(260) 天 然 介 護

(260) 天 然 介 護   

私は「スエーデン式の天然介護」という言葉を無意識に使ったところ、多くの職員から「天然介護」って 素敵な言葉の響き がある、と褒められ、それを受け入れたい という意見が表明されました。

♣ そこで私は「天然」て 何だろう?と考えます。天然 とは 自然に存在する という意味ですね。では、その反対語は何か? 人工介護? 医療介護? 侵襲介護? 和風介護? どれでしょうか?

♣ 皆さん方がご存知のように、現在の日本の介護は 2000年に介護保険がスタートしたけれど、医療介護の匂い が濃厚ですね。先週にも、私の担当するご利用者が「食べない」ことを理由に 病院の受け持ちドクターから“胃瘻”をつけなければ 退院させない と 半強制されました。別な病院では 胃瘻設置に反対する家族の所へ 総婦長殿がやって来て「お母様を餓死(が し)させるおつもりですか?」と 胃瘻を折伏(しゃくぶく)されてしまいした。

♣ このように、多くの医療者は 超高齢者へ酸素療法・胃瘻・IVH-点滴・(ぺースメーカー・透析) などを施行して「善意と称する 苦しみの延命」を行うことがあります。 「神仏期」 1) (85歳以上の人)の高齢者が必要としておられるのは「医療の苦しみ」ではなく、 「天然の安らぎ」= 「天然介護」であろうかと 私は思うのです。私は 「医療」を否定するものではありませんが、その前に「天然のやすらぎ」を探し求めて 介護の指針としたいのです。

♣ 少し別な話をします。マザー・テレサというご婦人の名前を聞いたことがあるでしょう。彼女はアルバニア(バルカン半島)の生まれです。インドには今でも「四つのカースト2) という制度があり、その下に「アウト・カースト」という 極々貧の人々が社会の中で苦しんでいます。彼女は そのインドに赴き、貧しい人たちへの「いたわり」の奉仕に 一生を 捧げ、ノーベル賞を受けました。彼女の名言の中から三つ取り上げます:- ① 世界で一番恐ろしい病気は「孤独」です;② 平和な心は笑顔で始まります;③ テレサは貧しい人々のために働くシスターたちに言いました:笑ってあげなさい、笑いたくなくても 笑うの ! 笑顔が人間には必要なのよ。

☛ この問題の根本的解決はインド国民の「カースト制度」に対する考え方にあるのでしょう。しかし、マザー・テレサは 社会改革を挑んだのではなく、困った人たちに笑顔と希望を与えたのでした。テレサは優しい人だったのですね。

♣ 笑顔と言えば、先週のテレビで「イラクの男たちに囲まれた 一人の米人兵士」というストーリーがありました。多勢に無勢、説明する言葉も分からず 兵士の命は風前の灯火でした。息を呑むような凍った瞬間、その兵士は思わず「笑顔で」手を差し伸べました。この笑顔が全てを解決したのです;住民の男たちは兵士を抱き抱えて避難所へ連れて行き、兵士の傷の手当てをしたのです。テレビ画面を見ていて、私も思わず 手を差し伸べました。笑顔って大事なのだなーと思いました。

♣ 皆さん、鶏や犬猫に笑顔がありますか?考えてみると、笑顔はヒトだけにあるよう ですね。笑顔は 先天的に 遺伝子的に ヒトの脳に ビルト・インされていると思います。胃瘻延命・インドのカースト制・イラクの戦争 . . . みな おかしいと思うでしょう。それは「天然の出来事ではないから」でしょうね。

♣ 先週の精神科・K先生のお話の中で、次のような現象を教えて頂きました:- 認知症が深く進行した症例で、何を話しても見せても 反応のない人;この人に「笑い顔」と「泣き顔」の写真を見せたら、なんと写真を区別して反応があった、とおっしゃるのです。つまり、ヒトは大脳皮質がやられて「知恵」のない動物同様になっていても、「笑顔の認識は可能だ」、それは 脳の深い場所にある ヒト固有の本能ではないか?ということでした。

♣ 大脳皮質は賢い事を学び、また事実を曲げることさえ指令しますが、天然の ヒト固有の本能は 「環境に学ぶ」こと、そのほかに 「天然の真実を掴む」ことでは ないでしょうか?私たちが自分の胸に手を当てて判断すれば おのずとなされる介護、それが「天然介護」ではないか、と私は思うに至りました。響きの良い言葉ですね ―― 天然介護 !

参考: 1) パールの安全管理 # 254 : 人生を三期に分ける。 2) カースト = ① バラモン(僧侶)、② クシャトリア(王侯、武士)、③ ヴァイシャ(平民)、④ スードラ(隷属民)。

職員の声

声 1: 「天然介護」という言葉には「行き過ぎた医療介護」にブレーキを掛けようとする意図が感じられます(係り:医療に深のめりをせず、持ち前の寿命を生きる;そのお手伝いをするのが「天然介護」だと思います)。

声2: 暖かい心と笑顔が伝わる介護、それが「天然介護」ではないでしょうか?(係り:イメージとして、電気・ガス・水道文明が加わった「江戸時代の介護」でしょうか)。

声3: お母様を餓死させるおつもりですか? 」のセリフには驚きました(係り:病院の立場の責任感 なのでしょうか、でも “Yes ! ”とは言いにくいですね)。

声4: 親のお看取りは 病院でするのが日本の主流(7割)ですが、そんな体制の中で「天然介護」を主張するのは かなり「勇気」が必要です(係り:病院は「治す所」です、莫大なコストの掛かる病院で 終末期のお看取りを 健康保険でする贅沢は 今後 出来なくなるでしょう -- 欧米のお産は その日帰り または一泊のみ;これを見習う日が来つつあります)。

声5: 医療は「生かす術」として発展してきました;その技術を「死ぬべき人に適用する国民性 が そもそもの間違いのモトでしょう(係り:一般教養・リベラルアーツとは「歴史を振り返って人間の賢さ・愚かさ を よく学ぶこと」です;あなたは確実にそれを手に入れています)。

声6: 社会貢献が出来る人なら「延寿」の対象になれるけれど、そうでない人は切り捨てられるとすれば 怖い ! 係り:限られた境遇のなかでは トリアージ 3) に迫られる場合もあります:国費で延命するのは経済豊かな日本の象徴でもあります;しかし 人口構成が逆ピラミッドになりつつある現在、そのお金を出す 若い納税者の声も聞くべきですね)。

声7: 本人が希望するのなら 延命はOKだと思いますけど(係り:この問題の何が正当なのか お釈迦様にも相談すべきですか --- まさか、若者がこの世に生まれた意義は「老人を さらに高齢化させること」ではないでしょう?)。

声8: 笑顔があるなら 赤ちゃんもお年よりも ウエルカム、これが僕らの仕事甲斐なのです ! (係り:その ノー天気さに歴史を賭けましょう)。

   参考: 3) パールの安全管理 # 144 : 津波とトリアージ。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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