正しい対応法は何でしょうか? 

♣ 答えは、目指す病気の種類によっていろいろですが、いま、腎臓・膀胱・尿道の病気がないものとします。すると 二つの状態が考えられます:-① 神経因性膀胱、② 認知症。

♣ ①膀胱に尿がどれだけ溜ったか、いつ排尿しようか、などの情報は「自律神経」が操作していますが、この神経が 年齢的に やられると「失禁」してしまいます。この状態を神経因性膀胱と呼びます。かなり有効な薬があり、実用化されています。

♣ ②もし認知症と共に現れたのなら、認知症の特徴 = 性格の先鋭化 が考えられます。つまり がんらい 頻尿の傾向があった人なら、その傾向がより強調されるようになった、と考えられます。「痴呆につける薬はない」から、この場合、打つ手が見当たりません。いずれの場合でも、本人の負担を軽くしてあげる「言葉掛け」が大切です。

♣ とくに あなたは 専門家なのだから、頭の中で考えましょう——5分の間に生じる尿量は5ccですね?それって大匙2杯くらい? そんなものを いきんで排尿できますか?無理ですね。つまり、A.Y.様は「身の置き所のない無目的な行動」をなさっている訳です。こんな場合、認知症の一症状として「危険の無いように見守る」ことが大事です。言うは易く、行うは難いことです。私どもの失敗例をお伝えします:-

♣ 私は 先々月、95歳の女性が 私とトイレに同室することを拒み、一人にしたとたん、中で転倒・骨折という例に出合いました。入院・手術・リハビリで650万円の請求書が回ってきました(保険で対応)。一瞬の気の緩みで 私の給料の一年分以上が吹っ飛んでしまいました。

♣ あっさり「おお漏れ」なら こんなことにならないでしょうが、 「ちび漏れ」は危険ですね。上記の尿生成の生理学を参考にして 賢く対応して下さい。

職員の声

声1: トイレから戻ったばかりなのに、間髪を入れず また行きたい とおっしゃる方があり、私は自分の感情と戦っています、ご家族のご苦労をしのびます(係り:あなたは偉い ! )。

声2: 私もご利用者の頻尿にお手上げです、声掛け以外に つける薬 はないでしょうか?(係り:残念ながら ありません)。

声3:トイレに行ったことをすぐ忘れる ご利用者に翻弄ほんろう)されるこの頃です、「痴呆につける薬はない」とのことで、声掛けと安全を確認します。

声4: 86歳女性の失禁は「当たり前 !」とのコメント、残念なことですが、高齢者へのエールだと捉えます(係り:お湯が自由に使えなかった 昔の高齢者はどうしていたんだろうと気が揉めますね)。

声5: 理事長のコメントにあった「デイパンツ」;偏見を持たずに使うことをお奨めしたら、感謝の言葉を受けています(係り:欧米では何時間もかかるオペラの観賞に高齢者が来ているのを よく見かけますが、デイパンツを使っているのです)。

声6: 「ちび漏れ」が進行すれば「おお漏れ」になるのですね(係り: 「排尿障害」「床ずれ」「嚥下障害」の三つが人間寿命の最期を代表します。体重も縮み、体格指数は12に近づきます お釈迦様のおっしゃる輪廻りんね)~命の循環の現れです。静かに 暖かく見守りましょう)。

  参考:   パールの安全管理 # 33 : 天寿の終点はB.M.I. ≒ 12。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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