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(270)  クリミア戦争 と ナイチンゲール

  (270) クリミア戦争 と ナイチンゲール   

 江戸末期にアメリカの海軍提督ペリーが「黒船」に乗って日本を来訪、平穏の夢が破れた徳川政治は大混乱に陥りました (1853年)。全くその年、ヨーロッパでは ロシアがトルコ領のクリミア地方のキリスト教徒保護を口実にして、トルコと戦争を始めました。クリミアは、地中海の東北・「黒海」(こっかい)の一番北にある 小さな半島です。

♣ この戦争はロシアの「南下侵略戦争だ」として、西欧諸国(英・仏・サルディニア)は警戒し、トルコの味方になって参戦、ロシアは3年後に 敗れ ました。このクリミア戦争は 重火器を用いた 大規模の近代戦の元祖として特記されます。つまり、砲火による戦死者は20万人を、負傷者は100万人を越え る史上最大の悲惨な状況となりました。また傷病者の治療・看護について、それ以前の看護活動は宗教色が強く、尼僧や僧侶(そうりょ)が教義の実践として行ったものでしたが、フローレンス・ナイチンゲールは 現地を訪れ、看護を宗教から分離させ傷病者を近代的な看護で看る体制を確立したことで戦争そのものよりも ずっと有名になりました。

♣ 兵百人が死ぬ場合、兵千人が怪我をします。その頃の医療事情は、輸血・点滴はなく、鎮痛剤も抗生物質もありません でした。もし腹に弾が当たったら、たぶん、すぐには死にませんが、一週後には「腹膜炎」(ふくまくえん)で必ず死にます。傷つき、のた打ち回る何十万もの傷病兵を目のまえに見て、ナイチンゲールは「野戦看護」のノウハウを学び取りました。

♣ 彼女は 戦場における膨大な看護データを分析し、その死亡原因の多くが傷そのものではなく、傷を負ったあとの治療や病舎の不十分な衛生状態」にあることを知りました。しかし、彼女がいかに有能であっても、孤独では有効な成績を出すことができません。そこで彼女は イギリスの王室や政治家へ訴えかけます。被害の数値を伝えるだけでは見逃されてしまうので、彼女独特の「絵解きデータ」を作成しました。これが有名な「鶏(にわとり)のトサカ図」です。

♣ それは こうです:- 円グラフを頭に描きましょう。360度を12ヶ月で割ると、ひと月は30度になります。ナイチンゲールはひと月ごとに、兵員総数・怪我の数・死亡数を 30度に仕切って円グラフに書き込み(このプレゼンテーションが視覚に訴えた)、クリミアにおける月ごとの実情を国許へ贈った のです。客観的なデータに基づく「トサカ図」の説得力は抜群であり、病人を救うのは 「宗教の愛よりも衛生環境であること」が誰の目にも よく伝わりました。こうして、政府は本格的な支援を実行し、それまでの傷病兵の死亡率 50% を 5% にまで引き下げ、世界の人々を感嘆させたのです。 彼女の「トサカ図」の工夫は「衛生統計」の始祖としても有名となり、さらに「敵味方の区別なく」看護を始めたことでも 彼女に世界的に不滅な名声を贈りました。

♣ 残念ながら、クリミア戦争に引き続き 世界から戦争というものは なくなっていません。しかし 近年の少子高齢化に伴う世情により、ナイチンゲール思想に支えられた看護力は 老人介護のあり方を引き締める重要な役割を持っています。その活動の場は病院にとどまらず、地域、家庭、福祉施設などへと拡大してきました。ナイチンゲールの時代には「人生は40年」にも満たなかったでしょうが、いまや「人生90年」です。

♣ 私は、ナイチンゲールの「病者に対する愛」、「賢い分析能力」および「データを問題解決につなげる知恵」に感心すること しきりです。彼女の病める人への姿勢は 福祉介護にも十分応用できると思います。皆さん方も、自分の「知恵」、自分の「感性」(心身の環境整備、安心な心情)を介護の分野に活かす事を心がけましょう。

職員の声

声1: 異国の地で看護の実力を発揮、あまつさえ「鶏のトサカ図」などで 衛生統計の始祖となったこと;みんな すべて初耳でした。

声2: その頃、注意をひかなかった病舎の「換気・室内環境」などの整備を説くナイチンゲールこそ、看護・介護の原点だと思います(係り:コロンブスの卵です、なかなか真似られないですね)。

声3: 彼女のケアは「思いやり・気配り」を常に考えていたとのこと、私もその言葉を頭に入れ、ケアに当たりたい(係り:1853年と言えば、麻酔・鎮痛剤・細菌学の知識導入以前です、今の目から判断すれば、有効な「医療・看護」は皆無だったでしょう、だからこそ、彼女の配慮が 傷病死亡率を著しく引き下げることに貢献した のだ、と思います)。

声4: 今までナイチンゲールの名前を何度も聞きましたが、彼女の仕事を知ったのは初めてです;思ったら突き進むバイタリティのある女性だったのですね。

声5: 彼女が統計学の始祖勤労女性のパイオニアであったとは驚きです(係り:社会医学に統計学を応用した最初期の人物として知られています;数学の統計応用は コンピュータ導入後の1970年頃ですから、150年以上も早かった のですね)。

声6: 自分の信念を 周囲の人たちに支持されるように行動したこと こそ、彼女の偉い点です(係り:私たちの欠点は 「意見だけ出して 解決への行動を起こさない」という日和見(ひよりみ)主義ですよね;まったく 彼女に学ぶべきです;あなただって、この「トサカ図」をみて ビックリしたのではありませんか? )。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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