(271) 些細 (ささい) なことで 泣く

(271) 些細 (ささい) なことで 泣く  

今日の症例は、街であまり見かけることはありませんが、大勢のお年寄りを集めて看ると、必ず "些細なことで泣く" お一人・お二人と遭遇します。基本的な解決法は まだ満足の行くものではありませんが、介護者が自分の行なうべき対応をわきまえるという意味で、役立つ勉強だと思います。

♣ 症例はデイサービスをご利用の I.K.様(56M 要介護5)は 33歳のとき脳出血で、左麻痺のある方です。嬉しくても悲しくても、些細(ささい)なことで泣きます脳出血と感情失禁は関係あるのでしょうか?また、どう対応すれば良いのでしょうか?

☛ < 精神科の O 先生>:- 関係はある !! 脳出血にも 脳梗塞にも この現象はあり得る。脳出血・脳梗塞の発生しやすいところは、脳の「内包」(ないほう)という部分の血管が破れるか 詰まるかで起こることが多い。この内包という部位は、たとえて見ると 人の頭と胴体とのつながりが「首」であるように、大脳と末梢神経の間に介在する重要な通路であり、わずかな病変でも 両者の交通路が遮断されてしまう。「内包」は左右に二個あり、相互に離れている。だから たいていの脳卒中では 一方の内包がやられ、片麻痺かたまひ)が現れる。

☛ 他方、人の感情は脳の底にある偏桃体へんとうたい)という部分で調節されている1) —— 「脳は ちくわの上に乗ったキャベツ の構造」 。普段は大脳からのブレーキが掛かっているので、偏桃体は 自己の 自由な感情をむき出しにはしない。実は、この偏桃体は 上記の「内包」のすぐ傍にある。よって、脳卒中が起こると その影響が偏桃体に及ぶことは少なくない。つまり、脳卒中のあと、大脳から偏桃体に行くブレーキが適切に掛からず、偏桃体の なまの感情が抑えきれずに 出てしまう(感情失禁)—— 例:自動車でいえば、サイドブレーキが掛かっていない状態の坂道停車のようなもの;ひょっとすると暴走する。

☛ 理由は不明であるが、外部からの刺激を少なくしても、どうしても感情失禁は起こる。しかも、なぜか「泣く」 「笑うこと」は滅多にない対応法:本人は「泣きたくて泣く」のではない。だから、どうにもならないが、この56歳の症例では、外からの刺激を少なめにしたらどうだろう。

☛ これを「治す」薬はない。どうしても、と言われれば、トランキライザーを用いるが、「寝たきり」になる危険性がある。

  参考:パールの安全管理 1) #231 : ど忘れ。

職員の声

声1: 軽い歩行障害があり、顔の表情が曲がったお年寄りが 私に 街頭で 泣き声で 道を訊かれたことがあります、私はずいぶん ビックリしました—— 今日のお話で やっと訳が分かりました

声2: I.K.様は 野球優勝のTVで泣いておられました;いい刺激で泣くのなら どうってことはないのか?

声3: 私はぜんぜん気にしていないのですが、私の大脳は私の偏桃体にブレーキを掛け、それゆえに 私が正気なのですか?係り:偏桃体や内包は「自律神経」です;気にする必要はありません;睡眠時にあなたが呼吸をしているのと同じです)。

声4: 認知症では大脳のブレーキが弱まり、それゆえに感情失禁が起こると学びました;怖いことですが、理解が深まります

声5: 「歳をとったのだから感情失禁をする」と単純に思っていたのですが、実際は「偏桃体」というトリックがあったのですね;確かに「泣く」お年寄りはありますが、片麻痺で「笑う」お年よりは少ないです。

声6: どうせのことなら、泣かずに笑えばよいと思う(係り:ヒト以外の動物は笑いません、大脳に障害があると、笑えなくなります;それほど「笑うことは 高級な行為」なのです —— 笑う猿って見たことないでしょう? )。

声7: 「嬉しくても泣く」のは、ご本人にとってストレスなのでしょうか? (係り:本人には何のストレスもありません;周りの人たちがオヤ?と思うだけです)。
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ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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