(256) 拘束とは何か? その対応

  (256) 拘縮 (こうしゅく) とは何か、その対応  

  認知症デイサービスの K.K.様(85F)は、半年前から 左右とも上肢の拘縮が進行し、肘の伸展がほとんど不可能な状態になりました。リハビリをすれば どの程度 治る のでしょうか?これは職員たちの率直な疑問です。パール嘱託医の整形外科Y先生にご意見を聞いてみました。

Y先生のご意見:関節の中で 接触する骨同士が固まった状態を「強直」(きょうちょく)と呼ぶ。その前段階が「拘縮である。麻痺・高齢などによって、筋肉や関節を使わない状態が続くと、関節嚢(かんせつのう、二つの骨があい接触する関節部を袋状に包む組織)の軟部組織が 廃用萎縮によって硬くなり、その結果 関節嚢内にある骨の動ける範囲が狭まってくる。関節周辺に付着する筋肉は「拮抗筋群」であり(伸びる筋肉、縮む筋肉)、人体では「屈筋」のほうが強力であるため、屈筋が伸筋の力を負かして収縮状態で固まろうとする——この状態が「拘縮」である。

♣ 初期のうちは、観察者が相手の肘や膝を動かそうとすると、滑らかさのない「ギー」と感じる抵抗を感じる。それが進行すると「拘縮」、さらに進行すると「強直」になる。強直の場合、収縮した筋肉が「腱組織」のように硬化し、関節はビクとも動かなくなる。典型的な姿は 子宮内の赤ちゃん のような ちじこまった四肢状態の姿になる。拘縮は 大きい関節のほうが小さい関節より先に起こる。また、下肢は通常 座った姿勢であまり動かさないから 上肢よりも先に起こる(→ 膝と腰が先、続いて肘と肩)。

♣ これを防ぐための対応は、「関節を使い、その循環をよくすること」に尽きる。自分で関節運動を行うのが一番良いが、それが困難であれば 他動的にマッサージなどで補助する。関節運動は「やり足らないのはいけない;しかし やりすぎるのは最悪だ ! なぜなら、やりすぎると、仮骨かこつ)ができ、筋肉炎を起こし、かえって拘縮が進行してしまう。適度な運動量は個人別に定めるほか、名案はない。

♣ ご質問の Y.K.様(85F)の場合も 基礎疾患(脳梗塞)・本人の意欲・周辺の協力程度などに応じて対応するのがベストのようです。整形外科の知恵では 誰もが学ばなければならない 「ルー(Roux)の法則」 というものがあります1~4) 。それは 適宜な運動量を設定するための法則で、三つの叙述より成ります:- 身体(筋肉)の機能は適度に使うと発達し、 使わなければ萎縮(退化)し、 過度に使えば障害を起こす。この「ルーの法則」は筋肉生理学の教えですが、実際には私たちの生活の どんな行為にも応用の効く法則だと思われます。

参考:パールの安全管理 1) # 45 : ルー(Roux)と智恵。 2) # 74 : 介護の不足と過剰。 3) # 151 : 残存機能の保持。 4) # 181 : 筋トレに関する三つの誤解。

職員の声

声1: 「拘縮」の仕組みと原因がとても良く理解できました;「強直」とは初耳でした(係り:パール開設の初期には、両膝を曲げ しかも両膝がくっついて開かない高齢女性が数人ほど入居され、“おしも”のお世話に戸惑いました —— 「拘縮」を通り越して「強直」になっていた状態でした;もし対策があるとすれば、硬化した筋肉(腱)の切開ですが、ご家族はそれを希望されませんでした)。

声2: 上肢より下肢のほうに「拘縮」が早く始まる、とは初耳でした;要するに「動かない水は早く凍る」のですね。

声3: 「拘縮」が進行するのは やむを得ない、と思っていましたが、関節を使用すれば 関節嚢の「繊維化」が防止できる とのお話で、元気付きました。

声4: 動かすことで拘縮を和らげられる というけれど、本人や家族にとってみれば、手間がかかるし 困難、という現実があるのですね。

声5: 私は「動かせば動かすほど良い」と思っていましたが、運動やマッサージなど、「何事にも適度」がある のだ、と知りました(係り:やり過ぎの運動は かえって逆効果を生みます)。

声6:寝たきりにすると拘縮が訪れる」という 理由を良く理解できました(係り:宇宙飛行士は、飛行中、重力に対する運動機能がゼロになるので、宇宙でジョッギング・地球に帰ってもリハビリが必須ですね、テレビでご覧になる通りです)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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