(282) 肥満 と 膝

(282) 肥 満 と 膝 関 節

デイ・サービスをご利用の M.U.様(86F 要介護1)は「変形性膝関節症+病的肥満」と言われています(身長 140cm、体重 62.7kg、BMI 32 1) 。ただ今は、歩行時に肩がゆれる程度の訴えですが、ご家庭では座ってテレビを観賞、チョコレートが大好き です。先行き、膝の痛みがでてくると、どうすれば良いのでしょうか? 整形外科の Y 先生にお伺いしました。

♣ < Y 先生 > 飽食の時代、こういう方は珍しくない。そもそも、足は重力の影響を受け止める。つまり「体重の影響をモロにうける。この方は、なぜか自分で歩こうとしない。まわりの方々が「過保護」されているのだろうか? 外国人は「股関節」の障害が多いが、日本人は膝関節の変形が多く、しかも「O-脚」(オーきゃく)である。それにはキチンとした理由がある

♣ 膝の解剖学を見てみよう:- 膝は 上下腿の間にある 握りこぶし大の関節であって、安静時・運動時ともに大きな力を受ける。歩く時には 片足に全体重が乗っかる;走る時の着地では全体重の5~6倍の体重がかかる—— あなたが60kgであったら、300kg以上の力が乗っかる訳で、かなりの負荷となる。その膝関節は「関節嚢」(かんせつのう)という靭帯(じんたい)の袋で覆われている。靭帯とは、強靭(きょうじん)な結合組織で、言ってみればテントの布地のようなものだ。その関節嚢内で上下腿の骨が接触する。骨同士が接触すると、接触部が損耗するので、骨末端の「軟骨」によってクッションされる —— 自動車のタイヤの役目みたいなもの。

♣ 問題はここからである。人生50年の頃には問題にならなかったけれど、寿命が2倍に延びてくると、軟骨・靭帯は 遺伝子寿命を越え、ともに著しく損耗してくる。普通の人体組織は「毛細血管」によって栄養・補強されるが、軟骨・靭帯には毛細血管がなく、関節の中の液でゆっくり潤されて 間接栄養のみである。つまり、軟骨が擦り減るのを補充する機能はない軟骨が消失すると、上下の骨同士が直接ゴリゴリ接触するようになり、骨の内側が破壊されてくる。すると、痛みとともに、O-脚(がにまた)となる。O-脚という言葉は、骨の湾曲のように聞こえるが、実は 骨は湾曲せず、関節部で部分破壊されて、内側に折れている のだ。その原因は第一に「過負荷 = 肥満」+ 高齢による「骨そしょう症」であり、閉経後の女性に多く見られる。第二に日本独特の「正座の習慣」が原因とされたこともあるが、椅子の生活の現代でも同じ問題が残っている。

♣ 最期に、対策法 を考える:- ① 減量すること が道理に叶うけれど、「食い意地との闘い」 となるので、老い先のQOLと考え合わせて工夫したいところだ。パールではせっかく体重を測定する習慣があるので、BMIの経過表 1) を活用したらどうか?② この方はまだ歩けるはず;ご家族の協力を求めるのが良い。③ 結局、ご本人が膝の痛みを訴えない限り、放置する しかないだろう。なにせ、ある処置を行なう順番は、第一に本人の希望第二にご家族の希望だからだ。職員がヤキモキするのは 順番で言うと三番目なのである。

  参考: パールの安全管理 1) # 33 : 天寿の終点は BMI ≒ 12。

  
職員の声

声1: 太っている人は、必ず「膝の故障」を持つのでしょうか?(係り:若くて肉質の人は何の問題もありません。高齢の女性で 太り気味の方が問題になり、同時に脊椎のトラブルも抱えます —— 変形性脊椎症など)。

声2: 肥満の判定法は? 係り:文中にあるように、体格指数(BMI)を算出して判定します:正常値は 18.5~25、やや肥満は 25~30、肥満は 30以上。お相撲さん で身長200センチ・体重250kgなら BMI = 62.5 (= 250 ÷ 2 ÷ 2) — — 彼らは膝のトラブルで泣きます;逆に 痩せている人はBMIが 最低12まで落ち、そのあたりで 人は死亡します1)  。

声3: 痩せた人は膝のトラブルはないのですか?(係り:BMIが15~20のお年寄りの場合、膝は健全です;ただし超高齢では、筋肉の問題が出てくるので、歩行は不安定になるかも知れません。

声4:体脂肪は「下す(おろす)ことのできない定期預金」と呼ばれる”が面白かった(係り:注意しましょう:- 太っているのに「体に肉が付いて . . . 」と言う人がありますが 、「肉」が付くことはありません;付くのは「脂肪」、つまり「アブラ」。アブラはカロリーの高い「貯蔵用の組織」であり、飢餓に備えるための組織ですが、平時にくっつくアブラは おろせません筋肉は細胞分裂しない ので、新たに付くことは ありえません、念のため)。

声5: 体重と脂肪はだまっていても増えるものでしょう?(係り:私は戦前・戦後の人々の様子を覚えていますが、食料不足の時代デブのお婆さんを見たことがありません;必ず痩せていました。つまり、現在のお年よりは 昔より 30歳~ 40歳以上も年寄りであり、さらに飽食である と考えられます)。だから、昔 言い伝えられたお年寄りに関する常識は ほとんど役立ちません

声6: 人は歳をとっても痩せていたほうが 良いのですか?(係り:パールではBMI = 30~35のオデブで91歳の方が14年間 丈夫でお過ごしです。逆に 亡くなる方の主流はBMI=12前後です。BMI=15~20 の方 (やや痩せている方) が 一番お元気のようで、膝のトラブルもありません。あらゆる動物は、やや痩せているとき、寿命は最大になります)。
プロフィール

ふじひろパール

Author:ふじひろパール
「ふじ」=新谷冨士雄
「ひろ」=新谷弘子

社会福祉法人 パール
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