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(258) 自宅で暴力、パールで平穏

 (258) 自宅で暴力、パールで平穏   

  このところ、安全管理シリーズでは「暴力」の話題が頻々です。若いパールの職員たちが 初めて仕事に就いたとき、あたかも「癌」と宣告された人がショックを受けるような心理学を学びます。それは 静かなはずのお年寄りが 案外 暴力に訴えることがあるからです。職員たちは、初めビックリ、ついで涙を流し、やがて 考えるひと時を持って肝が据わり、最期には 余裕のほほ笑みを浮かべて仕事をこなすように育ちます。この心の流れが 福祉との出会いの一つ、学生時代には経験できなかった情景です。

N.S.様(79歳 女性 要介護2)はデイサービスをご利用です。時に不穏か?と見られることもありますが、午前の全体遊戯には協調性があり、食事の会話もごく普通の方です。しかし、最近、自宅に帰ると、息子様に手を挙げて引っ掻く、叩く、蹴るなどの暴力で ご自分の意思を通そうとされ、手が付けられないほど興奮されるようになりました。怪我をされると困る ので、興奮が収まれるまで、狭いスペースに押し込めて 静かになるのを待ちます。

♣ 痴呆の進行とともに暴力行為がエスカレートする ことがある、と時々聞きますが、こんな場合の対応法、とくに「拘束」することの意義について、精神科のO先生にご指導頂きました。

O先生>:-推測するに、この方は、 “よそ行き行動”ができている のだから、息子と他人との弁別べんべつ)能力を保持しているようだ。一般に、認知症が進行すると、その弁別能力が弱まって行き、体力も衰弱し始める。もし 周りの人の「優しい心・配慮」が通じる状態であるのなら、精神病患者と同じように、暴力を振るう力も弱くなることが期待される。

☛ しかし、現実に暴力行為が進行して行くようなら、薬を使うか 拘束せざるをえない。福祉の世界では、身体拘束は厳禁とされる 1) 。しかし20年前まで、認知症は精神科で扱っていた のだ。その頃は、治療計画に沿って椅子に縛りつけることも よくあった。だが、近年では認知症の人が激増したため、医療の目がある精神科病棟に長期入院することもできず、福祉が そういう方々のお世話をする羽目になっている。暴力行為に及ぶ認知症は 福祉の重荷になっていることは確かだ。

精神科の目でみれば、「拘束」は治療選択の一つ なのである。ちなみに 精神保健指定医は、「自傷・他害の恐れ」がある場合に限って、「隔離」(一日のみ有効)または「拘束」(1週間ほど有効)を行う権限を持っている。丁度、警察官が手錠などで犯罪者を拘束する権限があるのと同じである。精神科の拘束は「差別」ではなく、病気による「区別」であることを理解して欲しい。拘束の延長が必要な場合は、必要に応じ、その都度、回数を重ねる。ただし、これは 指定医が常駐しない福祉施設では行えない。だから、目に余る暴力行為が続く場合には、やはり精神科病棟に入院して「自傷・他害」が収まるような治療 を受けたあと、福祉施設に戻って、介護を受けるのが妥当な線だと思う。

参考: パールの安全管理 1) # 166 : 身体拘束の問題。

職員の声

声1:弁別」とは、家族と職員の違いが分かる能力のことなのだ;初めて聞きます;私もレポートにこの言葉を使ってみたい(係り:認知症が進むと「あなた様はどなたかのう? 」とご自分の息子さんに向かった言う方もありますね)。

声2: 自宅で暴れても、デイサービスでおとなしいのなら、「社会性」が残存している証拠だと思います;でも20年前まで「認知症」は精神科で扱っていたなんてオドロキでした(係り:介護保険の開始は2000年ですから、それ以前は 精神科の関わりが大きかったのです。なお、認知症という言葉は2004年に作られた言葉です;それ以前は、差別的な匂いのある「痴呆」(ちほう)でした) 2)

声3: 訪問介護で、玄関のチャイムを鳴らすと(介護なんて)「頼んでいないから、帰ってください」とケンもホロロ;それでも家に入ると「来てくれて有難う」とおっしゃる;認知症の不穏とは 本当に不思議でなりません。

声4: 以前のお話だったですが、感情の宿る“脳幹部”を「ちくわ」にたとえ、精神の宿る“大脳”を「キャベツ」にたとえるという お話がありました 3) 。ヒトの脳は「ちくわ」の上に乗っている「キャベツ」というわけです。ふだん大脳は「ちくわ」で発生するいろんな感情を制御(せいぎょ)して社会生活をしていますが、 「キャベツ」(大脳)の力が衰えると、「ちくわ」の感情を制御しきれなくなる、というお話でした。暴力とは 結局「キャベツ」の制御能力不足の問題なのですね?(係り:それは あくまで「たとえ話」ですが、一般に 認知症では、ふだん ケチだったヒトは もっとケチになり、ふだん 乱暴だった人は さらに乱暴になります;これを「性格の先鋭化」と呼びます)。

声5: 介護の現場では、おしもに手を入れて便をこね回すのを防ぐために「つなぎ服」を着せたり、椅子からずり落ちるのを避けるために「紐で椅子に縛る」というのもあると聞きます(係り:昔には 色々あったでしょうが、今の介護施設では 拘束は一切 禁止になっており、工夫によって 十分良い介護ができます)。

参考: パールの安全管理  2) # 2 : 痴呆以前。 3) # 150 : 蛙の認知症。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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